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スマート工場とは?特徴、メリット・デメリット、導入事例を一挙に解説!

みなさんこんにちは。現役大学院生(産業組織心理学専攻)兼人事・組織コンサルタントのミナミです。

今回は、今製造業で続々と導入されているスマート工場について解説していきたいと思います!


スマート工場とは?

スマート工場とは、AIやIOT技術を活用し、デジタルデータをもとに業務管理を行う工場のことです。

従来の工場は、熟練工や高度な技術を持つスタッフ、経験豊富な管理者等の人手に頼ることが一般的です。

生産性の向上や情報管理の効率化を目指すうえで人の手では限界があります。

一方スマート工場は、作業進捗や品質などの情報をネットワークやITシステムの活用で効率的に管理できるため、限られた人数で生産性の向上と高収益化を実現可能です。


スマート工場のメリット

スマート工場を導入することで得られるメリットには以下のようなものがあります。

人材不足の解消

AI・ロボットの活用による省人化や生産性向上による工数削減などが実現でき、人手不足が解消されます。

働き方改革の推進

効率的な運営や生産性向上を実現できるスマート工場は、働き方改革を推進することが期待できます。

生産状況の可視化

ネットワークカメラやシステムを活用すれば、作業にまつわる情報をデータ化して収集・分析が可能です。

生産状況の可視化によって、変化に対応でき、コスト削減にも繋がります。

技術継承

熟練技術者しか持ちえなかったスキルやノウハウをビッグデータとして収集でき、それをもとに作業の標準化・マニュアル化が可能になります。

設備の最適化

データに基づいて工場の作業工程の最適化や、材料や在庫の管理の自動化などが期待できます。

工場同士の連携

可視化された工場のデータがあれば他の工場との連携を強化することが可能になり、各工場の技術を組み合わせることができるようになります。

需要と供給の予測などのシミュレーション

スマート工場では、製造現場のデータや市場の需供データなどをもとにした未来予測のシミュレーションが可能になります。

これによって、適切なタイミングでヒト・モノ・カネといった資源を配分することが可能に。

SDGsへの対応

スマート工場はエネルギーの利用状況を把握でき、無駄なエネルギー利用を防げるため、SDGsへの対応になると言えます。


スマート工場の課題

スマート工場はメリットも多くありますが、課題もあります。

スマート工場の課題には、以下のようなものがあります。

デジタル人材の確保

デジタル技術導入や活用における知識やノウハウが必要であると同時に製造技術に関するノウハウも求められるため、これまで以上に人材の確保が難しくなります。

セキュリティの強化

スマート工場を運営する際、大量のデータを取り扱うことになりますが、それらは重要な機密情報であり、データ漏洩を防ぐためにセキュリティの強化が求められます。

ネットワーク問題

スマート工場導入のためには、ネットワークシステムのキャパシティ基準を満たす必要があります。

キャパシティが一定量ないと、膨大なデータを集めても効率化・自動化まで遂行できません。

初期費用

スマート工場導入には、システムやAIなど様々な設備の導入が必要ですが、これらを導入する上で初期費用が高額になってしまいます。

事実、欧州全域の従業員数500人以上の製造業200社以上を対象とした調査によると、高額な初期費用によるスマート工場の導入が最大の課題であることが浮き彫りになっています。


スマート工場を導入するにあたって

スマート工場を導入する際は、小規模からスタートし、PDCAを短いサイクルで繰り返し、システム・運用の見直し・改善を図ることでスマート化を展開していく必要があります。

また、経営者が強い意志を持ちトップ主導で推進すること、スマート化の目的・目標を明確にすることが大切です。

そして、導入効果を共有し、実際に工場で働いている従業員のモチベーションを高めることが必要です。

スマート工場を導入するにあたっては、経済産業省がスマートファクトリーロードマップを出しています。

https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/


スマート工場の理想的なモデル、ライトハウスとは?

ライトハウスとは、2018年からDXの推進を支援する目的でスタートした世界経済フォーラムが選ぶ第4次産業革命をリードする先進的な工場のことです。

日本では以下の3件が選ばれています。

  • P&G高崎工場

  • 日立製作所大みか工場

  • GEヘルスケア日野工場

世界では、全部で132ヶ所の工場がライトハウスに選出されていますが、中国の工場が50ヶ所選出されており、ライトハウス数世界1位になっています。

日本の事例

日本のスマート工場にはどのようなものがあるのでしょうか。

先ほどのライトハウスに選出された3つの工場を見てみましょう。

P&G高崎工場

製品開発から販売までのバリューチェーン全体において、デジタルツイン、データコネクティビティ、AI、機械学習など、先進のデジタル・テクノロジーを活用しており、製品開発期間や試作のための操業停止日数の短縮化、流通業パートナーの発注利便性の向上及び生産能力の向上を実現し、さらに生産性の改善と市場ニーズに応える迅速な対応を可能に。

日立製作所大みか工場

日立製作所大みか工場は、鉄道や電力、上下水道、産業分野など重要社会インフラ向けの情報制御システムを手掛けています。

これらのエンジニアリング、生産、メンテナンス業務において、産業に特化した広範なIOT技術とデータ分析を活用することにより、品質を損なうことなくコア製品のリードタイムを50%短縮させました。

GEヘルスケア日野工場

GEヘルスケアジャパンの日野工場は、30年以上の経験を有するリーン生産方式を第4次産業革命のテクノロジーを使用してデジタル化し、コスト30%削減やサイクルタイム46%短縮などの成果を挙げています。


海外の事例

海外の事例として、スマート工場化が進んでいる中国、ドイツの事例を見てみましょう。

事例を見る前にちょっと補足を。

中国は、「中国製造2025」という施策を打ち出し、デジタル化をキーワードとして2049年までに中国の製造強国化を実現するとしています。

また、ドイツは、「インダストリー4.0」という産業政策を打ち出し、製造業においてIT技術を取り入れ、改革することを目指しています。

中国のスマート工場事例

①三一重工

三一重工は、建機製造を行っている企業です。

スマート工場化によって労働生産性85%向上、生産サイクルを30日から7日に短縮しました。

このことが評価され、ライトハウスにも選出されています。

②宝山鋼鉄

宝山鋼鉄は、ダークファクトリーをコンセプトに、AI・IOTなどの技術による生産材料の情報追跡と場所特定、産業ロボットによる作業オペレーションによって無人化運営を可能にしました。

無人生産現場では、生産性を30%、生産能力を20%引き上げることができました。

宝山鋼鉄もライトハウスに選出されています。

③ハイアール

ハイアールも無人工場をコンセプトに、産業ロボットの利用、設備間の相互接続、工程の自動化を用いてスマート工場化しています。

高性能マシンビジョンを5Gと連携することで、99%超の制度を持つ品質管理を瞬時に可能になり、検査ミスや検査漏れを大幅に低減しました。

また、工場品質も10%異常改善し、製造コストも削減可能に。

青島工場では、労働者効率64%向上、100万当たりの欠陥21%低減、お客様対応・メンテスタッフ50%低減などの効果がでています。

瀋陽工場では、収益44%向上、オンタイムデリバリー100%向上、生産性79%向上、製品不合格率59%低減の効果がでています。

青島工場も瀋陽工場もライトハウスに選出されている工場です。


ドイツのスマート工場事例

①シーメンス

シーメンスでは、自動化率は75%を超え、デジタル化投資以降の4年間で生産性を約1.4倍に高め、不良率も0.001%にまで抑え込んでいます。

部品や部材の供給や出荷などサプライチェーンの管理、稼働中の製造機器の電力消費や工場機材のサービス・メンテナンスの予測、消耗部品の寿命管理、セキュリティーなども実機のモニタリングとシミュレーションを組み合わせて最適化しています。

②インフィニオン

インフィニオンでは、人間を支援する200以上のロボットを活用して製造を実施しており、収益を最大化できる生産計画立案を実現しています。

・スループットが5倍、扱える品種数が1.5倍になり、品質に関連した問題の発生は1/10に削減しました。

また、製品の外観検査は機械が行い、2020年には完全自動化となり、AIも導入され検査の質が向上しています。

③BMW

BMWでは、オープンプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を活用することで、作業員の効率や安全性を向上させています。

工場を設計または再構成する際はバーチャルと現実をリアルタイムでシミュレーションできるオープンプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を活用することで、3Dで検討し、すべての変更点をリアルタイムで可視化することが可能になりました。

また、シミュレーション内の新しいワークフローのテストにデジタルヒューマンを投入することで、作業員の効率や安全性が向上しています。

計画時間が短縮され、柔軟性と正確性が向上したことで、BMWの計画プロセスは30%効率化される見込みとなっています。

まとめ

今回は、スマート工場について解説しました!

スマート工場は多くのメリットがありますが、初期費用が高額などの課題もありますので、まずは「スマート化の目的・目標を明確にすること」が大切です。

また、主導するのはトップですが、工場で働いている現場の声を吸い上げて、会社全体で改革する意識を持つことも大切です。

今回はここまで!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


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