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深呼吸が大事な理由〜認知症の家族の日記〜4

それからというもの、仲子さん宅と実家の行き来になったのだがその頃には父と母のペースがなんとか回るようになっていたのでデイがない日は父が母をみて、私は仕事をしながら仲子さんの通院をサポートするようになった。

仲子さんも母と同じ病院にかかり、診察とテストであっさりと認知症の診断を受けた。仲子さんはアルツハイマー型認知症だった。

母を追いかけるように症状が進み、放っておくとあちこちに出かけていき、毎回車に新しい傷をつけてくる。いつ、大きな事故を起こすかわからない。どうにか運転をやめさせなきゃと説得しましたが言うことを聞いてはくれません。

仲子さんのうまいところ?ずるいところ?は周りにバレないようにコッソリ車を修理に出して隠蔽すること。のちに仲子さんのお友達や修理工場の方、妹の末子さんにぶつけていた事実を聞かされて唖然とした。

警察に行って相談したこともありました。免許証を取り上げることはやめてくださいと言われた。それはなぜかと言うと認知症の人は免許証が無くても車に乗るからだ。乗る車を無くしてしまうのが1番の方法だけど、これは心が痛むし現実的に無理な話で頭を悩ませるばかりで…。

通院はなぜか素直に私の送迎で行ってくれるので認知症で脳神経外科、インプラントや入れ歯で歯医者、骨粗鬆症で整形外科、血圧やコレステロールで内科…とあちこち通院した。

だんだんキツくなってきてそれぞれの病院に相談して歯医者以外は大きな病院で一回でかかれるようにした。認知症で有名な先生がいる病院にしたのでなかなかの距離だった。

慣れない病院で疲れが出たんだろう。その病院からの帰り道に耳を疑うようなことを仲子さんの口から聞いてしまう。半分暴言のような、仲子さんからは到底聞いたこともないような荒々しい口ぶり。ショックだった。

『認知症になったのはトワちゃんのせいだから!トワちゃんに言われて検査なんかしたから私は認知症だって言われて。運転しないでって言われても乗るからね。トワちゃんもう来ないでよ!色々命令しないで!』

長女である母と三女の末子さんはお嫁に出た為、仲子さんは墓守をしてくれていたのでお正月やお盆、お彼岸にはお線香をあげに仲子さん宅によく行っていた。来てくれたお礼にって子供と旦那と食事に連れていってくれたり、子供にお小遣いをくれたり。

仲子さんは元々おっとりした性格で大きな声を出したこともないし取り乱したこともなかったから、私に対して声を荒げたことを認知症だけのせいにするには心がついていかなかった。

その時はたぶん私も仲子さんにあまり優しくできなかったと思う。いつものカレンダーに次にくる日を書いて帰る準備をしていた時に、
思い直ったのか

『だけどさ、病院は連れてってもらわないと困るから』

『わかってるよ。次の病院の日、カレンダーに書いたから』

仲子さんは安心したような顔をしていたけど、私はすんなり流せない。なんで私がこんな目に遭うの??優しさを求めてケアマネ香山さんに電話した。ちょうど香山さんも私が母と仲子さんと自分の生活とでパンクしないか心配していたところだったと。

ここに来るまでも、

お友達と一緒に流れでガラケーからスマホに変えてきた日、ショップの人に私の番号をトップに入れてもらったから私に電話はかけられたんだけどその他の操作が全くできず、結局ガラケーに戻すのだが、キャリアが違った為これが大変で!

さらに、入っていた医療保険で認知症と診断されると保険料が安くなるっていうものがあり、そのために健康診断を決まった医療機関で受けなければならず、ちょっと時間が長くなったこともあり、その病院で失禁してしまい…。

ちょっと間が空いて仲子さん宅に行くとなんとなく臭い…アンモニア臭だ。これも仲子さんは隠すので失敗して濡れた物が数日分洗濯機に入っており、回してみたがこびりついた臭いは取れない。

おそらく数日干しっぱなしであっただろう洗濯物もズボンやパンツばかり。仲子さんは母よりもオムツにしてもらうのがほんっとに大変だった。

とにかく深呼吸しよう!ひとまずリセットだ。
いくら言い聞かせても気分転換しても仲子さんの言葉にがっかりし傷つき引きずり…なんでなんで?と不満が募る。

そして気づくと帰る時間になっていた。大きく吸って吐いて…仲子さんに戸締りの確認して1時間かけて自宅に帰るのだ。


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