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深呼吸が大事な理由〜認知症の家族の日記〜9
私が母や叔母の出来事を書き始めてしばらく経つが、読み返してみてハッとした。初めは母の症状の移り変わりや私のダブル介護の覚え書きのつもりで書いていたが気づけば叔母の仲子さんの内容が多くなっている。
母の発症は2017年頃と記憶している。私が早く病院に連れて行かなかったせいで診断がついたのが遅くなってしまったけど、もしかしたらそれより早い発症だったかもしれない。だから叔母の仲子さんもその経験上もっと早く何か手が打てなかったのか…と自分を責めることもあった。
そして仲子さんは母を追いかけるように発症し、母を追いかけるように進行し、もう1人にはしておけないところまで進んでしまったので母よりも先にグループホームへの入所となった。
ところが…
グループホームの施設長の江田さんから当初予定していた日に入所できないと電話があった。施設内でインフルエンザが流行してしまったので5日ほど延ばしてほしいとのことだった。
えー!それは大変!仲子さんの荷物はもう運び入れるだけの状態に荷造りしてあり、そこに至るまでも大変だったのにぃ!(私の心の声)
デイサービスは前月で解約しちゃったし夜もこれ以上1人にはできない。
とにかくショートステイやケアマネ香山さんに相談した。連泊になるからちょっと手こずったけどまず妹の末子さんちに1泊、その後2泊3日でいつものショートステイで預かってもらえた。問題は残りの1泊…。ケアマネ香山さんがどうにか骨を折ってくれてだいぶ遠くはなるんだけど香山さんの所属のケアセンターでお世話になることができた。
当日、末子さん宅に仲子さんを下ろしてお願いして帰ってきた。後から聞くと、慣れない末子さん宅に落ち着かない様子だったけどなんとかオムツもはいてくれてビールも飲んで食事も完食。お風呂は入らないと言って着替えもせず寝たそうな。
次の日末子さん宅に迎えに行きショートに送って行った。ほんとに急な受け入れに対応してくれたショートのスタッフさんが救世主に思えた。2泊してくれるのでだいぶ気持ちが楽だった。自分が楽したいって気持ちが少しもなかったわけじゃない。それよりも仲子さんがいつか徘徊して事故や事件を起こすかもしれないというハラハラに正直疲れていた。
そしてショート最終日に仲子さんを迎えに行き、目印になる大きい病院の駐車場でケアマネ香山さんと待ち合わせした。そこからお世話になるケアセンターまではさらに倍くらいの距離で香山さんは途中コンビニに寄って仲子さんのオムツ事情を気遣ってくれた。
初めて行くそのケアセンターはいつも仲子さんがお世話になっていた施設よりもかなり広い施設。スタッフの方もたくさんいて、ベテランのスタッフさんが担当で付いてくれた。
そのベテランスタッフさんに挨拶したら
『認知症だろうがなんだろうが厳しくいきますよ!荷物はここに置いて帰って大丈夫ですよ!出来ることは本人にやってもらうからね』
と言った貫禄たっぷりでどうなることやら…と。施設長さんや事務所の方にも挨拶して、駐車場まで見送ってくれた香山さんにも丁重にお礼を言ってその場を後にした。
帰る時にチラッと仲子さんの様子を見たら他の利用者さんとラジオ体操をやっていた。しかも最前列で得意げに!
家に着き、入所予定のグループホーム施設長の江田さんから電話があった。
江田さんがケアセンターまで迎えに行ってくれると言う。なかなか遠いのでお忙しい施設長さんに申し訳ないです〰︎と恐縮したら、お待たせしてしまったお詫びですからお気にならさずに。とのことだったのでお言葉に甘えることにした。
私はグループホームに布団や衣類などを運び込むために直接向かった。
ホームの2階の共用スペースのテーブルで少し待っていると見慣れたカバンを持った江田さんと仲子さんが現れた。仲子さんは私に気づくと
『なんだい?何やってんだい?』
と呑気に聞いてきた。
グループホームに入所すると個人で契約していたケアマネ香山さんは打ち切りになり、グループホームに所属されているケアマネさんに替わる。
ホームのケアマネ矢田部さんは食事の補助やトイレの促しやリクリエーションに参加したり話し相手になったりと利用者さんとの距離が近い。矢田部さんはパッと見60代半ばくらいの小柄な方。
以前、見学に伺った時には矢田部さんがあちこち見せてくれて、仲子さんが1人ということや、徘徊が酷いこと、私が仕事をしながらダブル介護をしていることなどを考えると優先順位は上がると説明してくれた。空きが出たらすぐに連絡を入れますねって言ってくれたのでてっきり矢田部さんから連絡がくると思っていた。その後の入所の書類提出や受付は施設長の江田さんが対応してくれたので特に不思議にも思わなかったのだが。
矢田部さんと仲子さんの荷物を個室に運びながら
『叔母がもう家で1人過ごすには限界だったので空きが出て助かりました。ありがとうございます』
なんて矢田部さんにお礼を言ったら…。
『いや、空きはちょうど出たんですけど…連絡は江田さんからですか?』
となんだかハッキリしない様子。
そしてまた事件が起きた。