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《福島高い山》~木曽福島の重々しい祝儀唄(長野県木曽郡木曽町)

木曽福島は旧木曽福島町。木曽谷でも中ほどに位置し、木曽の中心として栄えてきたところです。この地で歌われてきた祝い唄が《高い山》です。


唄の背景

木曽谷一円で歌われてきた祝い唄
この唄は、歌い出しの歌詞の「高い山…」からのネーミングです。

〽︎高い山から 谷底見ればノーイソレ
 瓜や茄子の 花盛りノー 
 ハリワヨーイヨーイヨーイ

この元唄の詞は木曽独特のものでもなく、全国的に歌われている歌詞です。
木曽では重い祝儀唄とされ、婚礼の祝宴では《高い山》が出れば、その後は何を歌ってもよいとされるほど重要な唄であったようです。
また、木曽福島では7月22~23日に「みこしまくり」で知られる水無神社例大祭がありますが、その神輿渡御の際にも朗々と歌われています。

水無神社例大祭~みこしまくり

高い山は全国的に流行した文句
「高い山から…」の歌詞は全国的にも広まった歌詞のようです。祝唄としてだけでなく、お座敷唄、餅つき唄など、さまざまな場面で取り込まれてきました。
よく知られているものに、端唄《ぎっちょんちょん》があります。

〽︎高い山から 谷底見れば
  ギッチョンチョン ギッチョンチョン
 瓜や茄子の 花盛り 
  オヤマカ ドッコイ
  ドッコイ ドッコイ ヨーイヤナ
  ギッチョンチョン ギッチョンチョン

この唄は明治期に流行ったもので、三味線伴奏によってコミカルな雰囲気で歌われます。ただし、節回しは木曽の高い山とはあまり似ておらず、歌詞のみ共通です。

信州では先述のとおり木曽ではほぼ祝唄として定着しています。
一方、南信地方や県を隔てた、いわゆる三遠南信地域や美濃では盆踊り唄として歌われています。下伊那では、有名な「新野の盆踊り」(下伊那郡阿南町)にあります。唄の構造や旋律は、木曽のものとほぼ同系です。盆踊りでは素唄のあとに「返し」が付くのも特徴ですが、木曽の祝唄では「返し」はありません。
祝宴での演唱では、もちろん手拍子による斉唱ですが、木曽福島では木曽踊保存会により、三味線伴奏付きの演唱が早くから知られ、レコード化では《木曽祝唄》という楽曲名で紹介されています。ここでは、木曽谷各地で歌われているため、木曽福島のものは《福島高い山》としました。


音楽的特徴

拍子
2拍子

音組織/音域
都節音階/1オクターブ

音域:福島高い山(1オクターブ)

歌詞の構造 
基本的な詞型は7775調。上の句を音頭取りが歌い出し、下の句から参会者が合唱するように付ける「音頭一同型式」となっています。
上の句のあとに「ノーイソレ」、下の句のあとには「ノーハリワヨーイヨーイヨーイ」のリフレインが入りますが、特に掛声や唄バヤシは入りません。

〽︎高い山から 谷底見ればノーイソレ
 瓜や茄子の 花盛りノー 
ハリワヨーイヨーイヨーイ

演奏形態

 ※上の句を独唱、下の句を複数の歌い手が[付け]として斉唱します。
三味線
太鼓
 ※ステージ演奏では伴奏を付けることがあります。宴席では無伴奏です。

下記には《福島高い山》の楽譜を掲載しました。

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