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ニュージーランドで出会った韓国人と結婚したけど、結婚20周年目前に離婚した話12

まだ体調も万全では無い中、義実家に呼び出され2時間以上も叱責された上、泣きながら土下座までさせられた。ダニーは下手に口を出すと状況がもっと悪くなるからと黙って隣で聞いているだけ。マメ子は必死で私にしがみ付いている。こんな姿を子供に見せるなんて・・・。
結婚していた約20年間の間に、何度も同じようなシーンを見て来たマメ子。今でも心の傷になっている。本当に本当に申し訳ない。
泣きながら謝る私に、『韓国に嫁いだからには日本には二度と帰れない覚悟でいるべきだ。韓国人と結婚したんだから、お前はもう日本人ではない。韓国人として生きなければいけない。』言い放ち、私が『はい』と答えるまで『分かったか!』『分かったのか!』とヒステリックに怒鳴るダニ母。
『はい・・』と答えるしかなかった。辛くて悔しかった。

その後も細々と嫌な思いはしながらも、マメ子の笑顔に救われながら日々は過ぎていった。
秋も終わりに近付いた頃、ダニーの誕生日の為(半分は口実だけど)に私の母親が来韓した。ダニ母が、『お婿さん(=自分の息子)の為に嫁の母親が色々やってくれるのは、韓国では当たり前だし、とても重要なのよ。』と言っていたからだ。
私の父は、仕事に出ると月の半分以上は帰宅できないので、母の滞在は2週間の予定だった。有難い事に、ダニーは私の親が長く滞在する事を嫌がる事は無かった。自分の親の前ではいつもピシッ!としていなければいけないけれど、私の両親の前ではTシャツにトランクスでゲームを出来る位に心を許していたと言うか、気を楽にしていた。買い物に行ったり、外食しても私の親が出してくれていたのも彼にとってはラッキーと言う気持ちだったのかも知れない。
ダニーの誕生日には、あまり料理が得意では無い母と、まだレパートリーの少ない私が頑張って一緒に色々と準備し、ダニ両親も招いてお祝いをした。
味付けやご飯の量に多少の注意(文句?)が入ったが、わざわざ日本から娘婿の為にお祝いに来た私の母に満足したのか、ダニ両親はご機嫌で帰って行った。

その数日後、日本で知り合い、私の両親も可愛がっていた日本語が上手な韓国人の友人ジヨンが、母に会いたいと遊びに来てくれた。楽しく時間を過ごす中、ダニ母からの電話が鳴った。
電話に出て第一声は、『お前の母親はまだいるのか。』だった。
片言の韓国語で後1週間程滞在する事を伝えると、一瞬で火が付いたように怒鳴りだした。(韓国では有名な火病‐ファビョン‐と言うやつだ)
あまりにも声がでかいので、同じ部屋にいた母親とジヨンに丸聞こえだった。まだまだ韓国語が初心者の私は、ダニ母が言っている事全てを理解できず、とりあえず友人が来ているので後でかけなおすと必死で伝えると、その友人は何人なのかと聞いてきた。日本で知り合った韓国人だと伝えると、『電話を代われ!』と言ってきた。断っても『代わりなさい!』としつこく怒鳴るダニ母。
私が固まっていると、ジヨンが『大丈夫だよ。私が話すよ。』と電話を代わってくれた。すると、以下の内容を私と私の母に伝えろとの事だった。
『もう目的は果たしたんだから早く帰せ。』
『嫁に行った娘の家に長居するなんて常識知らずだ!』
『本当なら3日以内、長くても5日までしか滞在するべきでは無い!』
ジヨンは『私の口からはそんな失礼な事伝えられません。』『日本からわざわざ来ているんですから、あと1週間くらいはいいじゃないですか?』と、とても丁寧に言ってくれたけれど、ヒートアップしたダニ母は『とにかく早く日本に帰らせなさい!!!』と怒鳴り電話を切った。まさかジヨンにまで怒鳴るなんて・・・。ジヨンに嫌な思いをさせてしまった。謝ると、ジヨンが代わりに謝って来た。
『現実にこんな人がいるなんて本当に信じられない。同じ韓国人として恥ずかしいし、マメ達に申し訳ない。ごめんね。でも韓国人が皆、ああだとは思わないで欲しい。』
そう。どこの国も一緒。意地悪な人もいれば優しい人もいる。実際、私の韓国人友達は皆いい人達だ。結婚前にもほかの友達に言われたけれど、やっぱりダニ両親は韓国人から見ても普通ではないのだ。そして、そんな両親に育てられたダニーもまた優しさや愛情をあまり知らない、持ち合わせていない人だった。私の間違いは、ダニーのモラハラ言動を『こんな家庭で育ったから仕方がない。ダニーは悪い人では無い。』とダニーの言動に理由を作って許し、そして、そんなダニーに私が『愛される事・愛する事を教えられる!』と思ってしまった事だ。
ダニーの帰宅後、その日の出来事を報告すると、ダニーはダニ母が100%悪いと言い、顔を真っ赤にして私の母に謝罪した。とにかく【ダニ母憎し】の当時の私は、ダニーがダニ母に対して怒りの感情を抱いたと言う事実だけで嬉しかった。
でも、今なら分かる。私や私の母親、そしてジヨンに嫌な思いをさせた事に怒ったのではなかった。ダニーが怒ったのは、ダニ母が私や私の母親を見下しているからではなく、ダニ母の言動によって【自分が恥をかいた】から。私の親だけでは無く、私の友人にまで怒鳴り散らし、自分が親にコントロールされている【ママボーイ】と思われるのが嫌だから。外面はいいのがナルシストの典型。周りの人に悪く思われたくないのだ。
そんな事に気付くのに20年近くもかかるなんて・・・。自分を責めてはいけないと言われるけれど、やっぱり自分が情けなくなってしまう。




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