
ニュージーランドで出会った韓国人と結婚したけど、結婚20周年目前に離婚した話4
避妊はしていた。でも妊娠した。子供は大好きだし、「お母さん」になるのが夢の一つだったからか、検査薬の結果に驚いたけれどどこか嬉しかったのを覚えている。でも、ダニーは学生。親にも私との交際は隠している。何となく「別れる事になるのかな・・・。」そう思いながらダニーにも電話で妊娠を伝えた。ダニーの返事は私の予想に反したものだった。『じゃあ、結婚するしかないな。』仕方なく、とも取れる言葉だけど、当時の私は『堕ろして。』と言われなかった事が嬉しかった。
とりあえず母親にだけは妊娠と結婚しようと思っている事を伝えた。びっくりはしていたけれど泣かれたり怒られたりはしなかった。ただ、『男の人はいつでも逃げられる。でも女は違う。自分の中に命があるから。ダニーが途中で逃げてシングルマザーになる覚悟があるのなら産みなさい。その覚悟があるならサポートはするから。』と言ってくれた。
冬休みを利用して私の両親に挨拶に来たダニー。頭を下げながら『この先、僕の臓器を売ってでも赤ちゃんとまめを守ります。結婚させてください。』と言った。(実際は慣れない日本語で言ったので、もっとたどたどしかったけど)
その言葉に覚悟を感じた私の両親は『まめと赤ちゃんをお願いします。』と答えた。
私の両親に挨拶に来る前に自分の親にも話をしたけれど、激昂されて大変だったらしい。生まれて初めて親に反抗したのが、私との交際と結婚だったダニー。親にしてみれば相当なショックだっただろうし、私をとても恨んだだろう。
ダニーが日本に滞在している間に、アメリカにいるダニ兄からも電話があった。『ダニーは親を捨てたんだ。これからは君が責任持ってちゃんとダニーを守ってくれ。(英語で言われた)』そう言われて『はい・・・』と返事するしかなかった。今考えても「ん?」と思うけど。
私の両親や兄弟にも妊娠と結婚を受け入れてもらい、冬休みを楽しく過ごしたダニーはまた韓国へと帰って行った。
その1か月後、『やっぱり結婚は親に賛成してもらってからじゃないとしたくない。出来ない。産むのは賛成だけど、籍を入れるのは自分の親が認めてくれるまで待って欲しい。』と急に言い出した。
片方が籍を入れる気が無いのならどうしようもない。受け入れるしかなかった。元々、母親から言われていた言葉でシングルマザーになってでも産むと決めていたので、頭にはきたけどショックで落ち込んだりはしなかった。
そして、そこからダニ母からの電話攻撃が始まった。2~3日に1度はかかってくる電話。内容は毎回『今すぐ病院に行ってお腹の中の物を処理しろ!』だった。韓国語しか話せないダニ母と、韓国語はまだまだハングルの読みを勉強中の私。話が通じるわけがない。
ただただ何を言っているのか分からない相手に、習ったばかりの『ネー(韓国語の『はい』)』を繰り返すしかなかった。
向こうも『処理しろ!』と言って素直に『はい』と答えたから電話を切ったのに、一向に実行しない私に腹が立っていただろう。今思うと少し笑える。
しつこくしつこくかかってくる「処理しろコール」。私は、電話が鳴ると体が強張り、汗がダラダラと流れ出るようになった。そして、電話番号を教えたダニーに対して腹が立った。(引っ越しで電話番号が変わっていたので、ダニーが新たに親に聞かれて教えてしまったのだ)
韓国語のクラスにも通い始め、相手が何と言っているのかが分かってからは決して『はい』とは言わず、『シロヨ(嫌です)』と返すようにはなったけど。このやり取りは、堕胎が出来なくなる妊娠6か月を過ぎるとピタッと治まった。
でも、産ませるしかないと諦めたダニ親は、次の手段に出てきた・・・。