ある草の記憶
ある草の記憶
家のすぐ脇にあった小川はほとんど水路のようなもので、ただしっかりと整備されていなったから「小川」と認識されるような、そのようなささやかなものだった。
そこには夏の夜になると蛍が現れた。
蛍のぼんやりとした光を見るのが夏の夜の楽しみだった。
2つ上の従兄弟に、蛍はその草が好物でその草があるところに蛍が現れると教えてもらった。それが本当のことなのかわからなかったけど、たしかに蛍がいる場所にその草があったので信じることにした。
家の隣の小川はコンクリートの水路へと変わり、蛍はもう現れない。