追悼 Tony Bose
先日、カスタムナイフ界のレジェンド・Tony Bose(トニー・ボーズ)氏がご逝去されました。享年74歳。
ご冥福をお祈りするとともに、心からの感謝を捧げます。
ご家族に心よりのお悔やみを申し上げます。
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最初の訃報を受け取った時は「えっ、ウソでしょ?・・・」と思いました。
その後、トニーの友人にメールして本当に亡くなった事を確認し、愕然としました。
トニー・ボーズ・・・彼は私のヒーローでした。
彼に出会わなければ、現在の私は無かったでしょう。
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今回はトニーを偲んで、思い出話などを・・・
初めてトニーに会ったのは、たしか2001年アトランタで開催されたBLADE SHOWでした。
友人でイングレーバーでもあるサイモンに紹介してもらい、お互い挨拶を交わし握手しましたが、あの時は超〜緊張しました!
だって、トニーは私のヒーローだから・・・
例えれば、野球少年が、メジャー現役バリバリのイチロー選手に紹介されて握手してもらうようなものだったのです!
・・・つたない英語で何を話したのか、まったく憶えていませんが。
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トニーにはとても良くしてもらいました。フェアでフレンドリーな人柄でした。・・・毎年BLADE SHOWで会うたびに、多くのBoseナイフを見せてもらい、深遠なるアドバイスを数多くいただきました。
ある時、トニーとその友人達と一緒に食事をする機会がありました。私が注文したビールのジョッキがテーブルに届いたのを見て、
トニー「slow(私のこと)、そのビール、ひとクチ呑ませてくれないか?」
私「いいよー・・・」
トニー「ゴク、ゴク、ゴク・・・プハァ〜、やっぱりビールはウマいなぁ〜・・・」
私「アトランタの地ビール、ウマいよね!」
トニー「そうだな・・・実は、酒は医者に止められてるんだ・・・みんなには内緒だぞ!」
私「えぇ〜、内緒って言われても・・・みんな見てるし・・・」
トニー&私「アハハハハ」
・・・こんな、お茶目?な一面もありました。
BLADE SHOWでは、トニーとリース父子のテーブルのナイフは全て抽選で販売されます。
抽選前のテーブルは、ナイフをよく見ようとするお客さんがアリのように群がっているので、ほとんど近寄れない状況です。しかし、その隙を縫って私も毎回抽選会にエントリーしていました。そのせいでナイフ・コンテストの出品に間に合わなかったこともあります、アハハハ。
午後3時頃の抽選時には当選者の名前が呼ばれるのですが、返事が無いと当選権利が剥奪されるので、その時のテーブルの周りは超過密な人だかりで足の踏み場もありません。(あまりに超過密な人だかりなので、後に別の小会議室を貸し切って抽選会をやるようになりました。)
いつの年だったか、一度だけ私もトニーのナイフが当選したことがあります。・・・残念ながら、当時は購入するお金が無く、泣く泣く当選券をナイフディーラーに100ドルで売り渡しました(このパターンは現地ではよく見られます)。
BLADE SHOWは金・土・日の3日間開催されるのですが、
実は、前日の木曜の夜、ホテルのトニーの部屋で、翌日販売される全ナイフの内覧会みたいなものが開催されます。
ここにはトニーの友人やナイフコレクターが招待されるのですが、幸運にも私も毎年参加していました。
部屋のベッドの上に無造作に並べられたトニーのナイフを、誰かが差し入れで持ってきたバーボンを呑みながら触りまくれるという、至福の時間です!
当然いろんな質問も直接トニーに聞く事ができます。・・・あぁ〜、今、思い出しても最高の時間でした!
ある年のトニー部屋での内覧会の時に、トニーが1本のアンティークナイフを見せてくれました。
見た目は、何の変哲も無いナイフ。メインブレードと短めのサブブレード、2刀のジャックタイプのスリップジョイントに見えました。
トニー「slow、メインブレードを開いてみろ」
私はメインブレードを開きました・・・(カチッ)。
私「ムムム・・・ロックバックか?」
トニー「そうだ!・・・じゃぁ、閉じてみろ」
私「ムム・・・どこにロックリリースがあるんだ?・・・」
・・・そう、見た目はスリップジョイントなので、どこにもリリースポジションがありません。スリップのように畳もうとしても当然動きません。ブレードを押したり引っ張ったりしても動きません。1〜2分いじくり回して、やっと分かりました。
小さいほうのサブブレードをハーフストップの位置にすれば、メインブレードのロックがはずれるという、いわゆるマジックロック系のナイフでした。
トニー「面白いナイフだろ・・・slowも作ってみるか?」
私「・・・トニーが作ればいいじゃん!」
トニー「ハハハ・・・俺は作らんよ。ロックリリースするたびにサブブレードを引っ張りださなきゃならんしな、面倒くさいナイフだろ。」
私「たしかにね・・・」
トニー「slowはロックバックが得意だから、使いやすくアレンジして、2ブレードにロックバックが付いたナイフを作ってみたらどうだ?」
私「うぅ〜ん・・・考えてみるよ!」
これが、後に私の代表的なモデルのひとつになるマルチブレードでロックバックが付くナイフ、「Premiumシリーズ」の製作につながるトニーからの深遠なる啓示でした。
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あるアメリカのナイフディーラーのウェブサイトの中で、「注目のカスタムナイフメーカー」に私が取り上げてもらえる機会がありました。
そこで推薦文を書いてくれたのもトニーでした。
以下がその時の推薦文です。
トニーのこの推薦文がなかったら、現在の私のポジションはあり得ません。心から感謝です。 トニー、どうもありがとう!
その後、お礼に日本酒を送りました。当時は郵便でお酒とか送れた時代だったんですよね・・・いい思い出です。
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トニーに最後に会ったのは、たしか2011年か2012年だったと思いますが、その後もナイフのテンプレートを送ってもらったりしたり、いろいろとお世話になりました。
上の画像が、トニーからもらったテンプレートです。
左からDog leg Trapper、Lanny’s Jack、Zulu Spear・・・ほかにもいくつかありますが、まだ製作してないものもあります。(トニー、ごめんなさい!)
・・・わざわざ名前の刻印を打って送ってくれた、これらのテンプレートは私の宝物です。
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Tony Bose氏には本当にお世話になりました。
ご冥福をお祈りするとともに、心からの感謝を捧げます。