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ナイフと腕時計

ちょっと前、あるカスタムナイフメーカーのTwitterの書き込みを見たのですが、まさにその通りな感じの体験がありました。

失礼ながら、そのTwitterの書き込みを引用します。Twitterではリツイートと言うのかな?
「ウチのナイフはベンツやロレックスを好む人向けではない
マセラティやベル&ロスを好む人向けだ
なんてセリフで納得させちゃうメーカーになりたい」


このツイート後、いろいろなナイフメーカー達にバージョン違いでリツイートされているのを見ると、なかなかに刺さるものだったのでしょう、ナイフだけに・・・


私の体験はと言うと・・・
ゼロ年代の中頃、アメリカのアトランタで開催されているBLADE SHOWに行った時の体験です。

このBLADE SHOW、例年6月の1週目くらいの週末の金土日の3日間開催されるのですが、海外から出展するカスタムナイフメーカーやナイフディーラー達は、水曜に現地入りする人達がほとんどでした。時差ボケ解消の目的もあり、当然ながら私も水曜に現地入りしていました。
開催前日の木曜は会場設営なのですが、出展者パスがあれば設営会場内の立ち入りOKなので、この日は午前中はホテルでゆっくり過ごし、昼前くらいに会場の下見に行くのが例年のルーティーンでした。・・・早めにテーブルセッティングを始めているハンドル材や鋼材等を扱うサプライヤーのテーブルチェックも欠かせませんしね!

その年も、木曜のお昼前くらいに、自分のテーブルの場所確認も兼ねて会場に行き、ブラブラとしていたところ、Tony Bose氏と遭遇しました。すでに、友人を介して彼とは面識があったので、まずは挨拶しお互いの近況などを話していたところ、4 ~ 5人の60歳前後の「チョイ悪オヤジ風のアメリカ人達」が近寄ってきて、Tonyに話しかけてきました。彼らの服装は、ポロ・シャツやアロハ・シャツに短パン、スニーカーのオジサン達、サングラスはなぜか超カッコ良かったですが・・・
たぶん、このサングラスのせいで「チョイ悪オヤジ風のオジサン達」と認識してしまったのかなぁ〜・・・当時、私はまだ30代でした。
このチョイ悪オヤジ風のオジサン達とTonyが親しげに話している間、私は横でぼぉ〜っとしてたんですが・・・突然、Tonyが「slow(私のこと)は昼メシ食ったか?」と聞いてきたので、私「まだだよ・・・」 Tony「じゃぁ、いっしょに食いに行くか?」 私「もちろん!」というなりゆきでランチをご一緒することになり、Tonyが私をチョイ悪オヤジ風のオジサン達に紹介してくれて、「じゃぁ、みんなでメシ行くかー!」ってなりました。

ホテルのレストランに到着し、けっこうな多人数(6〜7人)だったので、テーブルを2個つなげてもらいました。なぜか私はTonyのとなりに座らせてもらい、それを囲むようにチョイ悪オヤジ風のオジサン達、これは、なかなかの威圧感! ウェイトレスのおネェちゃんにそれぞれのオーダーを伝え、料理を待つ間の歓談タイムに突入しました。

ほどなく、私の対面のオジサンが、となりのオジサンの腕時計を見て質問しました。
「あれっ、新しい腕時計か?」 「そうだよ・・・誕生日に妻からのプレゼントさ!」 「それ、なかなかイイねぇー!」 「だろ〜!」・・・みたいな会話が始まりました。
興味津々でそれを見ていた私に気づいたのか、となりのオジサンが腕時計を見せてくれました。時計はシンプルな3針のIWCでした。すると対面のオジサンも自分の腕時計を見せてきて、「オレのもIWCだぜ〜!」って、クロノタイプのIWCでした。・・・うぅ〜〜、何者なんだ、このチョイ悪オヤジ風のオジサン達は???
とりあえず、私「イイ時計だね!」って言ったところ、対面のオジサン「向こう側に座ってるヤツの時計はもっとスゴイぞー!」・・・その言葉に気づいた向こう側のオジサンの時計、なんとPATEK PHILIPPE、私「絶句・・・グレイト!」・・・うぅ〜〜、マジ何者なんだ、このチョイ悪オヤジ風のオジサン達は???

対面のオジサン「ところでslowの腕時計は何だ?」って聞いてきて、(もう見えてるくせにと思いながら)恥ずかしながら「G-SHOCKです」って答える私。 
対面のオジサン「G-SHOCKはイイ時計だぞ! 壊れないしな。オレもひとつ持ってるぞ、ハンティングに行く時はG-SHOCKに限るっ!」・・・
さすがアメリカ人、どんなモノにも良いところを見つけてフォローしてくれるのは素晴らしいです。

そこで気づいたのですが、このチョイ悪オヤジ風のオジサン達の腕時計、 パッと見はまるで同じ腕時計なのです、おそろいの腕時計かと錯覚するほどに。
彼らの腕時計、メーカーの違いや、3針タイプやクロノグラフといったモデルの違いはありますが、すべてがミリタリー調のシンプルなケースで黒い文字盤の腕時計・・・
おそらく本来はクロコ系のベルトが付いていたと思われますが、全員の腕時計が黒いミリタリー系のナイロンベルトに換装し、ドレスダウンされていました。おそらく、これがゼロ年代のトレンドだったのですかね・・・  Tony Bose氏のナイフ、まさにIWCやPATEK PHILIPPEを好む人向けだったのでしょう!

・・・食事中、Tonyが「この連中は超〜金持ちのナイフコレクターだから、slowのナイフもたくさん買ってくれるよ」と、さりげなく推薦してくれたのは、とても有り難かったです。
「超〜金持ちなチョイ悪オヤジ風のオジサン達」と聞いて、ゲンキンですが突然彼らがカッコ良く見えたのは言うまでもありません! 後日、もちろんナイフを買ってもらいました。

その後、何回か似たようなシチュエーションで食事をしたことがありますが、歓談中にナイフの話題が尽きると、たびたび時計の話が始まります。
そもそもアメリカ人が時計の話が好きなのか? もしくは元々がナイフを買い集めるような人達の集まりなので、コレクション自慢が好きなのか? それはわかりませんが・・・
・・・ですが、ひとつ気づいた事があります。男性だけで食事しながらの歓談中には、たびたび時計の話が始まるのですが、これが奥様やガールフレンドが同席している食事の時には、まったく時計の話は始まりません。
おそらく、内緒でこっそり腕時計を買っている人がいるかもしれない可能性を考えての、オジサン同士の細やかな配慮なのかな?と想像します、アハハハハ。


という訳で、オジサン達がカッコ良く見えてしまった憧れから、当時私も帰国後に似たような時計を買いました。 以下がその画像です。

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さすがに当時はIWCは無理だったので(今でも無理ですが)、SEIKOの安い時計を買って、黒いナイロンベルトに換装しました。
当時のオジサン達の腕時計はまさにこんな感じでした。でも時計本体は超高級なものでしたが・・・

それ以来、アメリカのナイフショーに行くたびに、来場者の腕時計が気になって、チラチラ見るようになってしまいました。
10回以上行った経験の中で、ロレックスを付けてる人は一度も見たことがありません。・・・では、アメリカではロレックスは人気がないのか?と言うと、それも違うような気がします。ホテルのレストランや、空港のロビーではけっこう見かけます。・・・しかし、ナイフショーに来ている人では見かけないのですよ・・・不思議。

当時のトレンドもあるのでしょうが、ゼロ年代から10年代にかけて、私のテーブルに寄ってくるお客さんで高級時計をしている人はIWCが多かったような気がします。タクティカル系が好きなお客さんやナイフディーラーは、SinnやTraserが多かったかな・・・
変わり種では、日本在住のカスタムナイフメーカー、W.Gさんがフランク・ミューラー付けてたのくらいかな・・・個性的なナイフを作るW.Gさんらしいですね。                             以上のように、ナイフと腕時計の嗜好にはかなりの関係性があると思われます。

私のナイフも、IWCを好む人向けだと言えるよう頑張りたいものです。


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