ナイフメーカーあるある
今回はナイフメーカーや製作時にありがちな、ちょっとしたお話。
ナイフメーカーあるある
ナイフメーカーは指の皮が厚い!(面の皮じゃないです)
ベルトサンダーで鋼材を削る際、かなりの高温になる。
熱くなると水につけて冷やしながら削っていくのだが、だんだんと手に耐性ができてくる。たびたび水で冷やしながら削るのが面倒になってきて、多少熱くてもそのまま削ってしまうからだ。
・・・その結果、熟練のナイフメーカーは、居酒屋で注文したアツアツの熱燗のお銚子がすぐに持てるので重宝される!
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ナイフメーカーに限らずだが、金属加工や機械加工に携わる職人さんの手、
意外にキレイな手の人とけっこう汚い手の人がいる。
どちらが良いとか悪いとかいう話ではないのだが(基本、キレイなほうが良いとは思う)手のキレイ汚いとは別に、手の爪に関しては二つの派閥があるようだ。それは深爪派と長爪派である。
深爪派は指の先端より爪のほうが短く爪の白い部分がほとんど無い。
それに対して長爪派は指の先端より爪のほうが長い。ネイルアートしてるギャル(死語?)ほど長くはないが、爪の白い部分が2mm〜2.5mmほどある。ちなみに私は長爪派だ。ナイフメイキングを始めてもう28年ほどになるがずーっと長爪派。なので、深爪派のメリットはよくわからないが、長爪派のメリットは説明できる。
ベルトサンダーでいろんな材料を加工する際に、もちろん手でホールドして作業するのだが、多少手元が狂って回転するベルトに触ってしまっても爪が長いと先に爪が削れて「おっとっと」となり、指をケガしなくて済む。
スタッグハンドルを裏から削るときやハンドルにインレイするシールドを削る際には、爪でホールドしないとうまくいかない。
削れた爪はバローベで整える。たまにこれを怠ってしまい、そのまま家に帰って寝てしまうと翌日大変なことになる。猫の忍者に襲われたのかと思うほど傷だらけになったことがある。寝てる間、知らぬうちに顔とか掻いてしまったようだ。皆さんも気をつけよう!
加齢により爪は徐々に湾曲していくそうだが(いわゆる巻き爪)、指に力を入れて仕事をする人の爪は平べったくなるそうだ。建築現場等で重い資材を手で運んだりする職人さん達の爪は平べったいらしい。
私の爪は、左右とも親指と人差し指の爪だけが平べったく、それ以外は湾曲している。おそらくブレードをサンドペーパーで磨く際に、この2本の指にすごくチカラが入っているのかもしれない。
一説には、爪の硬い人はモノ作りが器用だと言われるらしいが、おそらく爪を道具の一部や延長として使っているからなのかな?と想像するが・・・・爪が硬いから器用なのか? いろんなことを器用にやるから爪が硬くなるのか? まぁ、どちらでもいいか?
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フォールディングナイフメーカーあるある
トラディショナルなタイプのフォールディングナイフ、製作行程の最後にピボットピンのカシメという、なかなかに難しい作業がある。
それまでいろいろ加工・調整して仮組み時のアクションもバッチリ・・・・しかし最後にピボットピンをカシメたら、うまく動かない。
・・・ブレードを回転させるときに、何かジャリジャリした感触がある、アクション・フィールがイマイチ、クローズ時のキックが弱い・・・
こんな経験は誰もがあると思う。これは、とくにリリース部分が後方にあるタイプのロックバックのフォルダーによくあるトラブルだ。スリップジョイントではこの現象はあまりみられない。おそらくスプリングの強弱の影響だろう。
これ、その原因の約7割(当社調べ?)は、ピボットピン回りのトラブルではなく、ロックバックのバックスプリングの側面に原因がある。
バックスプリングを支えるハンドル内のピンより後方部分(リリース部分含む)がライナーに擦れてうまく動いてないケースだ。この部分の接触が大きいとブレードの開閉時にジャリジャリした感触が伝わったり、アクションのスムーズさが失われることがある。
・・・ピボットピン周りは、メーカーそれぞれがいろいろ工夫して、回転キズが付かないようにしたり、スムーズなアクションフィールが出るようにしたり等、いろいろとケアしているのでカシメ後にトラブルが出ることは意外に少ない。もちろんピボットピンの適切なカシメがなされている前提だが・・・
しかし、バックスプリング側面のケアをしているナイフメーカーは意外に少ない。これは組み立て後には見えなくなってしまうからだと思われる。
バックスプリングは、鋼材を細く切り出すので熱処理後の歪みが大きくでることが多いので、製作時によく確認しておいたほうがよい。
私の場合、ロックバックのリリース部分(指で押さえるための半月型のところ)に擦り傷がつかないよう、できるだけケアしている。
バックスプリングの工夫も大事である。