未来をになう子どもたちへ ~クリス・コルファー
2019年5月、非営利の世界的な教育機関 Destination magination ( D.I. ) のグローバル大会において、クリス・コルファーさんが「アイコン賞」を受賞されたときのスピーチを、少し解説を加えながらご紹介します。
▼ 不完全ながら、この動画からスピーチを訳してみました。
はじめに
こんにちは、「 D.I. 」の皆さん!
ああ、なんてことだ…。
ここにいると、とてもわくわくするんだけど、緊張(きんちょう)しちゃうよ。だって、みんな、ぼくよりもすごく頭がいいって、知ってるからさ。
グローバル大会への出場、おめでとう!
いろんな年代や国籍(こくせき)、民族、宗教、考え方、性別、グリフィンドールにスリザリン…あはは。
(ハリー・ポッターのコスプレをした子たちがいるので)
そんな何千人もの人たちの前に立ってるだなんて、信じられないくらい名誉(めいよ)なことだよ。
▼ この大会が「待ちきれない!」という、クリスさんのツイート。
▼ 喜びのあまり、1分おきくらいに、なんと17回も投稿しています。
君たちに会えてうれしい
しかも、みんなは今日、創造性(そうぞうせい=何かを考え出す力)や解決力(かいけつりょく)をたたえあうために集まってるんだよね。
だから今回は、ぼくがスピーチさせてもらえる、またとない大事なチャンスだって真剣に思ってるんだ。
そんなわけで、ここには、世界のほかの地域がめざすべきものがしっかりとあるし、こんなに大勢(おおぜい)の子どもたちがすでにそれを見つけているだなんて、ぼくみたいな「おじさん」から見たら、まぶしいくらいだよ。
それに、いつかきっとぼくは、君たちのうちのだれかの下で働いているだろうから、さっきの紹介ビデオは、将来のお仕事にやとってくれるときの、ぼくの履歴書(りれきしょ)にしておいてね。
スピーチの前に流れた、クリスさんの紹介ビデオより
▲「ゴールデングローブ賞 俳優」
▲「タイム誌・世界で最も影響力(えいきょうりょく)のある100人」
▲「ニューヨークタイムズ No.1ベストセラー作家」
高校時代の思い出
ぼくも、高校のD.I.チームのキャプテンだったんだよ。
「キャプテン」っていうのが正式な肩書きなのか自信がないけど、自分でつけた名前なんだ。
それで、チームメイトといっしょに活動したり競い合ったりした、たくさんのすてきな、すてきな思い出があるんだ。
ぼくらが優秀だったからじゃないよ。もう、全然ちがうんだ。
ぼくらはね…ぼくのチームはひどかったんだ。
ほかのチームは、ぼくらが来るのを見ると、ほっとして、ため息をついていたよ。
一度、ある課題(かだい)をやったのを覚えているよ。
たしか「 インスタント・チャレンジ」というものだったけど、足とつまようじだけを使って、フルーツでできた競走コースを作る、というものでね。そういうことをやるのが、ぼくはいつだって大好きなんだ。
でも、チームへの指示が読まれるころには、ぼくらはもう、用意されたフルーツをすべて食べちゃっていたんだ。
▼ ひどくいじめられていた高校時代でしたが、このD.I.のキャプテンのほかにも、弁論部の部長として賞をとったり、出演者を集めて劇をやるなど、さまざまな活動をがんばっていました。
ぼくらがやった、もう一つの課題も忘れられないよ。
工学の課題だったと思うんだけど、アルミホイルと時計を使って、動いて歩くロボットを作るというもので、これも楽しいんだよね。
でも、ある子がうっかりサランラップを持ってきちゃったおかげで、けっきょく、ぼくらはロボットというより「スケスケの透明ミイラ」を作るはめになったんだ。あれは、かなりはずかしかったね。
だから、こう言ってもだれも驚かないと思うんだけど、今回は、D.I.で初めてとった賞なんだ。
ありがとう!ああ、なんて名誉なことなんだ!
(大きな拍手と歓声)
おや!まるで君が受賞したみたいだね!
君は、けっして負けない
でも、きっとぼくのチームも君たちのチームも同じだと思うんだけど、そこから思い出すことというのは、けっして勝ち負けではないんだよ。
今でも忘れないのは、
・創造性を発揮(はっき)する場や
・自分に挑戦(ちょうせん)する機会
・それに、独創的(どくそうてき)に考えたり、自分のエネルギーをうまく生かせるように、はげましてもらえる場所
をもらえたことなんだ。
だから、君が生きていくいうえで、そういうことを何よりも大事にしていくならば、信じてほしいんだ…
「君は、けっして、負けない」と。
ぼくを信じてね!
そして、こういうことをすべて実現し、この子たちみんなに安全な場所を与えるために懸命(けんめい)に働いてくださった、すべての先生やお父さんお母さん、ボランティアの皆さん、スポンサーの皆さん、おじさんやおばさんに、心の底から、大きな大きな感謝をささげたいと思います。
本当にありがとうございます!
「創造性」と使命
今や、「創造性」というのはすばらしい才能であり、いつでも使える一番大事なツールなんだ。
でも、「創造性」というのは、大きな責任をともなうんだよ。
というのも、ちょうど今、世界は、ぼくらが直面しているいくつもの問題を解決するために、君たちみたいな創造的な考え方を、どうしても必要としているからなんだ。
正しい見方で、この星を救え
君たちの世代は、繁栄(はんえい)よりも利益(りえき)を重んじるような人たちから、この惑星(わくせい)を救っていく世代でなくてはならない。
君たちの世代は、「だれが正しいのか」ではなく「何をするのが正しいのか」に焦点(しょうてん)をあてて、「プライド」ではなく「事実」にもとづいた意見をまとめていくべきなんだ。
▲ もう少し簡単に言いますと…
新しい時代に生きる君たちは、「世の中を良くすること」より「お金もうけ」の方を大事にする人たちから、この地球を守っていかなくてはならない。
「〇〇さんだから正しい」のではなく、「やっていることが正しいかどうか」をしっかり見ていくのが大切なんだ。
「自分は△△だから」というプライドにこだわらないで、「実際(じっさい)、本当のところはどうなのか?」をよく考えて、意見を決めていくべきだ。
差別や偏見は、その世界の弱点
君たちは、「 差別や偏見(へんけん)は弱点」だということを、よく知っておかなくてならない。
なぜなら、社会はいつでもその人口の一部を隔離(かくり)するものだけど、それは、その社会の可能性の一部分を切りはなしていることに他ならないからなんだ。
それでは、世界はけっして最大限の力に達することなどできない。
一人一人のすべての人間が、すべての国で、同じように能力を発揮するチャンスを持てないかぎりはね!
▲ 「だれかのことをばかにしたり、だめな人だと決めつけたら、損(そん)をする」ことを、知っておくんだよ。
人の集まりはいつだって、その中の一部の人たちを仲間はずれにするものだ。だけど、それでは、せっかくのその人たちの力を、捨てていることになるんだ。
そういうことをしている世界は、最高の力なんか出せない。
一人一人、どの人も、どの国でも、全員が力を出せるチャンスを、同じように持てないとね。
喜びと情熱を手ばなさないで
今は、そこに到(いた)る道は遠いかもしれないし、困難な道かもしれない。
けれども、どうか、どうか…
これは、ぼくが今、君たちに言える一番大事なことかもしれないが…、
「けっして、けっして、君の喜びや、君が挑戦したいことへの情熱を、手ばなしてはいけないよ!」
なぜなら、ぼくらには君が必要だからだ。
世界をより大きく、より明るく、より良い未来へと導(みちび)いていくために、君の考えや、君のアイデアや、君の創造性や、君の思いやりが必要なんだ。
さまたげのない未来へ
そして、君たちみんなが、そんなぼくらの願いをかなえてくれる世代だということを、ぼくは信じて疑(うたが)わないよ。
だから、ぼくは賭(か)ける。賭けるよ。
今まさに必要な解決方法のいくつかを、今夜このスタジアムに座っている人たちのだれかが、考え出してくれることにね。
なぜなら、ぼくらがみんなわかっているように、さまたげのない世界は、わずかな時間や、わずかな「がまん強さ」や、わずかな決意や、もちろんわずかな想像力ではつくれないからだ。
みんな、本当にありがとう!ありがとう!
この賞はずっと大切にします。幸運をいのってるよ!
ー クリス・コルファー 2019.5 Destination Imagination の Global Finalにて