人毛ウィッグの特徴とは?人工毛ウィッグとの違いなどプロが徹底紹介
ウィッグには「人毛ウィッグ」と「人工毛ウィッグ」の2種類があります。「人毛ウィッグ」にも「人工毛ウィッグ」にも、それぞれ長所と短所があるため、好みや求めるヘアスタイル、普段のお手入れの仕方などによって使い分ける必要があるでしょう。
この記事では、元カツラメーカー勤務&現役美容師の私が、人毛ウィッグの特徴について、解説していきます。
人毛ウィッグの特徴
人毛ウィッグとは、文字通り人間の髪の毛を植えたウィッグです。
人工毛ウィッグと人毛ウィッグとの違いは多々ありますが、ここでは人工毛ウィッグとの比較を、
・長所
・短所
・寿命
・価格帯
に分けて説明していきます。
人毛ウィッグの長所:カラーやパーマをかけられる
人毛ウィッグの最大の長所は、カラーやパーマをかけられることです。カラーは、薬液を髪の毛のなかにあるメラニン色素に反応させることによって発色させます。人毛と違い人工毛は髪の毛の形を模して作られているだけなので、そもそもメラニン色素自体がないため、基本的にカラーやパーマは出来ません。
パーマも地毛の場合は、薬液を髪の毛のなかにある「メデュラ」や「コルテックス」と呼ばれる組織に反応させ、クセをつけていきます。人工毛の種類のなかには「鞘芯構造(さやしんこうぞう)」と呼ばれるような、「メデュラ」や「コルテックス」を人工的に作った毛材もありますが、こちらも形が同じように作られているだけなのでパーマ液によって反応させることはできません。
人毛ウィッグは本物の人間の髪の毛を植えたウィッグなので、人工毛ウィッグとは違い、カラーやパーマなどの普段のオシャレを今まで通りに楽しむことが出来る、というのが最大の長所となります。
人毛ウィッグの短所:人工毛ウィッグより傷みやすい
人毛ウィッグの短所は、人工毛ウィッグに比べ傷みやすいということ。一般的な人毛ウィッグは、1人の人間の髪の毛を植えられているのではなく、不特定多数の人間の髪の毛を混ぜ合わせて植えられているものです。
基本的に傷み具合があまりにも酷い状態の髪の毛は選別され、できるだけ使用されないようになっています。ですが、質の悪い粗悪な人毛ウィッグには、そういった状態の悪い人毛が入ってしまうことも。そんな髪の毛にカラーやパーマ、アイロンなどの施術を行うと、当然傷みが目立ってしまう結果になります。
人工毛ウィッグはそもそもカラーやパーマ、アイロンができません。質の良い人毛ウィッグを選ぶようにすることが、長くオシャレを楽しむためにはとても重要になってきます。
人毛ウィッグの寿命:1〜2年
人毛ウィッグの寿命は、およそ1~2年です。カラーやパーマ、アイロンなどができ、傷みやすい人毛ウィッグは人工毛ウィッグに比べ、寿命が短い傾向にあります。
ここでは、人毛ウィッグの寿命をできるだけ長くさせるための方法を説明していきます。
人毛ウィッグを長持ちさせる方法1:ウィッグ2~3枚をサイクルして使用する
例えば1枚の人毛ウィッグを毎日使用し、カラーやパーマ、アイロンをしたとすると、上記のように1~2年で寿命を迎えてしまいます。毛材自体が傷みすぎてチリチリになってヘアスタイルが維持できなくなるか、ベースが破けるなどの使用困難な状況になるからです。
もし2枚の人毛ウィッグを交互に使えば、同じように使っても2~4年近くもちますし、3枚の人毛ウィッグを使えば3~6年となります。
実際は年数が経つにつれ頭皮環境の変化によって地毛の状態が変わってきますから、その時々によって新調する必要もありますが、不意に使用困難な状況になってしまった時の為にスペアを用意しておくようにしましょう。
人毛ウィッグを長持ちさせる方法2:使用頻度を調整する
1枚の人毛ウィッグを長期に渡って使っていく方法もあります。それは使用頻度を調整し、ウィッグを使わない日を作ることです。
例えば、ウィッグを2日に一度使うようにすれば2~4年近くもちますし、3日に一度使うのであれば3~6年となります。人毛ウィッグはベースや毛材の種類によって、強度や傷み具合に差が出るなどの違いもありますので、使用目的や予算を考えながら専門店などで相談してみるようにしましょう。
人毛ウィッグの価格帯:既製品は2~30万円、オーダーメイドは20~100万円
人毛ウィッグの価格帯は、既製品であればおよそ2~30万円、オーダーメイドウィッグであればおよそ20~100万円強です。これは人工毛ウィッグでも同じ価格帯であり、多くのメーカーは人毛ウィッグでも人工毛ウィッグでも価格帯は変わりません。
価格はベースの種類や面積によって変わりますが、人毛ウィッグだから高価、安価ということはありません。使用目的に合った毛材を選ぶようにしましょう。
人毛ウィッグのお手入れ方法
人毛ウィッグと人工毛ウィッグでは、お手入れの方法が異なります。一番の違いはウィッグの洗い方。人工毛ウィッグは基本的に押し洗いですが、人毛ウィッグで押し洗いをしてしまうと、毛が絡んでしまいます。絡んだ毛を解消させるのは非常に困難な作業であり、無理にブラシを入れたりしてしまうと、余計に絡んでしまうことも。
また、ウィッグを洗浄するときは市販のシャンプー剤を使用することはNGです。余計に毛が絡みやすくなってしまうこともあるので、ウィッグ専用のシャンプー剤を使用するようにしましょう。
基本的に「人毛ウィッグ用シャンプー」というものはあまり販売されていないので、「ウィッグ専用シャンプー」を使用するようにすればOKです。
洗浄中も、出来るだけ毛が絡まないことを意識しながら、丁寧に毛先から徐々にブラシを入れて優しく洗ってあげるようにしましょう。
人毛ウィッグはトリートメントが必要
ウィッグの洗い方の違いとは別に、人毛ウィッグにはトリートメントの工程も必要です。人毛ウィッグは地毛と同じように傷んできてしまうものですが、地毛との最大の違いは新しく生えてはこない、という点です。
地毛であれば、トリートメントをしても対処できないほど髪の毛が傷んでしまったとしても、最後の手段として傷んだ部分をカットしてスタイルチェンジする、ということができます。
人毛ウィッグでもあまりにも傷みすぎてしまった毛は最終的には切るしかありませんが、新しく生えてこないことを考えるとできるだけ毛自体を長めに残しておきたいものです。
トリートメントに関しては、市販のトリートメント剤を使用しても問題ありません。注意点としては、トリートメント剤をベース部分にあまりつけないこと。トリートメント剤がベースの素材の内部に浸透しすぎると、根元の立ち上がりがでづらくなってしまいます。出来るだけベース部分にはつけないように中間~毛先にだけトリートメント剤をつけるようにしましょう。
普段のお手入れとしてのトリートメントとは別に、専門サロンでの定期的なトリートメントも必要なメンテナンスとなってきます。費用としては大体3,000~5,000円ほど。地毛のトリートメントとほぼ変わらない金額になりますが、ウィッグ自体を長持ちさせるための必要なケアですので、出来るだけ行うようにしましょう。
人毛ウィッグの種類
人毛ウィッグの種類には
・エクストラバージンヘアー
・レミーヘアー
などがあります。
それぞれの特徴を説明していきます。
エクストラバージンヘアーとは
バージンヘアーとは、一度もカラーやパーマをしたことがない健康的な髪の毛のことを指します。人毛ウィッグに使用されるエクストラバージンヘアーは、日本人の髪質に近い中国人毛のバージンヘアーです。
エクストラバージンヘアーは薬品による処理を行わず、洗浄、殺菌のみでウィッグに植えられています。そのため本来の髪の毛のキューティクルがそのまま残されているので、ツヤ、ハリ、コシのある健康的なヘアスタイルを実現させることができます。
レミーヘアーとは
レミーヘアーとは、髪の毛のキューティクルを残した人毛を指します。エクストラバージンヘアーとは違い、工場で染色された後の人毛を使用するので、カラーで色を明るくすることが難しいのが特徴です。
近年は多くの人毛ウィッグにこのレミーヘアーが使用されていますが、「キューティクルを残した人毛」という基準に明確な決まりはありません。
なので、毛材によってキューティクルは残ってはいるものの、かなり剥がれてしまっているものもあり、粗悪品を購入してしまう可能性もあることが問題です。
人毛ウィッグに使われるのは、主に中国人とインド人の髪の毛
人毛ウィッグに使用される髪の毛は、主に中国人とインド人です。以前は中国人毛がメインとして人毛ウィッグに使用されていましたが、中国国内の経済状況の変化により、中国人毛は高価なものになりました。
そこで台頭してきたのがインド人毛。しかし日本人の髪の毛に近い中国人毛とは違い、インド人毛は毛自体にクセが強いのが特徴です。
毛が楕円径になっているインド人毛は、日本人の髪の毛に似せるためにアイロンやストレートなどの処理を行いますが、時間が経つと元に戻ってしまうという特徴があります。
まとめ
人工毛ウィッグに比べると、人毛ウィッグは様々な点で手間がかかりますが、その分自然な仕上がりが出やすいもの。
お手入れなど楽さを求めるのであれば人工毛ウィッグの方が扱いやすいですが、カラーやパーマなどのオシャレを楽しみたいのであれば人毛ウィッグの方が適しています。
どのようにウィッグを使用していきたいのか、普段の生活スタイルなどを考えた上で、ご自分に適したウィッグを探してみていただければと思います。
<ライター>ダイゴ
元カツラメーカー勤務、現・美容師のライター。これまでと現在の経験を活かし、ウィッグに関する有益な情報を紹介していきたいと思います。
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