『街灯りとしての本屋』私も本屋さんをはじめました
私の理想の本屋は、ボルヘス「バベルの図書館」のような店です。
タイトルの通り作中に出てくるのは、本屋じゃなくて”図書館”なのですが、そこにはあらゆるのアルファベットの組み合わせで作られた本が納めされていました。
これまで書かれた本も、これから書かれる本も、いま私が書いているこの文章もその図書館には存在している、そんな完璧で恐ろしい場所です。
『街灯りとしての本屋』の取材で11の書店を巡りながら、小さな本屋、有限な棚で作り上げられる魅力を探していました。それぞれのお店では、限られたスペースの中でも探す楽しみを生む研究をしていたのです。
「バベルの図書館」を理想にしていた私にも、その小さな空間に隠された秘密があるように感じました。
まだ、表現することができないその魅力を言葉にするために「街灯書店」をはじめました。
「街灯書店」は本屋さんの棚の一部を借りて出店する、間借り本屋です。
東京都と奈良県の合計4ヶ所でスタートさせました。
「BOOKSHOP TRAVELLER」(東京都・下北沢)
https://wakkyhr.wixsite.com/bookshoptraveller
BOOKSHOP TRAVELLERは、本屋さん巡る旅が大好きな本屋ライターの和氣さんが作ったお店です。多数の本屋が出店しており、実店舗があるところから、これから本屋を始めてみたい人まで様々な本屋さんを下北沢のお店に行くだけで”はしご”することができます。「ブックショップトラベル」という、本屋さんのために旅行し楽しむの文化を広げる広める活動もしてます。
「BREWBOOKS」(東京都・西荻窪)
https://brewbooks.net/
BREWBOOKSは、書斎とよばれる読書・勉強スペースを併設したお店です。
BREW(醸造)という名前の通り、美味しいビールも販売しています。レジカウンターの近くにはクラフトビールがいくつもならんでいました。
書斎では、ビールを片手に本のページをめくる、ゆったりとした時間を愉しむことができます。
「Naramachi BookSpace ふうせんかずら」(奈良県・奈良市南城戸町)
http://narabook.space/
ふうせんかずらは、古い町並みを残す奈良駅の近くにあります。
毎年、8人程度のブックオーナーを公募し、それぞれが棚を作っています。私は文学をメインテーマに、担当することになりました。
特徴的なのは”無人”でも運営できるシステムを採用していること。来店者は、お店のカギを開けるための番号を事前に取得し入店、セルフレジで本を購入します。
誰もいなくても営業できる本屋を目指しているだけではなく、書店員がレジや他の管理に追われることなくお客さんと対話する場所を作りたいと考えているそうです。
「ブックマンション」(東京都・吉祥寺)
https://readyfor.jp/projects/x4
ブックマンションは、ガチャガチャ決済システムをつかった無人古本屋「BOOK ROAD」の中西さんが始めた本屋です。
店舗の地下には多数の人が共同で棚を作る本屋スペース、1階2階には木製のカラクリを使った支払いを売りにしたコーヒーショップ、3階はイベントスペースとなっていました。
元々この場所は、吉祥寺で愛された洋食屋さん。レトロな雰囲気とDIYで作られた家具などが融和した空間です。
「バベルの図書館」で働く司書たちは、そこで生活し、外の世界に出ることなく死んでいきます。
「街灯書店」は当初、「365日の本屋」という店名にしようと考えていました。
1年間でクローズする本屋の1日1日を、期間限定で考えながら活動するというアイディアです。
1年後には強制的に、本屋をやることから離れる設計でもあります。
本屋の世界から出ることなく、死ぬまで関わることになるかどうかは、今の私にはわかりません。
田中のツイッター
『街灯りとしての本屋』の予約詳細はこちらから。
『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』
発売時期:2019年7月下旬予定
「あなたの街のある小さな本屋さんは、こんなにも面白い」
【掲載店舗】
えほんやなずな
クラリスブックス
敷島書房
書肆スーベニア
せんぱくBOOKBASE
ひなた文庫
双子のライオン堂
Cat's Meow Books
H.A.Bookstore
Readin' Writin'TAWARAMACHI BOOK STORE
SUNNY BOY BOOKS
田中佳祐/著
竹田信弥/構成
雷鳥社
ISBN:978-4-8441-3758-0