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白井未衣子とロボットの日常《反転》 17・絶縁の日

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サヨナラ、スキダッタヨ。 ※エピローグあります。
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間を取って、武人兄ちゃんに私達の位置を探りにくくさせる。
まさに【スカイ】はスピード重視の形態で、短距離をワープするように移動していく。
地図データから確認しても、青い点が広間内のいろんな位置に飛んでいる事がわかる。
あまり深追いすると、頭が痛くなりそうである。

攻撃の主な判断は和希兄ちゃんに任せて(緊迫した自体になれば別)、私はエネルギーの残量をチェックした。
予備の1本はすでに取り替えられており、この時点では使用中になっていた。
残り3割。2本目のセットを設定しないと危険だ。
2人の兄達に報告して、私はパネルの操作を完了させた。

戦闘の場面に一旦戻って…。

【スカイ】は残り3割のエネルギーなんて気にせずに、サクサクと広間内を飛び回る。
もう一度偽物の剣を空中で並べて一斉発射させるのかと思えば、それは実行しなかった。

【スカイ】が手にしているのは本物の水色の剣。
氷のように半分透き通っている剣。

暗い印象のある現在の広間だけど、壁のタイルの隙間に丸い点の光がポツポツついていて、刃先で反射する姿もたまに見かけた。

【スカイ】が向かうのは、やはり【ブラッドガンナー】である。
【ブラッドガンナー】もチェンジを始めていた頃の位置にはおらず、次の動作を開始していた。

【ブラッドガンナー】は【サニー】用に撃とうとしていた銃を【スカイ】に向けて、数回乱射した。
遠くの敵を落とせるロボは、距離を詰めなくても自前の武器で軽々と落とせる。
【スカイ】の装甲が弱いと知っているなら、近づけさせずに足止めして滞らせてから確実に仕留めるのが楽だろう。

そうは、いかせない。
こっちだって、まだまだ生き延びたいんだ。

【ブラッドガンナー】が繰り出してくる銃撃を、【スカイ】はスルリとかわす。
段々と距離を詰めていき、双剣の持ち方を変えた。
普通に剣のグリップを握ると、親指が刃に近くなる。
今の持ち方は、逆に小指が近い。

真剣勝負をするというより、刺客のスタイルだった。
おそらく、刃の向けられた先を目指すのは…【ブラッドガンナー】の《心臓部分》だろう。
HRには全共通の弱点があり、それは《心臓部分》の機能停止である。
これさえ実行すれば、どんなに強力なHRでも起き上がる事ができなくなる。

対立している武人兄ちゃんはもちろん、前の広間で別れたマルロも、この弱点は変わらない。
私達兄妹は、2人から全共通の弱点を散々言われ続けた。
どんなに頭の悪い勇希兄ちゃんですら、この点をきちんと覚えていた。
和希兄ちゃんなら尚更だ。
だから、一撃必中のポーズに変更したんだ。

双剣の刃先で、【ブラッドガンナー】の胴体を突こうとダッシュする。
弾が飛んでくる可能性が高いので、バリアの展開は怠らないようにしている。

至近距離まで追い込んだ。
【スカイ】は【ブラッドガンナー】の後ろへ回り込む。
気づかれても、手を出しにいくのは困難であろう。

だって、わざわざ振り向かないと対処できないから。

そんな認識を持っていたからか、別の不意打ちにはピンと来なかった。
【ブラッドガンナー】は、武人兄ちゃんは…私達の接近に気がついている。
そうじゃなければ、両腕を後ろに反らして撃つなんて事、考えられないと思う。

【ブラッドガンナー】は両腕を後ろに反らしながら、2丁の銃を発射させた。
銃口は発光し、それは【スカイ】の方へ押し寄せてきた。

弾の光を目視した【スカイ】、並びに和希兄ちゃんが『うおっ!?』と声を出して、怯んでしまった。
刺しにかかるポーズが、崩される結果になった。

双剣は急いで身構えるように、刃をクロスさせた。

弾の光は爆発を起こさせた。
ドォン!とアクション映画での効果音を思い出す轟音が、コックピット内に響き渡った。
バリアを張っても、クロスで身構えても、【スカイ】では防御力に劣ってしまう。
意図せぬ形で、壁と衝突してしまった。

今度は【スカイ】が初めて大きなダメージを被ったので、《再構築》後の【パスティーユ】の損傷は軽めだった。
咄嗟に撃ってきた銃弾も、火力的に見れば小さかった。
反発力が強くて、壁への衝突に至ったんだと思う。
【ブラッドガンナー】を示す赤い点も、前へ2センチ程ずらしていたし。

【スカイ】の双剣で粘ろう、とまではいかなかった。
【ブラッドガンナー】は距離こそ離れていても、こちらと向かい合っていた。
猛スピードで接近して、銃で乱射して動きを封じにかかるだろう。

ならばこちらも、形態チェンジを繰り返して、攻撃の手を封じ込めてしまおうか。