2021世界MDカーリング選手権決勝 スコットランド対ノルウェー 後半
前半はこちらから。
https://note.com/curl_watcher/n/n32dda0749ce1
前半に引き続きこちらの試合について。 画像もこちらの動画からの引用になります。
https://youtu.be/tO0JkFnPqg0
5エンド 先攻黄ノルウェー 後攻赤スコットランド
ハーフ明け、ノルウェーが2点リードで迎えた5エンド目。このエンドは、両チームとも特に選択に迷うような場面はなかった。ここでノルウェーがウエイトは合ってるものの幅が若干合わなくなってきて、一方スコットランドは修正してきて良い位置にドローを決めてきた。ハーフ明けでそこまでアイスの状態は変わってなさそうに見えるけどどうだろうか。センターに近い位置を取れてかつ後攻のスコットランドは確実に複数点を取りたい。
強いてポイントを上げるとしたらこの場面。先攻黄ノルウェーの4投目。
黄色の石が外に開いてしまっていて使えない。ティー前も抑えられている。No.2の黄色がバックガードになってしまっているためNo.1を取りようがない。明らかに不利な状況。ティー前の赤をタップされるだけで楽に2点取られてしまうのでこれを防ぎたいが、少し難易度は高いものの右の黄色がダブルで出されると3点取られる可能性が出てくるのでこちらもケアしたい。マウアットを相手にすると想定するショットの数が増えてしまう。2点勝っているので2点取られるのまでは許容範囲として良い。
そこでタップとダブルの両方をケアできるショットを探すと、右の黄色を少し下げるショットが見つかる。シューターが前の赤と平行を取る位置に残るのが重要で、ここを取れれば位置的にNo.1に角度が向くのでテイクされることはなくなる。さらにこの石からの斜めのテイクが使えるようになるので、タップされても1点に抑えられる可能性が出てくる。このショット自体はウエイトも幅もズレが許されないが、シューターが右の黄色の前に残りさえすればダブルは防げるので精神的には楽に投げれそう。
と、ここまで考えて結論を出したが実際には一瞬見ればすぐこの結論に辿り着けそう。
結果、少し曲がりすぎてしまい赤に被ってしまった。これでも黄色のテイクは防ぐことが出来ているので悪くないが、赤のタップを容易に許す配置にはなっている。後攻赤スコットランドがタップを決めてそのまま2点を獲得した。
6エンド 先攻赤スコットランド 後攻黄ノルウェー(PP)
同点で後攻ノルウェーがPPを使用。先攻の1投目は選択肢が多いが、スコットランドの選択はコーナーにフリーズ。お互いに1投ずつコーナーにドローして迎えた先攻赤の2投目が以下の場面。
先攻3投目からしかテイクが使えないためドローを投げるしかないのだが、どこに投げてもあっさりテイクされてしまうため投げる所があまりない場面。テイクされないようにするなら左の黄色へのフリーズやタップになるか。No.1を後攻黄が持っているので簡単に2点取れる配置になってしまうが、2点に抑えられる確率は大分上がるので悪い選択肢ではない。(PPは上手くやらないと3点取られることもザラにあるので2点に抑えられれば御の字。)
しかしここで先攻赤スコットランドが選んだのは、黄色の裏へのドローだった。黄色の裏に隠しきりつつNo.1を取るのは無理なので、半分近く隠れてテイクされなければラッキーといったところ。これを選択した大きなメリットは、石が3つ並んでいる配置を崩さずに済むことで、次の1投で黄色のダブルができるようになることだ。そしてこれをしっかり決めたことで以下のような場面になった。
この赤をテイクされなければ先攻赤のスコットランドとしては助かるが、そこはノルウェーが上手くテイクして処理する。
先攻赤3投目。取っておいた配置にマウアットのスーパーショットが炸裂した。
↓
結果、トリプルになりスコットランドは大きなアドバンテージを得ることができた。このままエンドが進めば後攻黄の1点で終わりそうだが、ノルウェーがコーナーガードを上手く使いなんだかんだで2点を獲得した。
このトリプルがスコットランドの勝因になったのは間違いなさそうなのだが、結果2点取られてるのがこの日のお互いチームの調子を表しているかなという印象。
7エンド 先攻黄ノルウェー 後攻赤スコットランド(PP)
ここまで、7-5でノルウェーリード。当然後攻のスコットランドはPPを使用。スコットランドはこのエンドで3点取れれば逆転できるので勝ちが近づく。2点でも同点十分チャンスはある。ノルウェーは2点に抑えてラストエンドを同点後攻で迎えたい。
このエンドは特にポイントはない。スコットランドが5投完璧に決めノルウェーはダブルを決めるチャンスを2回逃したので順当にスコットランドが3点を獲得し8-7と逆転した。PPとはそういうものである。
8エンド 先攻赤スコットランド 後攻黄ノルウェー
8-7でスコットランド1点リード。スコットランドは強い石を作ってスチールを狙いつつ、失点を1点に抑えたい。ノルウェーは2点取りに行くエンド。バチバチの勝負になりそうだと思いながら見る。
お互いタップしあって迎えた後攻黄ノルウェーの3投目。
左からはNo.1の赤を処理できない状態。問題はこれをいつ処理するか。ここで処理するのであれば右からタップで下げる1択。残り2投で処理すれば良いと考えるなら、右からのドローや前のピールになるか。(ラストエンドじゃなければ右からドローで問題なさそう。)
処理するチャンスがあるうちに処理しておきたいと考えるとやはりタップになるか。
個人的にはピールも悪くないような気がする。ピールすると相手はガードを置き直すだろうが、少しでも位置がずれれば簡単にNo.1を処理できて2点取れるようになる。とはいえ残り2投ずつの勝負なので相手のミスに依存する選択肢は取りづらい。
右からのドローはここでNo.1を取れないと次の相手のガード等で右からのラインを塞がれてジ・エンドになる可能性があるのでここでは選ばないかな。
ノルウェーはタップバックを選択したが少しウエイトが強かったため赤に当たらなかった。投げたウエイトはハックウエイト近くあったのだが、バック8のウエイトで十分だったかなと感じた。以下の場面がその結果である。
No.1を取り返すことはできたが、容易に処理されてしまうティー奥の弱い位置になってしまった。このノルウェーのミスでスコットランドは大きく有利になったかなという印象だ。
そして先攻赤スコットランドの4投目。ここは左はこちらが抑えられているので右を抑えにいくのが良さそうである。No.1も取っておきたいことを考えると右の黄色のタップになる。
左の赤を少しだけ押して強いNo.1を取るのもありかと思ったが、右からドローでNo.1を取り返される可能性が残る事と難易度を考えるとここはタップ一択かな。
そしてこれをマウアットが完璧に決め切って以下のようになった。
後攻黄ノルウェーの4投目。残り2投でこの状況を打開しないといけないのでかなり厳しい。個人的には前をピールして次でダブルをするしかないかなと感じた。
しかしノルウェーの選択は少し意外なもので、赤のタップだった。試合全体通して、ノルウェーはドロー気味の選択をしたがる傾向にあるなと感じた。
相手にガードされると次のラストで使えなくなってしまうので悪手なような気もするが、結果を見ると次のラストショットでランバックとタップの両方使える可能性を残しているので悪くない選択だった。
先攻赤スコットランドのラストは1投前に置かれた黄色を使われないようにガード一択。
スコットランドがガードをしっかり決め、黄色が使えなくなったところで後攻黄ノルウェーのラストはランバックを選択し失敗し終了。ここは左から赤のタップで1点を取る手もあったような気がするが、ランバックは2点取れる可能性があるのでどちらを選ぶかは個人の好みかなと思う。
以上、9-7でスコットランドが勝利した。
試合通してドロー主体のノルウェーとショット選択肢の多さで勝負するスコットランドだった。ドローのショット率はノルウェーが上回っていたのだが、スコットランドの勝負どころでの精度やマウアットのスーパーテイクでその差を埋めるどころかひっくり返したといったところか。
序盤エンドではドロー主体でも互角以上に進めることができる(むしろ選択肢の多さが選択ミスを招くこともある)が、PPの時や1点の取り合いの時には選択肢が少ないことで大きく不利を取るため、どのようなプレースタイルを取るかによって対策すべき状況も変わってくるということが分かった。
MDの面白い要素が多く見れる試合で素晴らしかった。4人制MD問わず面白い試合を見つけたら勉強がてらnoteも更新しようと思っているが、1試合が思ったより長かったので4人制についてはなかなか出来そうにない。