2021世界MDカーリング選手権決勝 スコットランド対ノルウェー 前半
こちらの試合でエンドごとに個人的に注目したポイントをメモしていきます。画像は全てこの動画からの引用です。あくまで自分の勉強のためのメモですので申し訳ないですが10割主観です。笑
1エンド 先攻黄ノルウェー 後攻赤スコットランド
先攻黄ノルウェーの4投目。形勢的には不利。ガードがなく、自石が2つとも死んでいる。4フット内の黄色もバックガードにしかなっておらず、トップ4の赤からヒットされると一発で出されてしまうため非常に弱い。2点取られるのはある程度覚悟するが、1点に抑えられるように頑張る。3点以上はダメ。
ここでの選択肢は、①センターの赤3つを右から強くいってトリプルで出す。②センターの赤から打たれないようにガードか③フリーズ の3つかな。
個人的には①を投げたくなるけど、赤と黄色が1つずつ残って簡単に2点取られるイメージ。②は置けたとてランバックされて死ぬリスクがあるから微妙(完璧に決めてもリスクが残るショットは好みじゃない)。③は位置が若干シビアで、フリーズした石から打たれても左の赤に先に絡む位置に置ければ1点に抑えられる可能性が出てくる。とはいえセンタードローと使うラインは変わらないから比較的選択しやすい。
とりあえずここは③を選べば良さそう。ただ、後半エンドで2点取られるのまでは許容できる時は①だし、残り時間がなくてきちんと置く位置を考えられないときは②を選びそう。
実際にノルウェーは③を選択。↓
結果、③がほぼ成功。打たれてもトップ4に黄色が残るから悪くない位置。
そして一投ずつ投げて後攻赤のラスト前。黄色のラストが僅かに左にずれたため、結局トップ4の赤ををタップされて2点取られた。もう少し右に置けていたら1点に抑えられていた。これは仕方ない。
MDは石が溜まりやすく、石を置く角度の管理が非常に重要であるということを改めて教えてくれる1エンド目。本当に良い試合です。
2エンド 先攻赤スコットランド 後攻黄ノルウェー
お互いそこそこ決めてきた。とにかくエンド1投目の安定度が高い。センター付近を取れている後攻が気持ち有利な状況で、先攻赤スコットランドの3投目。ここでいい位置を取って五分の勝負になる。フリーズ一択。最低でもセンターラインにかかる位置でないと良い位置の取り合い勝負に弱くなってしまう。
結果、非常にいい位置を取ることが出来た。ついでに黄色をティー奥に下げられた。このおかげで、この赤をタップすればNo.1を取ることが可能になった。
これに対し、後攻黄ノルウェーの3投目は迷わず左からのボタンドローを選択。先に相手にこれを投げられるとピンチになってしまうので他に選択肢はなさそう。トップ4の石に当たって外に開くと、相手にヒットロールで利用されてしまうので少しラインはシビア。ただ1投前にほぼ同じラインでドローしていたのが活きていて、ウエイトさえ間違えなければ決まる状況。
完璧。すごく難しいショットというわけではないがウエイトもラインも間違えないのが素晴らしい。No.1〜3を確保出来ている状況を作れたので、先攻には少しプレッシャーをかけることが出来た。
そして次が先攻赤の4投目。1投前で非常に良い位置であるトップ4を取れているため、なんとしてもこれを活かしたい。タップ一択に見える。トップ4の赤をタップしてNo.1を取れればバックガードがあるためかなり強い位置が取れてスチールまで見えてくる。
しかし、先攻はガードからの縦ランバックを選択。予想外の選択ではあるがよくよく考えてみると決まれば黄色が4つ出せる主人公ショットになりうる。是非決めて欲しい。
残念、決まらず。ラストを投げるのが女子なので強引に石を減らす作戦が取れない以上、ここでガードを切ってしまうとチャンスが潰れてしまう。後攻黄4投目はヒットロールで再びNo.1〜3を確保しそのまま後攻黄ノルウェーが3点獲得。
このエンドは先攻4投目のランバックにいった選択がキーになったかなという印象。前に当たりさえしなければ2回決めるチャンスがあり、決まればスチールのチャンスがあるタップ。外すとチャンスが潰れ、決まってもスチールできるか怪しいランバック。リスクとリターン両方見てもやはりタップバックが良かった気がする。結果論ではあるが。
3エンド 先攻黄ノルウェー 後攻赤スコットランド
後攻のスコットランドとしては、1点ビハインドを背負っているため複数点を取りにいきたいエンド。しかし1投目がオーバーしてしまってさらに、先攻のノルウェーが2投ともしっかり決めてきた、後攻赤スコットランド2投目のこの場面。
複数点取りたいことを考えると、個人的には石をためていけそうなフリーズないし6番の黄色と平行な位置へのドローがまず頭に浮かぶ。これも一つの正解であるのは間違いないと思う。しかし後攻赤スコットランドの選択は前からのランバックだった。
負けている状況で後攻の2投目から切りに行くのは早すぎるような気もするが、先攻に先に形を作られかけていることと、このエンドでスチールされるとペースを持っていかれてしまうことを考えるとこの選択はとても正しいものに思える。要は序盤なので無理しないと。めちゃめちゃ冷静。決勝だと消極的というかそういう思考になりやすいのかな。ただ2エンド目にもランバックで勝負していることを考えると、マウワットがランバックを好んで選択していそうだなとは感じた。
ここはしっかり決め、確実に後攻が点を取れる形を作った。ただ自石も減ってしまい複数点取れる形ではないのでこのまま進み、後攻赤スコットランドが1点を取った。
このエンドは早めにランバックを決めたことであっさりと終わったのだが、さすがだなと思った場面を残したい。先攻黄の4投目のこの場面、後攻赤がカムアラウンドを完璧な位置に決めてきたのに対し完璧なコントロールウエイトのテイク返しである。
これが決まったことで後攻は2点取れなかった。逆に赤の石がハウスにかかってさえいれば2点取れた可能性は十分にある。序盤のこのようなショットが後半の展開に効いてくることは往々にしてある。ノルウェーはアイスリーディングとウエイト感の正確さがとても高く、決められるショットを確実に決めてくるあたりが素晴らしいと感じた。
(それと決勝でこれだけ曲がるアイスを提供できるアイスメーカーも素晴らしいです。一般に大会が進むにつれて曲がりは小さくなっていくものなので。あくまで一般にですが。)
4エンド 先攻赤スコットランド 後攻黄ノルウェー
ここまではノルウェーの方が精度が高く、確実にショットを決めている印象。スコットランドはエンド序盤で悪くはないが置きたい位置に置ききれていない感じ。ノルウェーはこのまま差をつけていけば良いし、スコットランドは早めに修正して食らいつきたい。当たり前のことを言ってしまった。
スコットランドは早めにPPを使ってもいいかなと思ったがここまでくると使えてもハーフタイム明けの5エンド目か7エンド目になることを考えるとやっぱり7エンド目で使いたいかな。
このエンドはスコットランドが1、2投目両方ミスしてしまった。このエンドもスコットランドはエンド序盤が弱くなってしまった。そのためお互いにショットの選択肢は多くないまましっかり決めあってノルウェー有利のまま進んでいった。
そんな中でポイントは後攻3投目→先攻4投目→後攻4投目までの流れかなと思う。まずは後攻黄3投目がこの場面。
ここは後攻黄は相手にボタンを取られさえしなければ相当エンドを有利に進めていけるはずなので、ボタンへのドローラインを切れればそれでOKという場面。ただ、赤の石も外から押せばある程度使える位置にあるので、赤を少し下げつつ黄色がロールしてトップ4あたりを取れればベスト。そうでなくてもやはりまずはトップ4を取って有利を保ちたいのでドロー気味の選択が良さそう。
実際にはバックラインウエイトで赤を下げたがセンターにロールしきれず。赤はNo.3で残っているしドローラインは残っているしで中途半端になってしまった。こうなると先攻赤4投目はフリーズ一択になる。許されるウエイトの幅はそこそこ広くて真っ直ぐ当てさえすれば良いのでしっかり決めたい。
ここで先攻赤スコットランドは完璧にフリーズが決まった。さらに黄色を9番まで下げることができた。これでダブルされることのないNo.1.3を赤が持つことができたので、赤は失点を抑えられる目処が立ってきた。このフリーズがとにかく効いてくるのは間違いない。
そして後攻黄4投目はこのフリーズされた赤を出すために速いウエイトで斜めのダブルを決めたが、以下のように石がしっかり減ってしまった。
ここで先攻赤スコットランドはNo.1の黄色を出してステイすれば1点に抑えることができたのだが出しきれず、後攻のノルウェーに2点取られてしまった。仕方ないミスではあるのだが、ノルウェーが3エンド目で精度良く決めたことで失点を確実に減らしてるのを見ると差を感じるところではある。
とはいえ1.2投目をミスしていることを考えると、3.4点は取られる可能性があったのが、1点に抑えられそうなところまで持っていったのは完璧なフリーズのおかげだ。勝負どころを間違えずしっかり決めてくるのがスコットランドの今のところの素晴らしいところかなという印象。
というわけで、このエンドはバックガードの危険性とトップ4を抑える重要性を教えてくれるエンドになった。
以上で前半4エンドが終了した。現在6対4でノルウェーリード。MDらしさもありながら精度が非常に高いので観ててかなり面白い試合。ここまではノルウェーが精度で押しているが、スコットランドがなんとか凌いでいる感じ。ここからはハーフタイムで修正できるし何より後半はPPがあるため2点差はあっさりひっくり返されてしまう。
というかこの試合スコットランドが勝ったのは普通に知っているのでどうやって逆転したのか楽しみにしながら後半4エンドも観たいと思う。