【建築家の頭の断面図】製作建具は本当に必要なの?②(住宅)
前回に引き続き、製作建具についてのお話です。既製品建具と製作建具を混合して使うことを僕的には推奨しますし、製作建具を造るならちゃんとデザインにこだわって、全体のインテリアとのバランスを見る必要があるかなぁって話を①ではしました。
今回は早速cdwの製作建具の事例を見ながらデザインのポイントをお話したいと思います。(①、②は前回の記事を見てくださいね)
③名栗加工を施したキッチン収納建具
こちらはキッチンの建具です。製作建具か?と言われると微妙なラインですが、デザインとして参考になればいいかなと思い、載せておきます。
インテリア全体がシックでトーンを落とした場合、そこに木の要素がくると一気にバランスが崩れます。ただ木を使いたい・・・
そういう時におすすめの木の色が2種類あります。それは白っぽい木と写真のような黒や墨色の木です。
この扉は木に黒を着色しながらうっすら木目が見えるようにしています。
全体に強すぎないインテリアにしたい時、ただシックな雰囲気でバランスを整えたい時、こういう加工がおすすめです。名栗加工は伝統技法のようなものなので、できる職人さんは限られていますが、デザインにおいて重要であればこういうよく見たら木目が分かるようなヌケ感は必要です。
④白い木の下駄箱
こちらはメープル突板にホワイト系の塗装をして、何度もサンプルをつくり完成した下駄箱です。下駄箱は隠したいという方が多くいると思いますが、間取り的にどうしても無理な場合、また玄関の広さを優先したい場合などは下駄箱を家具のように扱うことも重要です。この下駄箱の色とフラワーアートの幹の色を合わしています。インテリアはバランスなので最終系(家具や小物など)を頭で想像して色決めをすると良いかと思います。
といっても普段からインテリアを考えていないと難しいですよねぇ・・・
(できるだけ皆さんの頭に残るような記事を目指します)
⑤姿見としての建具
どこが建具かわかります?
右側の引き戸4枚です。パウダールームで鏡を付けると思うのですが、本当は姿見が欲しいときもあると思います。最近は美容にこだわりを持つ方も多いので、肌の状態や体系によって健康状態もチェックできるので、私としてはこの建具はおすすめです。ただやっぱりコストはかかります・・・
オープンハウスをやった時のことですが、この建具を見た時に「自分をごまかせない洗面室ですねぇ(笑)」と話した方がいます。
確かに!と思いながら、自分を見ることは「自分自身の改善」にもつながるので、個人的には良いデザインだなぁって思います。(そう思って最近仕事場のデスクの目の前に大きな鏡を置き始めました)
注意点としては鏡が重いので、引き戸が重くなる点かなと思います。
良い点としては部屋がホントに広く見えるということです。ちなみにこの扉の奥に洗濯機や収納、作業デスクがあります。
⑥愛犬のためだけの扉
こちらは階段下スペースを収納にせず、愛犬のスペースとしてトイレやご飯のストック場所にしているところです。
もちろん愛犬の入口があるのですが、例えば開き取っ手をメーカー品の取っ手ではなく、アンティークの取っ手にしたらかわいいのではと思い、犬かロバか馬かわからない金物を付けました。
こういうデザインってクライアントから「おまかせで」と言われないとなかなか難しいんです。なぜかというと、こういう商品は既製品としてなかなか出回っていないので、アンティークショップなどに行ってたまたま見つけてくるため、扉を付ける前にいくつも店舗をまわって商品を決めるからです。
ちなみにこの取っ手はハンガーフックとしてアンティークショップに売られていたものを、取っ手として利用しました。まさに世界でひとつだけのドアですよね。
製作建具を造るにはコストがちょっと・・・という方でも、取っ手にこだわるだけでずいぶん印象が変わるのでお勧めです。ただ普通の開き戸や引き戸の既製品の場合、取っ手変更が不可のものが多いので、収納の取っ手で実現すると良いかなと思います。
⑦3Dの凹凸を付けた玄関ドア
こちらは玄関ドアを木製で製作した事例です。しかも表面を3D加工しています。非常に難しく、有名な木製建具、木製サッシを造ってくれる会社に依頼しました。ニヤトーという木材を使っています。
この3D加工は室内に入る時の期待感を促すためにデザインしています。非常に大きな扉なので結構重いです。またオートロックを製作建具に入れ込むので、結構大変でした・・・ただ他には見たことないドアが完成したかなって思います。
⑧大人も子供も手が届く製作門扉
こちらは門扉なのですが、取っ手にこだわりました。大人も子供も取っ手に手が届きながら、手摺にもなり、オートロックの位置も加味したデザインです。既製品の門扉はH1800㎜くらいが上限なので2.4mくらいの建具でシンプルなものとなると制作するしかありません。そこにデザイン性を考えながら、使う方に配慮するデザインとして取っ手にこだわったんですよねぇ。
こういう屋外の門扉を製作する上で注意が必要なこととして、
扉が非常に重いため、丁番がかなり大きくなる
鉄やステンレスの値段は年々上がってきてるので工事中に資材高騰で値上がりしがち
このあたりを注意していくと良いかなと思います。
工務店やハウスメーカーではなく、設計事務所に依頼すると資材高騰の値上がりについて第3者の目で見て適正かどうかを判断でき、中間に入ってくれると思うのでそういう面では良いかなぁって思います。
いままで製作建具のいろいろな事例をお話してきました。ただかっこいいだけではなく、全体のインテリアとのバランスを見るコト、そして機能的であるコトなど、それぞれにちゃんとした役割があります。
製作建具を検討するときは「意味」をしっかり深堀すると、人とは違う個性を発揮できるのではないかなぁって思います。
最後に番外編として、cdwの昔の事務所と今の事務所のエントランスドアを紹介しますねぇ
番外編「どこかに行けそうなドア」
昔のcdwの事務所のエントランスドアです。なんかどこかに行けそうなドアですよねぇ(ちなみに皆さんが想像しているドアと色は似ていますが、デザインは違うんです。モールディングをまわして少しヨーロッパにありそうなドアを意識しています)
非住宅の場合、エントランスドアを意匠性や機能性で造るのではなく、コンセプトを重視して計画することがあります。このドアを開けることが、どきどきワクワク・・・楽しみでもあり、怖さもあり・・・まさに好奇心の先に行けるというコンセプトです。
※ちなみに「CURIOUS design workers(キュリオスデザインワーカーズ)って、「好奇心をデザインする人々」という意味なので、勇気を出して一歩踏み入れてくれたら、あなたの好奇心をデザインする人々がお待ちしてますというコンセプトで造りました。
番外編「目には見えないドア」
こちらが現在のcdw事務所の入り口です。
この隙間が入口なのですが、エントランスドアを付けることをやめてみました。(事務所の話はまた違う記事でじっくりお話しますね)
入口にドアが無いということは・・・夏は暑いし、冬は寒い、そして雨が入ってくる、不審者は入りたい放題・・・なのです。
なぜこのようなデザインにしたかというと、この事務所は「隙間」ということをデザインしようと思ったからです。
「すきま道」のように、ちょっと薄暗い隙間って、
「この先に何があるんだろう?」という期待と不安があると思います。なのでまるで扉があるかのように、人の動きが一回止まります。
そしてここは入っていいのか?いけないのか?という疑問が生まれることを考えると、それって「目には見えないドア」があるということです。
デザインは人の感情を良い方向にも悪い方向にも揺さぶるものだと思うので、こういう実験的なことを常に考えながら「良い方向」にインテリアを駆使してやることが僕たちの仕事かなぁって思っています。
たまに近所のおじいちゃん、おばあちゃんが入ってきますが・・・
今回はここまで。
ありがとうございました。
建築設計事務所「CURIOUS design workers」ではインテリアにこだわった様々なworksをUPしております。住宅、リノベ、店舗、中規模建築問わず事例が見れますので、ご興味があれば下記HPよりご覧ください。
また、面白かった、参考になったと思う方は♡を押してもらうとcdw看板犬の「羅王(ラオ)」が喜びますので、宜しくお願いします。