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前立腺がんの早期発見・早期治療へ〜地域がん医療への貢献〜友愛記念病院 阿部先生

Make Cancer Historyでは、医療者、研究者、がん患者へのインタビューを行い、皆さんの知恵や経験をシェアしていく場を作っていきたいと思っています。

その第一弾として、友愛記念病院 泌尿器科部長の阿部先生に、前立腺がん治療に対する先生の熱意や取り組みについてお伺いしました。

友愛記念病院 泌尿器科 阿部先生

Make Cancer History (以下MCH):まず、阿部先生のいらっしゃる友愛記念病院はどのような病院か教えていただけますか?
阿部先生:友愛記念病院は、地域の中核病院です。私の担当する泌尿器科では、例えば前立腺がんの場合、よほど特殊な症例でなければ、全てのステージのがんの治療を全て担当しています。複雑な症例は、大学病院などに紹介する場合があります。

MCH: 患者さんを紹介する先のネットワークがあるのですか。
阿部先生:泌尿器科は科の特性なのか、私が知る限り、他の病院の医師同士も関係性が良く、お互いの専門分野に関して相談しやすい環境があります。

MCH: それは、素晴らしいですね。前立腺がんでは、一般的にどのような治療が行われるのですか。
阿部先生:まず、健診などでPSAが高かったりして病院を受診し、前立腺がんと診断されるとします。早期の場合は、手術や放射線療法、PSA監視療法などがあります。
最近は多くの病院で、前立腺がんの手術にダヴィンチというロボット支援手術が行われており、精度の高い手術が可能となり、合併症も以前より少なくなっています。

MCH: PSAについて教えていただけますか。
阿部先生:前立腺がんの腫瘍マーカーとして用いられている項目ですが、50歳以上では検査することをお勧めします。また、家族歴があるなどリスクのある場合は、40〜49歳でも受けた方がよいです。
各自治体でも取り組みも進んでいますが、前立腺がんは、男性におけるがん罹患率のトップですので、会社の健康診断の項目にも是非入れてもらいたいと思っています。私も、地域のPSA検診率を上げるべく、患者さん向けの教育講演も行なっています。
PSAが高かったからといって、すぐに前立腺がんだという訳ではありません。他の疾患でも上昇することがありますので、過剰治療・過剰診断にならないようにすることも大切です。精密検査を検討する簡単な指標としては、PSAを前立腺体積で割った、PSA密度>0.15の場合、がんの可能性が高いと言われています。

MCH: 先生が前立腺の治療において、今、困難に感じていることや改善したいことはありますか。
阿部先生:他のがんでも言えることですが、進行がんに対する新しい化学療法が出てくるのは良いのですが、薬価が高いという問題があります。従来は、治療抵抗性の症例に新規抗ホルモン薬を使用していたのですが、最近のガイドラインではそれが第一選択となっています。
また、実際の臨床では、患者さん一人一人の背景、たとえば社会的、経済的な希望などを考慮に入れて、患者さんや家族と相談して治療方針を決めて行きます。
治療ガイドラインは、主に大規模臨床試験や臨床研究の結果に基づいて書かれていますが、すべての患者さんに当てはまらないこともあります。治療ガイドラインを参考に、個々の患者さんとしっかり情報共有しながら、その方に合った治療を一緒に考えていく、shared decision makingがどの疾患の治療にも大切なことだと考えています。ただし、混雑する外来の限られた時間の中では苦労することもあります。
他にはやはり、転移例の治療ですね。転移が少ない症例に、ホルモン治療と放射線治療を併用して根治できないか、という臨床研究もしています。

MCH: 診療面と個人面で、これからの先生の望みを教えてください。
阿部先生:臨床面では、治療が必要な人が、実際に治療につながるまでの期間を短くしたいです。そして、PSA検診率上昇にこれからも貢献したいです。
個人面では、大学院で経営学を学びたいですね。病院経営をどのように改良していけるか知りたいのです。

阿部先生は、患者さんだけでなく、働く人々のことも考えた、誰も犠牲にしない病院経営について考えていきたいとのことでした。また、これからも前立腺がんについての啓発、後進への教育などを続けていきたいとのことです。

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