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積み木遊び


幼稚園の長女と次女を連れて買い物に出掛けた。
大型スーパーの子供の遊び場に2人を遊ばせながら子供たちの姿を視界の端で捉えながらペットボトルのお茶で喉を潤していた。

長女が私の腰掛けている長椅子にやって来て向こうを指差す。
「お母さん、あの子が積み木を崩すの!」
あの子?
指差す方を見ると、次女の隣に同い年くらいの4.5歳の女の子がいた。

長女によると、姉妹でせっかく積んだ積み木をその女の子が来て突然崩したというのだ。
近くを見渡しても、その女の子の親らしき姿はなく、多分ひとりでこの遊び場に放置されているらしかった。
次女が少し積んだところで、その女の子がいきなりそれを崩した。
「え⁇」
驚く私に長女が言う。
「ね?ああして崩してくるの!」

黙って見ていると、次女は怒るでもなく、泣きもせず、何事もなかったかのようにまた積み木を始めた。
うちの子供達に何か非があるわけでもなかったのですぐに注意したくなったが、次女の様子をもう少しだけ見ていようと私は浮かしかけた腰を下ろした。

その女の子は、その後少し離れた所で積み木をして遊んでいたのに、次女の積み木をまた崩しにきた。
崩すとまた離れて1人遊びをしていた。
次女が立ち上がった。
もう嫌になって戻ってくるのかと思いきや、その足は女の子の方へ向かった。
そして、女の子の積み木を一緒に積みだした。
その瞬間、女の子は積み木を手で払い除けた。
「うわ…」
もう、連れて帰ろう。
家では泣き虫で、長女に比べればわがままな次女が傷付いて泣き出すのではないかと心配になったからだ。

すると、次女はまたその子の積み木を積み始めた。
その子はまたそれを崩した。
乱暴に払い除けるのだ。楽しく遊んでいる空気ではなかった。
それでも次女はまたその子の積み木を積んでいた。


…すると。

その女の子が次女と一緒に積み木を積み始めたのだ。
終始無言の2人。
でも、そこにはさっきまでとは違う穏やかな空気が漂っていた。



この数分の出来事は、私の心に深く刻まれた。
子供達は知っている。
何かとても大切な事を。
私達はいつから人を信じられなくなってしまったのだろう。
表面的な事に傷付き、疑い、そして距離を置いてしまう。
次女が見せてくれた、まっさらな心の白いキャンバスをもう一度取り戻したくなった。


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