海外でコロナうつになった私が薬なしでうつを治した方法
イギリスの第一次ロックダウンから早くも1年以上がたった。去年の今頃は余裕のできた時間で、普段できない事をしようと前向きに考えてい私だった。ずっとやりたかった執筆や語学の勉強…時間を有効に遣おう。
さて1年後の私。
小説も書きあげていない!韓国語もマスターしていない!資格取得のための勉強にいたっては始めてもいない!パン作りは2ヵ月目で飽きた。断捨離も中途半端。しかし酒の量と体重は増えた。
それはいい。それはまだいいのだが。
最大の困難は、2021年に入ってから、かなりシンドイうつ状態に陥ってしまったことだった。
理由と考えられる事は二つ。
まず一つ目はコロナ禍が思いの外、長引いた事によるうつ。これはきっと、世界中珍しくない話だろう。
二つ目は我が家特有の事情。詳しくは前回の記事で書いたが、年末に雨漏りが発生し、すぐに終わる筈の修理をダラダラとを伸ばされ、なんと4か月もかかってしまった。
雨漏りの応急処置は屋根裏にバケツを置いておくことで解決したが、問題は修理のために組まれた足場によって日光と景色を遮断されてしまった事だった。
(前の記事にも載せましたがこんな感じで部屋が牢獄の様になってしまいました。)
そんな理由かい、世の中もっと厳しい状況の人は沢山いるのに、と書いていて自分でも思うのだが、ただでさえ日照時間が短くメンタルやられる人が珍しくないイギリスの冬。加えて12月からの先が見えない第3次ロックダウンで外出もできず家にいる時間が自ずと長くなる。そこにダメ押しで足場による牢獄化。私はやられてしまいました。
この陰鬱な家で殆どの時間を過ごしているうちに、気が付くと私のメンタルも底へ底へと沈んでいっていた。
一番辛い時間帯は朝。目が覚めると「死にたい」と言う気持ちにとりつかれて、にっちもさっちもいかなくなってしまう。
何もする気が起きず、夫や息子に申し訳ないと思いつつも一日中ソファで横になっている日も多かった。
3月初めからフリーランスの仕事が入り、仕事している方が気が紛れてよいかもと引き受けたのだが、やってみるとプレッシャーの多いプロジェクトで、かえって気持ちに悪影響を及ぼしたかもしれない。
夕方から夜にかけて気持ちは少し楽になるのだが、また朝が来ると絶望的な気持ちで目覚めてしまう無限ループ。
今にして思えば、この状態に入ってしまうと、うつから抜けようとするよりも、自分の気持ちがもっともっとうつの事に引き寄せられていってしまう。Kindleで何冊うつ関係の本を買ったかわからない。ネットニュースでも、一度うつ関係の記事を読むと、次から次へと同じ様な記事が出てくるので、もうキリがない。抜けられない沼へ自分から落ちていっているようなもの。
泣いてしまうと気分がスッキリする事があるので、わざと泣いてみようとしても涙も出ない。なんだか、感情が乾ききっているようだった。
一番酷かった2月~4月の3か月間は、希死念慮が酷く苦しかったのだが、何故か医者に相談する事は考えなかった。以前、知り合いがうつの薬が合わず、かえって悪化してしまっていたのを見た経験もあり、薬で治す事は無意識のうちに選択外としていたのかもしれない。
また、私の場合はコロナの前にも気持ちが沈みがちな事があり、運動やヨガでカバーしていた。一度、「もうあまり頑張らなくてもよいかな…薬の助けをかりようか」とGP(イギリスの家庭医)に相談しに行った事があったのだが、問診後、まずはセラピストに話す事を勧められ、薬は出してもらえなかった経験があった。(誤解のないように付け加えると若い女医はとても真剣に話を聞いてくれて有難かった。それだけで少し心が軽くなったような気がした。)なんとなく今回も同じような事になるかなと思い、医者には行かなかった。
今は大分状態が良くなりラクになりました。私と同じ様な状態で、投薬はなるべく避けたいと思う方がいるかもしれないので、私がやってみて効果があった方法をシェアしたいと思います。
(もちろんこれは、薬を飲むな!という趣旨ではなく、個々の症状や状況によって薬を飲んだ方が良い事もあると思います。あくまでも私個人の体験談として読んでいただけたらと思います。センシティブな事柄を含むので、ここからは有料記事にさせていただきます)
1.高い目標は掲げない。「死にたい」と思わない事を目標にする。その他の事はどうにでもなる。
うつ状態のときは、おそらく物事を上手く回す事のできない自分に罪悪感を持ってしまっているのではないでしょうか。
「仕事がスムーズにすすまない、できない」「家事がおろそかで申し訳ない」「勉強しないといけないのに全然進んでいない」などなど。
私も同じで、鬱でつらいうえに常に罪悪感を抱えていました。「今日こそはこれをしよう」と思うも、できなければますます自分を責めてしまいます。しかしある時、仕事や家事がどうの、よりも、とにかく「死なない事」を一日の目標にしようと思いました。一日の終わりに生きていればそれで目標達成。「死にたい」と思うことさえなければ、もっとエライ。
あれもしなければ、これもしなければ → でもできない → 落ち込む の悪循環になるよりも、「死にたいと思わない」=タスク達成!とハードルを低くシンプルに設定した事がきっかけで、私の場合はとても気が楽になり回復に向かったような気がします。
2.1日1回は外に出る。できれば自然の中に身を置く。
ロックダウン中でもエクササイズ目的の外出は認められているので、私は殆ど毎日近所の公園に散歩か軽いジョギングをしに行きました。
うつ病の患者向けに書いてある本や記事を読むと、必ず「朝の散歩」を勧めています。私は朝に行けなくても都合の良い時間に行きました。
正直、散歩をしたからと言って、気持ちが魔法の様にぱっと晴れる事はなかったし、歩いていても仕事の事ばかり考えてしまい気持ちが疲れてしまうこともありました。しかしそれでもきっと効果はあったのだと思います。
というのは、運動や散歩によって速攻性のある効果を感じられないとしても、多分、それをしなかったらもっと悪化しているのではないかと思うからです。ですのであまり期待はせずに、それでもきっとこれによって救われていると信じる位でよいと思います。
私の家の近くの公園には小さな森の様なエリアがあり、そこに入ると確かに心が穏やかになるような気がしました。自然と触れ合ったり緑の多い場所ではエンドルフィンの分泌が促されるそうで、行ける方はキャンプなども良いと思います。
3.家族に弱みを見せる
特に親の立場だと、子供に弱いところを見せないようにしてしまう人が多いと感じます。
立派な事だとは思うのですが、どうしようもなく辛いときには家族にヘルプのサインを出すのも良いのではと思っています。私の場合は4月初旬のイースターの日、夫が親戚に会いに行くというので思わず涙がこぼれてしまいました。普通ならイースターはイギリスではクリスマスに続いて大きな祝日で、家族でごちそうを食べて過ごす日なのです。
前述したように、それまでは涙も出なかったので自分でも少し驚いたのですが、驚く夫に、自分はこの異国の地で実家の家族もいない事、長引くロックダウンで数少ない友達にも会えずますます孤独感が増している事などを、責めるのではなく滔々と説明しました。息子も聞いていました。
考えて見ればイギリスに来て以来、夫や息子の前でもあまり弱みを見せなかった自分でした。おそらく「寂しい」なんて気持ちを吐露したのは初めてだったのではないかと思います。自分で選択して
特に男性は、人の気持ちを慮る事が苦手な人が多いような気がします。そういう人は悪気はなく、本当に言われないと分からないのですよね。(苦笑)家族がこのタイプの人は言葉にして弱っている自分の状況を伝えるのも良いと思います。
この後、夫が優しく気を遣ってくれるようになった気がします。
ただし、家族に当たってはダメです。当たるのではなく、伝えましょう。
4.マインドフルネス
マインドフルネスとは端的に言えば過去への後悔や未来への不安を忘れて今に集中する事です。代表的なメソッドに瞑想があります。
瞑想を試すのもよいでしょう。しかしうつの時はそんなゆったりした気持ちになれない事も多いものです。
マインドフルネスとか瞑想とか言うとなんだか敷居が高くなりますが、要は何かに集中することができれば良いわけです。
手芸、読書、楽器の演奏など。難しい事を考えなくても、何か好きな事があれば、集中してやってみましょう。誰でも何かに集中した後、気分がスッキリした経験があると思います。それがマインドフルネスです。
5.人と比べない
これも良くありがちですが、人とリアルで会えなかったりすると、目につく人はメディアの中に登場する人やYouTuber、SNSのインフルエンサーばかりという事になっていまいます。
これの落とし穴は、それらの「極限られた人」が世の中の標準の様に錯覚してしまう事だと思います。そんなの私だけですかね?
私の場合は、メディアでインタビューに答える人を見れば、その様に1つの事を成し遂げていない自分に自己嫌悪。YouTubeを見れば特技もなく人気YouTuberの様に稼いでいない自分を不甲斐なく思ってしまいました。インスタでスタイルの良い人や料理の上手な人を見れば(以下略)
私はロックダウン中にYouTubeにハマり、最初はとても楽しく視聴していたのですが、そのうちYouTuberが世界の標準の様な気がしてしまってきました。人が楽しめる動画をかなりの頻度で作成し結果も出しているYouTuberに比べて私のなんと無能でレイジーな事……→落ち込み。(アホですね)
これ、大会社の社長とか有名芸能人なら元々が自分とは違う世界の人と思っているので気にならないんですよね。罠は、ちょっと前まで自分と同じく無名だった人が結果を出しているという事で、自分は努力が足りないのではないかと焦ってしまう。
しかし。考えてみればメディアでインタビューを受けるような人や人気YouTuberは本当に一握りの人です。世の中、有名にもならずYouTubeチャンネルも始めない人が大大多数です。自分以外の人がみな、筋トレで美しい筋肉を見せびらかしたり、楽器が上手なわけではありません。そこを間違えない様にしましょう。(間違えるの自分だけかもしれませんが)
おまけ:五木寛之の「ただ生きていく、それだけで素晴らしい」を座右の銘にする
自分は死んだ方が良いのではないかという考えに取りつかれていた頃、この本を知りました。タイトル買いです。「ただ生きていく、それだけで素晴らしい」。このタイトルが、なんと素晴らしい。
私は「生きてるだけで丸儲け」はあまり心に響かないのですが、このタイトルは「え、そうなの?生きてるだけでいいの?」と目から鱗が落ちたような気持ちになり、すがる様な気持ちで日本のAmazonで注文しました。
国際便で送ってもらったわりには内容はあまり覚えていないのですが、寝室のサイドテーブルに置いておくと意識しなくても1日に1回はこの表紙の文字が目に入り、それだけでほっとしたような気持ちになりました。ああ、生きているだけで素晴らしい事なんだ。こんな私でも生きているだけで良いんだと。この表紙だけで買って良かったと思いました。
私は正直、今でも自分が世の中からいなくなってもそれほど困らないし、悲しむ人も少ないだろうと、どうも自分の事になると冷めた見方をしてしまうのですが、そんな私でも他の人が世からいなくなったら、とても悲しく感じると思います。
だからこれを読んでくださったあなたも、私も、生きているだけできっと素晴らしいのだと思います。あなたが今日も生きてくれて、私も嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます!サポートしていただいたら、イギリスでは滅多に食べられない美味しい日本食を食べに行きます!