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イギリスの古い民家で雨漏り発生。30分で終わる修理に4ヵ月もかかったワケ。
昨年の暮れの事です。寝室で眠っていると、タンっタンッタンッタンッという規則正しい音で目が覚めました。
時は午前3時ごろ。聴き慣れない音の正体を探して暗闇で部屋を見回すと、水滴が天井から水がベッドの上に落ちてきているではありませんか。タン、タン、タン、雨音はショパンの調べ……。
いやそんないいもんじゃねえ!
雨漏り!!!!!
ベッドの足の方を水滴が直撃しています。この家に20年ほど住んでいますがこんな事は初めて。(家自体は100年以上前のビクトリア朝に建てられたものです)
とりあえず直撃箇所に洗面器を置いて応急処置をし、夜が明けるのを待ち、雨漏りの修理に来てもらうよう連絡。古い家が多いロンドン、珍しい事ではないらしく直ぐに修理の予約が取れました。
クリスマス後にスカフォルディング(足場)を組み、新年早々に屋根修理。おお、イギリスにしては素早い対応。素晴らしい。
この時は、これがその後何か月間にも及ぶ、自分をうつ状態に導く仁義なき戦いの始まりとは思ってもいませんでした。
さて。
12月29日、予定通り足場の組み立てが行われました。日当たりが悪くなり、見た目も悪いけど少しの辛抱。
ここまでは順調でした、ここまでは!
1回戦
新年になり修理予定日に作業員が来ました。しかしこの人は屋根の状況を確認しただけでさっさと帰ってしまいました。直ちに作業に取り掛かってくれるのかと思っていたけれどまあ仕方ありません。修理日をアレンジしなおしました。
2回戦
再アレンジした日が来たが誰も現れません。電話すると、来る予定だった職人さんがなんとコロナに感染したとの事!それは大変だ!
仕方ない、次の修理日をアレンジしました。
3回戦
予定の日、予定の時間に職人さんが来た!(イギリスではこれだけでかなりの達成感)
しかし彼は家の中を見せてくれと言うではありませんか。
「いや、修理は屋根なんだけど?そのための足場も組んでるし」
「部屋の天井の修理と聞いているけど?」
「いや屋根の修理ですけど……」
「俺の仕事はインテリアだ。屋根の修理は専門じゃないからできないな」
君はなぜここへ送られて来たんだ……
実はこの頃、私達の懸念は雨漏りよりも足場にありました。雨漏りは屋根裏にバケツを置いたのでとりあえず雨が降っても部屋までは漏れてこない。しかし足場によって、窓から入る日光が大幅に減ってしまいます。ただでさえ日照時間の少ない冬、そして家で過ごす時間が長いロックダウン中、私はメンタル的に堪えました。夫は夫で足場によって泥棒が入りやすくなることを心配していました。また仕切り直しで次回の作業日の予約をとりました。
日が入らなく視界もブロックされた部屋。
4回戦
予定日に修理の人が来た!しかも今度は二人連れだ!頼もしいぞ!
二人は慣れた様子で足場から屋根に登って行きます。
今度こそは大丈夫と安心していると、ものの1、2分で地上にご帰還。どうしたどうした。
「屋根にアスベストが使われている可能性がある」
「アスベスト……」
「健康に深刻な被害があるかもしれないから、まずはアスベストの検査が必要だ。よって今日は作業できない」
うん、アスベストは危険だよね…
アスベストが使われているとしたら、それはそれで雨漏り以外の事も心配になる。住んでいる自分たちの健康被害、アスベスト除去の工事とその費用、もし家を売却する事になったら値段が落ちるのではなど……
ちょうどニュースで、ロンドンのある地域でその一帯の住宅にアスベストが発見され、知らずに家を買った住人が費用を負担(すごい額だった)しなくてはならないというニュースを見た後だった。心配だ。
5回戦
アスベストの検査人が来た。これもすぐに終わり、結果はアスベスト陰性との事。
ハレルヤ~~!
6回戦
作業員が来た。一人で来た。トントンと足場を上がったと思うと、瞬きするかしないかの間に速攻で戻ってきた。もうこの頃になると嫌な予感しかない。
「悪いけど、これは一人でできる仕事じゃない。二人いる」
「じゃあなんで二人で来なかったの?」
「俺はここにきて屋根を修理するように指示を受けただけだ。こんなに急な屋根だとは思わなかった」
「はあ……」
作業による危険があると言われれば無理は言えない。
次の予約は2週間後……こんな事が起きる度、次回の予約が翌週やら2週間後やらで、時間が過ぎていきます。
7回戦
2週間待ってその日が来た!今度は作業員の方が二人いる!
しかし天候が…。豪雨&強風のため各家の前に並んでいるゴミ箱の蓋が色んなところから飛んできて空中を舞っているような日だった。
「この天気じゃ作業はできない……」
そおっすよね、否定しません。こっちも鬼じゃないし確かに屋根で滑ったら大変です。
ちなみにいつも来る人が違うので、その度にこっちの事情を話す事になります。
8回戦
気が付くと暮れから始まったこの一件、長い冬が終わりを告げ桜が咲く季節になっていました。あはは……
今回は天気は良好!雨も嵐もなく見通しも良い!
しかし現れた修理人は一人!いいんか?一人で?
彼は屋根まで上り、再び速攻では降りてきた。今度はなんだよ……
「今、状況を見たけど修理に必要なツールがない。スレートもない。一度戻ってまた出直さないと」
「はぁ?」
「必要なツールとスレートを……」
「とってきて、今日中に作業してくれるの?」
「いや、また予約をとってくれ」
これはいくら何でも酷い。どんなジョークだ。今までなんとか辛抱強く対応していた夫がキレた。
「ツールがないってどういう意味だ。君は屋根の修理をしに来たんだよね?屋根修理の工具を持たないで屋根修理に来たの?スレートも無しでスレートの補修をしに来た?じゃああれか、君が床屋を予約をして、床屋に今日はハサミが無いって言われたら君は納得するのか」
「いや、この修理に必要な特別な工具が…」
「いいか。君で8人目なんだ。この足場はもう4ヵ月近くここに放置されたままで何も進まない。今日はいい、今日はいいけど次回は必ず修理にかかってくれ。次回は必ず必要なツールを持って二人組で来るようにきちんと連絡してくれ」
流石に作業員も「わかった。」と約束してくれました。
9回戦
遂に屋根修理のスキルを持った人が、2人組で、適した工具とスレートを持ってやって来ました。夢かと思いましたよ、ふぅ。作業を始めてからものの30分で終了。こんな30分で終わる事のために4ヵ月……。
10〜12回戦
屋根が修理出来たら1日も早く足場を取り外してもらいたかったのですが、これはまた別の作業になるので仕切り直しです。やはりと言おうか2回ほどドタキャンされ、3回目にやっと全て取り外されました。めでたしめでたし。
今だからこんな風に書けますが、実はロックダウン下、日の当たらない部屋で4ヵ月も過ごす羽目になった私はどんどん心のバランスを崩し、酷いうつ状態になっていきました。
その話は次回にでも書こうと思います。
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