教室公演の勧め。
▶︎教室公演の勧め。(実践編)018
高校3年生の時、NHKの舞台中継でシェイクスピアの「ハムレット」を見ました。主演のハムレットを演じたのは市川染五郎(現松本白鸚)さんでしたが、これがもうめちゃくちゃカッコ良かった。染五郎さんの独特な台詞回しやスマートな立ち居振る舞いに刺激された僕は自分でもやってみたいと、すぐに行動に移す事にしました。
高校に入学した直後、学校に演劇部が無かったことを知った僕は軽いショックを受けましたが、それでも2年生になった時に友達を集めて演劇同好会を立ち上げました。そして、その年の文化祭に国語の先生に教えて貰った高校演劇用の30分くらいの短い戯曲を選んで講堂で公演したのですが、話の内容はつまらないし、講堂は広すぎて観客に芝居が届いてるかどうか実感出来ないし、構内に声が反響して気持ち悪いし、なんだか最悪な舞台になってしまいました。
3年生になって、同好会への意欲を失いかけていたそんなとき目に飛び込んで来たのが市川染五郎さんの「ハムレット」だったのです。早速、同好会のメンバーに「今年の文化祭はハムレットだ!」と宣言して、まず本屋に行って福田恒存訳の「ハムレット」の文庫本を手に入れ、自分で3時間の物語を1時間20分くらいに短くして稽古を始めました。
当時、顧問の先生はいましたが、基本放ったらかしだったので僕が演出して、とは言っても、こんなふうに喋って、こんなふうに動いて、とアドバイスする程度で、しかもクローディアスは三船敏郎みたいにとか、オフィーリアは吉永小百合みたいにとかこの上なく適当な感じで。だって僕はただただ市川染五郎さんの真似をしてカッコよく気持ちよくハムレットが演じられればそれで良かったから。
衣装は中世ぽいデザインのものを女子にお願いして縫ってもらい、台詞も完璧に入れて稽古も佳境に入って来ました。さあ、あと2週間で文化祭だと意気込んだ矢先、オフィーリアの父親ポローニアス役の同級生がなんか悪い事をして突然退学に。しかたがないので、レアティーズ役の同級生と僕とでポローニアスの衣装を使い回して交互に演じることにしました。でもこの事件がむしろ皆んなの団結力を強固にしたようです。
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