次の停車駅まで
阪急電車に乗った
私の隣には1人分の席が空いている
小さな男の子を連れたお母さんが軽く会釈をしながら座った
たくさんの荷物をもっていた
お母さんは膝の上にまずは荷物を置き、それから子供をのせた。
私は、そのお母さんとの間に出来た隙間に気がついたので
「ここに、荷物おいても大丈夫ですよ」
というと
「ありがとうございます。助かります」
と安堵の表情を浮かべた
お母さんはカバンから小さな本を取り出して
膝の上で静かに座っている子どもに向かって読み始めた
この光景に私は安心した気持ちになった
今、電車の中の光景は全員と言ってもいいほど
みんなが携帯をいじっている
親子連れでもお母さんは携帯の画面を見て
子供は子供で自分用の携帯を持ち
何かしら映像を見ていると光景がほとんどだ
親子で窓の外を見ながら会話している様子も見なくなった
ましてや電車の中で本を出して子供と一緒に読んでいる風景なんて滅多に見なくなった
お母さんの声はとてもおだやかで私の耳に心地よくとどいてきた。
私は私で本を手に取り読んでいたのだが
その内容はもう頭に入ってこない
お母さんの 愛が詰まった声だけが私の中にはいってくる
特急電車
次の停車駅までのわずかな時間
懐かしい 母の声に私は包まれた