証失
俺には気になる奴が1人いる
よく動く奴なんだけど、
ときどき立ち止まり何もない方向をじっと見てる
その姿が何故か気になって話しかけたのだけど。
俺の事を知らないのに怖がらず答えてくれる、そんな奴
今も俺から少し離れた距離
斜め前で上を見てる。
夕焼け空を見ながら
そう、ずっと
『どうしたの?』
そいつが聞くんだ俺に、
笑ってしまった
その台詞、俺のなんだけど。
『何考えてるの?』
質問を質問で返すのは悪いと思いながら
そいつはしばらく黙ってた、
空を見てるって事はまた『夕焼け空が綺麗で』って言い出すのかと思っていたら
『消えた』
予想と外れた答え
『今度は何が消えた?』
水気を含んだ声色に聞こえたからか
精一杯の優しい声で聞いてみる。
こいつはときどき、失うことがある。
俺も知らない見えない何かを。
【小さいくせに一丁前に多くの事を考える馬鹿なやつ】
下手くそな生き方してやがると頭の中で小言を言いながら
『橙色が消えた』
ぽんっと言われ、上を見れば空は綺麗な橙色なのに何を言っているんだと思った
空を見ている視線を再度こいつに向けたら
とんでもない顔をしていた表現するなら【無】
こいつにとっての『橙色』が何を示し、どれ程のものかはわからなかったが
俺は駆け出していた
何かに駆られたのだと思う
熱くなっている小さい頭を抱えると
下から
甲高い悲鳴に近い音が鳴り出した