夏至(げし)
『夏至』
透き通る雫に喜びを感じる紫陽花と違って
僕の頬を流れる滴に喜びを感じることは出来ない
紫や青、桃色と……
彩度が低く淡く煌めく紫陽花の花達はまるで
「今日も雨が降ってくれて嬉しいわ」
と談笑してるように見えた
街に住む僕にとっては不快でしかない雨は
この世界に必要不可欠なもの
と上を見上げて黄昏ていたら
灰色の雲が、次第に薄く青に変わってきた
太陽だ
視界が白く、キラキラと光始めた
この遅い時間に太陽の光を浴びる紫陽花は嫌だろうかと
思っていたが
雫とは違った喜びを感じているように見えた
「両方とも大事だよな」と紫陽花に投げかけ
久方ぶりの光に僕は笑みが零れた