主題歌のイントロは重要である
イントロ——これは、吹奏楽など音楽をやったことのある人なら、当たり前のように知っていることであるが、「イントロ」とは、紹介や導入を意味する「イントロダクション」の略である。
英語の“in”から派生した単語ではないので、断じて、曲の入り(初め)という意味で、「イントロ」と言っているわけではないのだ。
イントロクイズ
本来なら——語源に基けば——イントロクイズというものは、その曲の全容を紹介している部分を聞いてその曲(歌)がなんなのかを当てるクイズであるはずだ。
曲の初めを聞いてその曲(歌)がなんなのかを当てるクイズではないということがわかるだろう。
『ルパン三世のテーマ』のたった1、2小節のイントロを聞けば、それが『ルパン三世』が始まる合図だということがわかるわけだし、『美少女戦士セーラームーン』だって、1小節あるだけで、自然と「ごめんね 素直じゃなくて〜」と歌い出せてしまうはずだ。
例えば、『宇宙戦艦ヤマト』の場合、「テッテーテーッテテテッテテー」から始まるファンファーレがあるわけだが、歌が始まる前に今挙げた部分を聞いただけでも、おそらくそれが『宇宙戦艦ヤマト』だということはわかるだろう。——————歌に入るまでに、“さあ、『宇宙戦艦ヤマト』が始まるぞ” と視聴者の気分を高揚させることができるのである。
『機動戦士ガンダム』と『推しの子』
『機動戦士ガンダム』の『翔べ!ガンダム』のイントロと言える部分は、あの一発鳴り響く銃声だけである。その後、「燃え上がれ」と歌い出す。正確にどのくらいの小節が、銃声で埋まっているかというのは、私の知るところではない。が、曲のテンポから考えれば、引き金を引いてからの時間は、かなりしっかりと取られていると思う。
その銃声はただの銃声だが、その銃声を聞けば、それが『機動戦士ガンダム』が始まる合図だと解る。なぜなら、そのイントロが特異的なものとして印象付けられているからだ。
対して、『推しの子』の主題歌『アイドル』は、1発、何か鳴らし、その後「無敵の笑顔で〜」とラップが始まってしまう。『機動戦士ガンダム』に比べたら、イントロの印象としてはかなり弱いものとなる。
ただし、ラップが 歌’ の役割をするので、『宇宙戦艦ヤマト』で挙げた高揚させるという役割は果たしていると言える。
寂しい……のか?
『美味しんぼ』であれ『めぞん一刻』であれ、イントロのリズムに乗せられて、ワクワクするものである。
歌い出しであるAメロは、序破急に従うので、ほとんどの曲が平坦な道をようなものである。だから、イントロで曲が分かることは重要なのだ。
序破急に当てはまらない曲でも、必ず、にぎやかな部分と比較的穏やかな部分からなる波があるはずだ。
ともかく、その曲の概要を説明できない、つまり、導入部が特徴的でなかったら、作品を象徴する主題歌としてはよろしくないということになる。
ただしそれは、イントロがあるかないかによるところではない。
『残酷な天使のテーゼ』では、イントロがなくいきなり サビ’ を歌うが、その後に盛り上げるための仕掛けを間奏という形で入れている。
最近の曲はイントロがないと言うが……
イントロは、編曲者ないし作曲者の腕の見せどころである。聴いた人の記憶にとどまる、曲の印象を説明できるフレーズを生み出せる技量は、そのまま編曲者の評価となる。せめてプロローグだけ覚えてもらえれば、本編を思い出してもらえるかもしれないからだ。
イントロがない曲が増えているのは、そのことを重要視しない(それは、作らないのか、作れないのか?)からだと考えられる。
主題歌において重要なのは、イントロの有無ではなく、作品を印象付ける導入部があるかないかでは、と思う。記憶に残る作品、サブカル史なりアニメ史なり映画史に作品は残る。その作品に見合う主題歌が期待されるであろう。