アニメ研究の話・その1
初投稿の記事で、高校生になって動画配信サービスを利用してアニメのイッキ見を始めたという話をした。初めてイッキ見したのは、『新世紀エヴァンゲリオン』だ。なぜエヴァだったか。
時は2020年秋、本当はその年の春頃の予定だった同作の最終章の公開が延期されたことを知ったころである。昔から好きだった『名探偵コナン』の声優について興味が出てきた。その頃YouTubeのおすすめに頻繁にコナン声優によるラジオの文字起こしが上がってくるようになったためである。そこで林原めぐみという声優に関心を持ち、彼女が「綾波レイ」という役を演じた『新世紀エヴァンゲリオン』を見てみようと思ったのである。
高橋留美子作品(るーみっくわーるど)との出会いへ
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結果エヴァにどっぷりハマってしまった。TV版、旧劇、新劇の全てを網羅した。そして次に選んだのが高橋留美子原作の『らんま1/2』である。この作品には、林原めぐみ氏以外にもコナンメンバーが出演しているという点も理由の1つである。山口勝平・林原めぐみ両氏が、主人公の乱馬を演じた(男でありながら、お湯をかけると女に変身してしまうため)。またその父・玄馬を緒方賢一、ヒロインのあかねを日髙のり子、あかねの姉なびきを高山みなみといった錚々たる面々が演じた。
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次に見たのが、あだち充原作の『タッチ』だ。これは林原氏ではなく、日髙のり子氏が国民的ヒロインである浅倉南を演じたことで有名だからだ。スポーツアニメを見たことがなかったので見ることに決めた面もある。
こののちにジブリ映画を何作か立て続けに見た。『天空の城ラピュタ』『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『耳をすませば』……。
そして、かねてから見たいと思っていた『めぞん一刻』を限定配信で視聴することができた。この作品は林原氏のデビュー作であると同時に、高橋留美子原作の名作だからだ。この作品で林原氏は、名前の無い端役をレギュラーで担当していた。同作の彼女の演技の中で一際目を引くのが、破水した妊婦の演技である。看護師免許を持っている彼女にしかできない迫真の演技だった。
アニメにおける声優の役割
さて、アニメは監督をはじめとするたくさんの人の手によって作られるものであるが、やはりそこに声優の存在は無視できない。声優は、声だけをもってして画面上のキャラクターに命を吹き込んでしまうという技を持っている。
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例えば、綾波レイ。彼女の話し方は棒読みのようで冷たい。制作陣によれば、彼女には感情がないのではなくて、知らないのだと。証拠に、作品の中で色々な感情を知っていった彼女は、最後は愛のために動き、少なくとも棒読みではなくなっていた。その要求に林原氏が見事に応えたので、綾波レイは大人気キャラクターになった。
声優は、人はもちろん動物の声を演じるときも常にプロフェッショナルを忘れない。千葉繁氏は『めぞん一刻』の惣一郎や『タッチ』のパンチという犬を演じた。もちろん犬を演じるためだけに同作に出演したわけではなく、『めぞん一刻』では四谷という主人公・五代裕作の隣人を、『タッチ』では主人公・上杉達也の父・信悟を演じている。言葉を発しないにも関わらず、その吠え方や唸り方を研究して演じるのである。
山寺宏一という声優をご存知だろうか。ベテランの声優で、『らんま1/2』では響良牙を演じている。『新世紀エヴァンゲリオン』の加持リョウジのようなダンディな声もあれば、『ルパン三世』の銭形警部のようなダミ声もある。これを押井守というアニメ監督は「8通りの声を出すし、20役を演じ分けて見せる」と評している。
『アンパンマン』では少なくとも10役を演じ分けている。その中では、めいけんチーズという犬の役を演じているし、先程の『らんま1/2』ではPちゃんという小ブタを演じている。彼は、いろんな動物の声を出すことができ、そのクオリティは本職のモノマネ芸人に引けを取らない。いや、それ以上だ。
もう1つ、日本では、幼年期や少年期の男子の声を女性声優が演じるということが多い。『天空の城ラピュタ』のパズーを演じるのは田中真弓という女性声優である。声変わり前の少年の声を女性が演じるということは、ごく自然に行われ、観客はこれを不思議には思わない。外国でそういったことが少ないのは、欧米人は基本的に高い声を出しやすいからである(これは礼拝で讃美歌を歌うからとも言われている)。
『新世紀エヴァンゲリオン』で緒方恵美氏は主人公の碇シンジを演じた。のちに公開された映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に』(1997年)では、冒頭にシンジが自慰行為を行った(と思われる)描写がある。このことから声優は性別をも超越したプロフェッショナルな存在であることがわかる。