消えた天白(磐田市:赤池地区調査)
天白信仰を調べ始めてしばらくして、『遠江国風土記伝』という江戸期に書かれた文書の復刻版に目を通した。すると当時の豊田郡の赤池という地に天白が鎮座していた形跡が見受けられた。(内山1799) 現 磐田市、旧 豊田町の地名だということは分かっていたが、それ以上の情報がないため、確認を放置していた。そして本日、磐田市立竜洋図書館に行く機会があったため、ついでにそこで郷土資料を確認し、帰りにこの赤池地区に立ち寄ることにした。
竜洋図書館でその「赤池の天白」を調べた結果、どうやら町内に鎮座する松尾神社に相殿として祀られているらしい。(豊田町郷土を研究する会1977) google マップで調べてみると、なるほどあるではないか。確かに赤池の町内のほぼ中央に松尾神社が確認できる。「これでまた一つ位置未特定だった天白社を明らかにすることができた」、そう喜び勇んで早々に要件を切り上げ帰路についた。
https://goo.gl/maps/WxrUKzMjoUBfZG5J9 (google ストリートビュー)
赤池のバス停で降りた。google マップに従えば赤池の松尾神社はすぐそこのはずである。あたりを見渡してみる。住宅と田んぼと、あとは空き地があるだけである。もう一度確認してみる。やはりそうだ、松尾神社はバス停の目の前のはず。嫌な予感がしてgoogle ストリートビューを起動する。嫌な予感は的中した。間違いない。今、目の前にある空き地がかつて松尾神社があった場所だ。
取り壊されたのだろうか。いや、待て。どこかに移動になったのかもしれない。そう思い、一帯をもう一度見まわしてみる。すると南の方に祭り屋台の倉庫らしき建造物がみえる。足を運んだ。そこには真新しい赤池の自治会館があった。
そばに祠はないだろうか? 見当たらない。近くで農作業をしていた高齢男性に声をかけてみる。「すみません。赤池のバス停前にあった松尾神社ってなくなっちゃったんですか?」 すると男性は「はい、もうなくなっちゃいました。」男性は続ける「今年の四月に公会堂を新しくしたときに、神主呼んでお祓いしてもらって、おしまいにしました」
それを聞いてなるほど、つい最近、天白がこの世からまた一つ無くなったのだなと悟った。時代の流れである。自治会で神社を維持管理するのは、政教分離の観点で難しくなってきているし、さまざまな事情があったのだろう。諸行無常。
男性によると、もとあった松尾神社の裏に小さな祠のようなものがあったのだという。他に相殿として祀られていた神社が確認できないから、おそらくそれが「天白社」で間違いないだろう。もう一度、空き地にもどり過去を夢想する。せめて、ここに松尾神社が、天白社があったことをnoteに記録しておかねば。そう思い、また帰路についた。