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フィールドワーク「鯖江」

実施日:2024年7月27日、28日

「芸術環境分野特論6A」はフィールドワークを通して文化デザインの現場を学ぶための授業です。社会人学生も参加しやすいよう土・日の1泊2日を基本に行われており、2024年度は「亀岡」「常滑」「浜松」「鯖江」「茅野」「昭和村」の6箇所がフィールドワーク先に設定されました。

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鯖江市はメガネの産地として知られています。雪深い地域のため冬期に家の中でできる手仕事が発展し、やがて地場産業が栄えることになりました。鯖江市・越前市・越前町は半径10キロメートル圏内に漆器、メガネ、和紙、刃物など7つの地場産業が集積しており、他の地域にはない特色をもつ場所です。「インタウンデザイナー」を標榜し、「創造的な産地をつくる」をビジョンに掲げるデザインスタジオTSUGI代表の新山直広さんの案内の下、地場の伝統工芸士たちの仕事場を訪ねます。また、11月に開催される産業観光イベント「RENEW」など、地域で活動することについて幅広いお話をうかがいます。
担当:久慈達也
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今回の参加者は22名。鯖江駅でご案内をお願いした新山さんとご挨拶。そのまま歩いて「めがねミュージアム」に向かいます。先週の浜松も暑かったですが、鯖江も真夏日。

めがねミュージアムは博物館とショップ、体験工房を併設した複合施設です。
めがね博物館の展示設計は本領域の服部領域長が代表を務めるgrafで手がけたもの。

現在「めがねの街」として知られる鯖江がどういう経緯で眼鏡産業を築いていったのか、博物館の展示を通して学んだ後は、越前漆器の産地である河和田地区へ移動。TSUGIのオフィス兼ショップで、新山さんがなぜ鯖江と関わることになったのか、その経緯をお話いただきました。

最初のきっかけは大学のプロジェクト「河和田アートキャンプ」。以降、市役所を経てデザイン事務所を開設し、現在に至ります。
事務所スペースにもお邪魔しました。
TSUGIでのレクチャーの後は、うるしの里会館周辺のファクトリーショップの見学です。
漆琳堂の内田社長のお話を聞きます。

河和田地区にTSUGIが出来て、RENEWという産業観光イベントが行われる過程で、工房の一部を改装したショップスペースを設けるようになってきたそうです。

越前鯖江には眼鏡のほか、漆器・和紙・打刃物・箪笥が有名ですが、それぞれの産地に少し距離があるため、2日目はマイクロバスで移動です。まずは越前和紙の今立地区の見学に向かいます。

昨日と違ってエアコンの効いた車内でみな楽しそう。
バスガイド新山、爆誕。
今回訪ねたのは五十嵐製紙さん。
伝統工芸士の五十嵐匡美さん。今年の大河ドラマ「光る君へ」にもご出演とのこと。

五十嵐製紙さんでは、楮や三叉、雁皮などの原材料から紙を漉いていく過程を説明していただきました。普段、伝統工芸に触れる機会が少ない学生たちは熱心に写真を撮りながら聞いていました。一通りの説明を受けた後は、近くの岡太神社・大瀧神社までは周辺の様子を観察しながら散策です。

静かな山間の町が越前和紙の産地です。ここはバスを降りて、和紙の里を歩きます。
紙の神を奉る岡太神社・大瀧神社。1843年建立と伝えられる社殿は、建築的にも大変珍しい屋根の構造です。


お昼を挟んで、午後は越前打刃物の見学のため武生地区へ。タケフナイフビレッジは、越前打刃物の製造、販売をおこなう協同組合による産業観光施設で、鍛冶と研ぎの作業風景を見学できる共同工房です。初めて見る鍛冶の現場ですが、休日のため作業していたのはお一人だけ。

研ぎ師の戸谷さんから越前打刃物の歴史について説明していただきました。


最後は、鯖江に戻り神明地区でBOSTON CLUBさんと乾レンズさんのLENS PARKを訪問。

説明してくれたのは、デザイナーの笠島さん。レクチャーのあと、加工の工程も見せていただき、大変勉強になりました。
BOSTON CLUBの前で笠島さんと記念撮影。
サングラスの実状をわかりやすく教えてくださった諸井常務。
ディレクションはTSUGI、建築設計はEIKA studio。

鯖江を拠点にデザインと産業観光に携わっている新山さんだから可能なアテンドのおかげで、それぞれの訪問先で素晴らしい体験が出来ました。フィールドワークというと、まずは「あるく」こと、そして「みる」ことが重要ですが、今回は「きく」が大変充実したプログラムでした。(K)

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