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フィールドワーク「常滑」

実施日:2024年5月25日、26日

「芸術環境分野特論6A」はフィールドワークを通して文化デザインの現場を学ぶための授業です。社会人学生も参加しやすいよう土・日の1泊2日を基本に行われており、2024年度は「亀岡」「常滑」「浜松」「鯖江」「茅野」「昭和村」の6箇所がフィールドワーク先に設定されました。

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六古窯の一つに数えられる常滑は、生活雑器以外にも土管や建築陶器など様々な焼物を製造し、日本の近代化を支えた土地です。近年は体験型の工房や古民家を利用したカフェなども増え、観光資源となる文化的な景観の保存にも力を入れていますが、地元の陶業者や建築家、デザイナーたちは伝統産業を次代へとつなぐための新たな取り組みを進めています。元無印良品のデザイナーで現在常滑に移住して様々なプロジェクトを進める高橋孝治さんの案内で、常滑の土にこだわる陶芸家や陶業者たちを訪ねます。

担当:高橋孝治、久慈達也
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去年は7月に開催された常滑でのフィールドワーク。あまりにも暑すぎたので、今年は5月に移動です。2年目なので引率も慣れたもの、と思っていましたが、早速トラブル発生。学生の一人がタクシーの中に貴重品が入った鞄を忘れてきたようで、常滑中のタクシー会社に連絡です。幸い無事見つかりましたが、何が起こるかわかりませんね。気を取り直して、とこなめ陶の森資料館の見学からフィールドワーク、スタートです。

2021年にリニューアルオープンした、とこなめ陶の森資料館。
常滑の焼き物の歴史を学びます。
常滑焼の研究と研修を行う常滑陶芸研究所。堀口捨己の設計(1961年)です。
常滑を案内してくれるのは、本学准教授でもある高橋孝治先生。
フィールドワークではその土地の地形や環境を読むことも重要です。研究所の屋上から海までの距離感や丘陵の様子、煙突の数など、街の全体像を把握します。
陶芸研究所の研修工房。

研修工房では、作業中の研修生にもお話を聞くことができました。中国や台湾からも常滑焼に惹かれて研修に来ているそうで、中国からの留学生たちはここぞとばかり中国語で質問攻めにしていました。親切にお答えくださった研修生たちに感謝です。

陶の森のあとは、高橋さんの事務所まで移動。これまでの経歴や地域でデザインをしていく上での考え方などレクチャーしていただきました。その後、明日の土染めのワークショップの下準備です。異なる場所で掘った常滑の土でどのような色の変化があるのか、楽しみですね。1日目はこれにて終了。

せっかくフィールドにいるのですから、触って体験しないと。
あらかじめ用意していただいた常滑や他の土地の陶土。
細かく砕いたら、ふるいにかけて、すりつぶします。

2日目の午前は、地元の陶芸家、鯉江明さんの窯を訪ねます。鯉江明さんは常滑で採れる土を使って作陶を続けている方です。

普段使っている土を掘るところを見学し、学生たちも掘ってみます。

誰もが粘土に触れたことはあるでしょうが、その土地の粘土を掘り出した経験はなかなかないと思います。常滑に限らず、私たちが重視しているのは「現場から、現場とともに」考える姿勢です。フィールドワークはそのために欠かせないデザインリサーチの方法です。

自分たちで掘り出した粘土から不純物を取り除いていきます。

お昼を挟んで、午後はTOKONAME STOREを運営する山源陶苑さんを訪ねて、常滑の陶業の現場を見学します。伝統産業をアップデートし、次世代へとつないでいくための様々な取り組みをされています。

代表の鯉江優次さんに製作工程を説明していただきました。
TOKONAME STOREの陶芸体験ブース。時間があれば参加していきたいところ。。

さて、フィールドワークも大詰めです。高橋さんの事務所に戻り、昨日準備しておいた粘土を使って土染めの実験です。細かくすりつぶしておいた土に水を混ぜ、木綿のバッグを染めていきます。それぞれ選んだ土が違うので、土ごとの色の違いが面白いです。

しっかりと生地に土を揉み込んで色を付けていきます。
水で洗って干して乾燥させれば完成。

常滑焼と陶業の歴史を学ぶことから始まった今回のフィールドワーク。根源的な方法で焼き物を作る人に導かれながら、常滑の粘土を掘り、同じ土で土染めを体験する、という一連の流れに「文化デザイン」の大切な要素が詰まっていたように思います。(K)






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