WWE SuperShow Summer Tour 2024
世界最大のプロレス団体、WWEの5年ぶりの来日公演の最終日に参加してきた。少し日が経ってしまったが感想を残しておこうと思ったので久々にnoteを更新することにした。
実は2002年から2019年まではほぼ毎年WWEの来日公演は行われていたのだけれども、2020年の大会はコロナ禍により開催中止、2021年にはJ SPORTSでのWWEの配信が終了して、国内法人であるWWE Japanも解散、日本でWWEを見る手段は大幅に縮小し、もちろん日本公演も白紙のものとなってしまっていた。そんな折、2023年10月からABEMAがWWEの独占放送を開始、無料枠で看板番組であるRawとSmackdownの放送を日本語実況つきで見られるようになり、有料コンテンツとして各種PLEやNXTの配信等も視聴可能な状況に。そんなこんなで今年2024年、5年ぶりにWWEの来日公演が実現した、という流れ。内情はもちろん知らないのだけれど、今回の来日におけるABEMAの尽力は大きかったのだろうなと思っている(ただWWEは今年1月にNetflixとの契約を発表して、2025年1月からNetflixが米国、カナダ、英国、ラテンアメリカなどでRawの独占配信を始めるらしい。ABEMAでの配信はどうなるのかしらね?)
・・・さて、ここまでさも昔からずっとWWEを追ってきた体で書いてきたのだけれど、私自身がWWEの来日公演に足を運んだのは今回が初めて。WWEに関しては、あずまんが大王のアニメの後に流れていた謎の番組で知ったのがきっかけだったので、初めて触れたのはもうかれこれ20年以上になる。自分ではそれほど熱心なファンだったとは思っていないが、高校生の頃に今は亡きパソコンパラダイスの読者投稿コーナーに”RIKISHI☆”というペンネームで葉書を送ったことを思い出した。どうやらそのくらいには好きだったらしい。
そして大学の頃まではケーブルテレビを見れる環境もあったので、比較的情報をキャッチアップしていたのだが、上京して働き始めてからは周りに好きな人間もおらず自然と興味がフェードアウトしていき、2008年前後からはほぼノータッチな状況だった。だいたいブロック・レスナーが日本マットに登場したりジョン・シナがラッパーになった辺りからの情報がない。だからCMパンクがどんな問題児だったのか分からないし、The Shieldの時代を知らないし、新日のヤングライオンだった頃にテレビで見た中邑真輔がWWEのベルトを巻くまでの選手になって活躍してることも知らなかった。今考えると本当にもったいない。
改めて私がWWEを見るきっかけになったのは今年のレッスルマニア40からだった。私が観てた頃からスーパースター達の顔ぶれもストーリーラインのノリも会社の体制も大幅に変わっていたけれど、やっぱりレッスルマニアの祝祭感は圧倒的だった。実際にWWEの親会社であるTKO Holdingsの取締役に就任し、名実共に"The Final Boss"となったロック様や、アンダーテイカーのサプライズ登場等々、オールドファンにとっても見どころ盛り沢山。長きにわたってWWE王座に君臨したローマン・レインズからコーディ・ローデスへの王座の移動は間違いなく新時代の到来を予見させるものだった。いやまあ旧時代はほとんど把握してないんですけどね。
そんなこんなでレッスルマニアでしっかりWWEユニバースとしての再教育を受け、以降毎週のRawとSmackDownをABEMAで見るのがここ数か月くらいの日課となった。特に来日公演が発表されてからは狂喜乱舞して日々の仕事が全く手に付かない状態になっていたものだ。
さて、1500字ほど書いてきたがまだ当日の内容に入っていないし、来日公演が決まるずっと前から日々の仕事が手に付いてはいなかったのだが、そろそろ本題に入ろう。35℃を超える炎天下の中予定の開場時間を過ぎても入場できない状態でイライラし、いざ場内の物販列に並んだら目ぼしいグッズはほぼ売り切れ状態で、あまりの運営の杜撰さに呆れかえっていたが、ステージを見た瞬間にそうした不満は吹き飛んだ。テレビで何度も観て憧れたWWEのステージがそこにあったのだ。
試合開始前までステージ中央にあるスクリーンには、最近のWWEの番組のダイジェスト映像やPLEの予告等が流れていたのだが、当日のTwitterのハッシュタグ付きの投稿が表示されてたのは面白い工夫だと思った。ちなみにこの新条アカネアイコンの投稿もスクリーンに表示されていた。誰なんだろうなこのオタクは。
しばらく待っているとステージには毎週のSmackDownでお馴染みのバイロン・サクストンとABEMAのアナウンサーのどなたか(名前忘れた)が登場、いよいよ試合開始かと思いきやそこから更に試合開始まで2,30分がかかり、なんというかアメリカを感じた(完全に余談だが、先述の会場のスクリーンに、9月からNetflixで配信予定の白石和彌監督ゆりやんレトリィバァが主演でダンプ松本を演じるドラマシリーズの予告が流れた際、ドミニク・ミステリオとほぼ同じレベルのブーイングが会場中から飛んでたのがかなり面白かった)。そんなこんなでようやく試合開始。当日の対戦カードはこんな感じ。
第1試合
ニューデー(コフィ・キングストン、エグゼビア・ウッズ)&レイ・ミステリオ VS ジャッジメント・デイ(フィン・ベイラー、JDマクドナ、ドミニク・ミステリオ)
第2試合 WWE女子世界王座戦
カイリ・セイン VS リブ・モーガン
第3試合
ジェイド・カーギル&ビアンカ・べレア VS ダメージコントロール(イヨ・スカイ&ダコタ・カイ)
第4試合 WWE世界ヘビー級王座戦
ジェイ・ウーソ VS ダミアン・プリースト
第5試合
グンター VS LAナイト
第6試合
ケビン・オーエンズ & サミ・ゼイン VS ブラッドライン(ソロ・シコア&タマ・トンガ&トンガ・ロア)
第7試合 WWE女子王座戦
里村明衣子 VS ベイリー
第8試合 WWE統一王座戦
中邑真輔 VS AJスタイルズ VS コーディ・ローデス
いやあ、本当に改めて見返してみてもすげー豪華な面子だ。ほぼ全員がメインを張れる選手であり、RawとSmackDownのオンエアでもほぼ毎週見ている選手ばかりだ。ABEMAの放送内でPLEクラスと何度も言われていたが、決して過言ではないだろう。
この中で私が高校時代から知っている唯一のスーパースターがレイ・ミステリオなのだが、とにかく人の入れ替わりが激しく、かつ大柄な選手が圧倒的多数を占めるWWEにおいて、身長160cm台の身長で、20年以上に渡ってメイン戦線で活躍し、その息子まで(大ブーイングを喰らう側として)大活躍しているというのは最近WWEの視聴を再開した私の中でたぶん一番の驚きだった。その親子対決が初戦から観られるのだから、いきなり涙腺が緩んでしまった。
私がWWEを見ていた2000年代前後と今とで大きく異なる点の一つとしては、女子戦線の充実ぷりにある。ディーヴァが廃止されて女子選手達もスーパースターと呼称されるようになったのが2017年以降らしいが、WWEの今の女子戦線は本当にレベルが高い(断言するが今年のマネーインザバンク大会に関しては男子の試合より女子のラダー戦の方が名勝負だった)。そのど真ん中にいるのが第2試合と第3試合に登場した面々。特に日本への凱旋試合となったカイリ・セインとイヨ・スカイへの声援は格段に大きなものだった。イヨちゃんのムーンサルトはほんまに世界一やで。
第4試合は今WWEで最もエントランスが盛り上がるジェイ・ウーソと、今年のレッスルマニア以降で一気に跳ねた感のあるダミアン・プリーストの王座戦。ジェイ・ウーソのエントランスがどれだけ盛り上がるのかはこの動画を見てもらえればわかるのだが、会場規模は違うにせよこれを日本でもやれたのだからね。試合もダミアン・プリーストがアンダーテイカーの得意技オールドスクールを繰り出したかと思えば、ジェイ・ウーソはロック様の決め技であるピープルズエルボーで応じるという展開で、こんなん笑うでしょ(ダミアンのその後の起き上がり方までアンダーテイカーだったし)。「ハウスショーは何でもあり」というのは事前情報として知っていたが、こういうことなんだというのを存分に理解した。
次回のPLEサマースラムで共に王座戦に挑むLAナイトとグンターとの試合は、前試合とは打って変わって完全にアスリートレスリング風味の試合。日本のリングの経験の長いグンターが全日のレスラーのような大きな動きで試合を作り、対するLAナイトはこれまたコテコテのアメリカンプロレスで応じていくという流れで、めちゃくちゃ見応えがあった。手が合うってこういうことなんだろうね。二人とも派手な技のある選手ではないのだが、クラシックな技の応酬だけで会場を湧かせられるのは確固たる実力があればこそだと思う。敢えてこの日のベストバウトを挙げるなら、私はこの試合を挙げる。どっちも王座戦を頑張ってほしい。特にLAナイトはあの鼻持ちならないクソユーチューバーからUS王座を奪い取って欲しい。
第6試合はSmackDownの番組内でも抗争を繰り広げているケビン・オーエンズとソロ・シコア率いるブラッドライン。1対3のケビン・オーエンズの救援にサミ・ゼインが駆けつける形で試合開始。まあなんだ、新日本プロレスも同時に見ている身としては、ついこないだ鷹木信悟と名勝負をやったりEvilに髪を切られたりしたタマ・トンガと、浜松でオーカーンに餃子を食わされてたタンガ・ロアがだいぶ早くに日本に帰ってきたことに対して思うところがなくもないのだけれど、会場は凱旋に対する歓迎ムード一色で「タマちゃーん!」という声援が飛び交う大変暖かい空間になっていた。おかしいな、極悪軍団の試合の筈なのに・・・まあそんなタマちゃんには声援が飛ぶ一方で、ソロ・シコアに対してはしっかりと"Solo Sucks!"のチャントが飛んでいたし、”WE WANT ROMAN!”の大合唱も発生してた。というか客のリアクションに細かく反応するソロ・シコアが無闇に面白くて、今回のツアーで一気に好きになってしまったかもしれない。
セミファイナル第7試合についてはなんとWWE公式から1試合まるごとアップされていた。ハウスショーの試合がこうして配信されるのは異例中の異例なんだとか。技の引き出しがどれだけあるのか分からない里村明衣子を王者として全力で受け止めるベイリー、これまたとんでもない試合だった。必見よ必見。
そして迎えたメインイベント。WWEのトップ層は本当に入場だけでも値千金の価値があるというのは昔からWWEを見ていると実感するところではあるのだけれど、中邑真輔とAJスタイルズとコーディ・ローデスはやっぱり本当に別格なのだなということを生で見て再認識させられたというか。限りなく陳腐な言い方をすればオーラが違う。某外道の言い方を借りるなら「レェェェベルが違うんだよ!」というアレ。最終的に試合は大一番でしか見せないコーディのクロスローズ3連発が真輔に決まってコーディが勝利したのだけど、本当に多幸感に満ちた試合だった。
元バレットクラブであったコーディとAJが試合後にtoo sweetをやったり、"king of strong style"として中邑真輔をリング呼び込んでみたりと、コーディがファンサの神と呼ばれる片鱗がここでも垣間見えた気がする。プロレスは縦の歴史だけじゃなくて横の繋がりを追うのも醍醐味の一つだよなと改めて思うよね。
ダラダラと書いてきたが、まあめちゃくちゃ楽しいWWE日本ツアーだった。チケット代が高いのもあってかやや客の年齢層が高かったし、興行の素晴らしさで完全に上書きができない程度には物販や入退場の誘導といった運営面のレベルの低さは気になったが、来年のツアーがあれば必ず参加したいし、やっぱり日本でもRawやSmackDownやPLEが見たいという気持ちを強く感じたのであった。