#124 A hidden church in Kochi City
四国を訪れた時の話です。
空港からまず目指したのは憧れの地、セルフビルドの極北「沢田マンション」でした。
好きな人の間では有名なこの5階建ての巨大マンションは、更地の状態から素人の沢田さんと言う一人の男性が年若い奥さんとともに作り上げたものです。
沢マンについてはさまざまな書籍が出ており、僕も昔からある程度読み込んでいましたが、実際に行ってみるとその巨大さに圧倒されました。
そして設計図なしで作り上げられたそのデザインも、意外なことにあらゆる角度から驚くほど美的でした。
興奮してコンビニで急遽ハサミとセロテープを買い込み、ノートを長くして全貌をスケッチしたほどです。
建設当初は車でスロープを登って屋上まで行けたといい、驚くべきことに屋上に備え付けられた巨大なクレーンまで沢田さんの自作だといいます。
この話のなにが凄いのかは、美術が好きな人ならば説明が要らないはずです。
この精神的、肉体的のあらゆる意味で美しい巨大違法建築は、当主の沢田さんが亡くなるとスピリットを失った肉体のように増築がなされなくなりました。
できるならば沢田さん家族が建築を続ける姿を見たかったものです。
さて、自由な沢マンを見た後はやはり自由な"日曜マイク"というイベントで有名な"じんぜんじゅcafe"さんに向かいました。
Youtube上でいくらかその宴の記録は見ることができます。
じんぜんじゅcafeのご主人と話していると、かつて沢マンでギャラリーを開いていて高知のアートシーンを盛り上げていた岡本さんという方が、今は別の場所に移動して"コレンス"というスペースを運営しているという貴重な情報をいただけました。
さっそくそのまま車を走らせてみると、こちらも自由と文化を感じる素晴らしいスペースでした。
さらにそのコレンス内にある雑貨屋さん、"とき時"にいらした美しいオーナーから「沢田マンションに暮らしたクリエーターが高知に散らばっていきシーンを作った。沢マンがすきならこの先を歩いていくといい」という情報をいただき2ブロックほど歩いた奥まった路地の先に隠れていたのがここです。
路地を入っていくと壮大な空間が広がっており、僕の頭にすぐに、"隠された教会"と言う言葉が浮かんできました。
もちろんこのような教会を崇めるのは、風変わりな嗜好の信者達しかいません。
"とき時"のオーナーさんによると、彼女が子供の頃はここはかつて映画館だったそうです。
沢田マンションを出発点に更に二人の地元のカルチャーを担う重要な方々から貴重な情報のバトンをいただき、自分にとって重要なこの風景に最後に出会いました。
僕はかつて海外でアンティークのバイイングをしていたので、純度の高い情報はインターネットでも書籍でもなく、人の口の中にあることをいろいろな国で体感しています。
そしてその情報が自分に向かってくるためには、目の前の人に興味と敬意を持って話しかけることが、まずは最低限のスタートラインになります。
サポートしようかなというお気持ちだけで、心から感謝です。