飲食店への想い
20代後半までワインは赤玉パンチの一種類しかなくて、くるくる回して飲む人はただ格好つけたいだけだって本気で思っていた。
ピザだってデリバリーかシェイキーズしか食べた事なかったし、チェーンの居酒屋で揚げ出し豆腐ってのが定番メニュー。
そんな時、「合コンあるからおいでよ」と取引先の兄さん的な人に声をかけてもらった。
サルバトーレから始まった食べ歩き
指定されたのは「サルバトーレ@東麻布」というイタリアン。
実はイタリアンレストランってのも初。
地下に降りていくと、眩くもあり、温かみもあるような光に包まれた、なんとも洒落た店内にこれまた洒落た人の笑顔。
スタッフみんなが「ボナセーラ!」と、こちらも訳わからず「ボ、ボ、ボナセーラ・・・」。
雰囲気に飲まれつつ、合コンがスタートしたものの、初めて食べる料理が美味しすぎて女性の話もそっちのけ。
乾杯のスパークリング(これも美味かった)を飲み終え、「この前飲んだやつ頂戴」と兄さん方がオーダーしたのが、これです。
このワインが、もうね、ワインってこんなに美味しいんだーって本当に感動するほど美味い。
クルクルっとグラスを回せば、ねっとりとエロいマグマのごとくグラスの淵をまるで音楽を奏でながら流れていくようで、全く飽きる事がない。
ゆっくり口に含めば、頭を叩かれたような衝撃と共に、走馬灯のように様々な景色が流れていくような感動。
この感動は帰宅後も忘れられず、次の日も友達誘って、なんと2日連続で行ったわけです。
ちなみに、最初は兄さんたちが御馳走してくれたので、値段は分からなかったんだけれど、次の日はワインってこんなに高いのか!とちょっとビビリましたw
始まった食べ歩き
当時はインターネットも今みたいに普及してなかったから、待ち合わせすると最初に向かうのは書店。
その街にある美味い店を雑誌で選んでからガラケーで電話する流れ。
そうすると不思議なもので、美食家という人とも出会うようになるんだけれど、次に出会ったのが取引先のTさん。
最初に連れて行ってくれたのが「わくい亭(和食居酒屋)/本所吾妻橋」。
清潔感ある暖簾を潜って扉を開けた時の光景は今でもはっきりと覚えている。
BGMは客の笑顔って言っていい位に一同楽しそうに食事していて、料理が運ばれる度にあちらこちらから歓声が聞こえる。
最初に食べたのは「しめ鯖」。
それまで僕が食べて来た、しめ過ぎた真っ白なものでなくて、サバの色がきちんとはっきりと分かるもの。酸味よりも最初に旨味があって、酸味は引き立て役に過ぎないような味付け。
店で切った大根のツマが途中良いアクセントになっていて、箸が止まらず、こちらも自然と笑顔になっていく。
味は引き立て役に過ぎない
それからいろんなお店に行った。
ネットが普及してから検索は楽になって、その数も加速してあの店のあの料理が美味いと聞けばメモしたりブックマークした。
そんな事をして、「行った店」「行きたい店」も増えて来て、他のレビューを読んでいるうち、ふと、違和感を感じるようになってきた。
美味い店を知るよりも、美味い店との関係性を考える方が気持ちいいな。
街にあるお店。
街と店の関係に思いを馳せながら駅から向かったり、歩いて行ってみたり。
店が見えてきた時に何気に俯瞰して店を眺めてみる。
女将さん元気かな?どんな料理食べようかな?
入り口に入ると感じる店独自の雰囲気。
美しく整理されたキッチンを含め店の全ての場所が気持ちよい。
メニューに書かれた一つひとつに作り手の思いがある。
こうした事全てがそのお店の味につながるんだ。
調理道具や具材、調味料、その全てが進化している。
僕も目隠しされたらコンビニ料理だって美味いって思うだろう。
そこを分かるか分からないかなんて事より、どこを味わうか?って視点が大事だって思う。
そして、そこが沢山見えてきた時、その店が自分にとって唯一無二の店になっていく。
在り続けて欲しい飲食店
最初の晩餐で、「あの店のあの料理が食べたい」って思うのは当然。だけれど、在り続けて欲しいってお店にはいくつも思う事がある。
自粛になって思い浮かべる店ってどこだろう?
自粛になって思い浮かべる顔ってどこだろう?
自粛になって思い浮かべる音や匂いはどこだろう?
だから、最初の晩餐で思うお店って、あの店で、あの料理を食べて、美味かった!って言いたい思える店。
あぁ、早く時間を気にしないで味わいたい!
イルタンブレロ/小伝馬町
トロムペット/小伝馬町
串揚げ光家/浅草
地酒専門 野崎酒店/新橋(本館の1階が好き)
登川/恵比寿