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Photo by
yokoichi
⑱いつ傷は勲章になるのか
吾輩はカラス。
今日は空を飛んでいると、傷を抱えた『人間』を見つけた。
その人間の感情を読み取る。
傷は深ければ深いほど、触れることも見ることも難しくなる。
それはその人の人生を実際に映像のように見ることができないからである。
もし、覗けるのなら人間同士理解は深まるのかもしれない。
でも見れないようになっている。
傷が大きくなると、いろんなものが失っていく。
好きだったものも好きだったことも好きだった人間関係も。
吾輩の仲間のカラスには傷を負ったものがいる。
翼を折ったカラス、鋭い爪を失ったカラス、獣の牙に裂かれたカラス。
その中の何羽かはもう空を飛べない。
彼らの傷は決して消えない。
時間が経てば、痛みは薄れるのかもしれない。
ただ、あの日の傷が消えることは決してない。
それを抱えて進むしかない。
吾輩は傷を負いたくなくて、時々飛ぶのが怖くなる。
だが、奈落の底へ落ちそうなときほど、爪を立ててしがみつこうとする。
不思議なものである。
まだ飛べるはずと少し傷ついた羽を広げて空を飛ぶ。
『人間』よ。
生きている限り、無傷ではいられない。
過去に負った傷は消えることがないし、
思い出すたびに傷はえぐられるかもしれない。
ただ、それは生きてきた証でもある。
いつかきっとその傷が勲章と言える日が来ると信じて、
今日も飛ぼう。
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