君は OFFICE CUE を知っているか ~プライドをかけたチョロいデカの捜査記録~
『懐かしの西表島』
その刑事はこの水曜どうでしょう最新作の中で話題になっているエンディングの一場面が気になってしかたがなかった。
刑事の数十倍の記憶力を持つ三男くんにまで
「これは・・・なんだ?」
と言わしめたその映像。
どうでしょうDVD33巻+R14が収納されている引き出しを開けて考える。
背表紙を見れば内容が浮かんでくる。
が、あの場面だけはどうしても思い出せないのだ。
あれは何の旅の時の誰?
刑事は可能性のあるDVDをピックアップして、時間の許す限り観直して探した。
本編はもちろん特典映像も、初期の頃のシークレット映像も全部だ。
(シークレット映像はくそめんどくさい作業をリモコンで操作すると出てくる映像だ。たいていは副音声収録時の大泉くんとミスターだ。)
そんなの、ネットで検索すればいいべさ って誰もが思うことだろう。
しかし、それはできない。
なんとしても自分で見つけ出さなければ
刑事の藩士としてのプライド(あんのか?そんなの)が許さないのだ。
必ず見つけ出す!と意気込んでいたのは最初の2、3巻まで。
どんなに早送りで見たって1巻1時間以上はかかる。
捜査ばっかりしていられないんだ。他にもやらねばならぬことがあるんだから
33巻も観てられるかーい!
よし!捜査に行き詰まった時には現場に戻ろう。
エンディング映像の手がかりを基に取捨選択せねば、いつまでたっても謎が解けない。
いいか?捜査ってのは現場100回って言ってな、足を使って靴をすり減らして捜査するもんなんだよ。
と昭和の刑事はニヤッと笑った。
歩きも走りもせず右手のリモコン1つで最初の現場に戻り、何度も見返してたどり着いたエンディングの映像からの推理は3つ。
半袖じゃないから、夏じゃない。
高い位置から撮った場面のもの。
これはたぶんあの人。
ってこと。
これを頼りに厳選したDVDをまた見返す。
いや
わからんて。
こんな人いねえって。
もうお手上げ、迷宮入りかもしれん。
頭を抱える刑事。
諦めがつかない刑事は、ついにネット検索に手を染めてしまった。
くそっ
これだけは避けたかったのに、背に腹は代えられない。
だが、エンディングのその場面について言及している呟きは見つけられず、グーグル先生も明確な答えは持っていなかった。
諦め半分で開いたYouTube動画で一瞬だけ映った映像が、憔悴していた刑事に最大のヒントを与えてくれた。
これだ!
これに間違いない!
見つけた、やっと見つけたーーー!
執念の捜査にやっと光が差したのだ。
しかし、待てよ。
見つけたのはいいけど、これはいったい
どっから拾ってきた画像なんだ?
スクショして拡大する。
小さな文字がある。
読めない。
その時、刑事の膨大などうでしょう記憶の中のほんとに些細な後悔が蘇った。
これって
きっとあれだ。
値段が高くて、すごく欲しかったけど当時は手が出なくて買えなかった
水曜どうでしょう写真集(2003年出版)の中の写真だ!
間違いない 絶対そうだ。
けど
確証がない。
もうこうなったら奥の手を使うしかない。
すぐさまスマホを駆使し
ちょろい刑事は禁断の玉串料をお供えしてしまったのだ。
BOOKOFFオンラインで918円のこれだ。
二日後に届いたそれは古本とは思えないくらいきれいだった。
はやる気持ちを抑えつつ、一枚一枚ページを捲っていった。
200ページを過ぎたその時
謎は全て解けた。
これだったのか。
刑事は大きく息を吐き、てんを仰いだ。
それは安堵のそれか、勝利のそれか、自分にも分からなかった。
答えの全容は守秘義務(?)によってお伝えすることはできないが、完璧な画像が手に入り、これが確たる証拠となり事件は終息した。
難解な事件ではあったが、藩士としてのプライド、執念、そして、なんともチョロいどうでしょう愛が解決に導いたと言っていいだろう。
こうして、最終話から10日間のどうでしょう捜査は終了した。
捜査記録を打ち終えた刑事はパソコンをそっと閉じ、ずっとテレビで流しっぱなしだった「懐かしの西表島」を老眼鏡越しに上目遣いに見て、勝ち誇ったように
少しだけ笑った。
その後ろで分厚い写真集をパラパラとめくりながら三男くんが言った。
「相変わらず、実にチョロい人だ。」
したっけ