別れのしるしに…
先週、定年前に退職する同期タナカさん(仮名)の送別会が行なわれた。
タナカさんは僕より年上の55歳で独身。さみしい頭頂部と長い後ろ髪で落武者のような髪型で赤ら顔。身長は低く腹も出ている。口ぐせはよろぴく。
退職の理由を聞くと、
もう潮時さ。静かに消えたかったんだ…とめちゃくちゃカッコつけて言った。
彼は平社員である。
僕:退職後は?
タナカ:何もないさ。
僕:生活はどうするの?
タナカ:何とかなるだろうさ。
いちいちカッコつける話し方にイラついてきたので、今、パートナーはいないのかと少し突っ込んだ質問をしてみた。
タナカ:今はいないよ。かつて結婚を考えたヒトはいたけどさ。
僕:どんな人?
タナカ:農協に勤めているヒトで、器量が良くて、オレに惚れててさ。オレのカラダがよほど良かったんだろうな。いつもむこうがホテル代を払ったよ…
僕:(そんな事聞いてないけど)どうして結婚しなかったの?
タナカ:俺のハートがノーと言ったんだ…
55歳の赤ら顔ハゲが遠い目をして言い放った。
タナカさんは、みんなにお礼を配った。それには、
お世話になりました。
別れのしるしに…
と書いてあり、裏面に人の影が印刷されていた。
この影だれ?とか思っていると、タナカさんがこれには暗喩があるんだと言い出した。
タナカ:別れのしるしに…と影でピンとこないか?
僕:??
タナカ:出港だよ。寺尾聡だよ。別れのしるしに俺の影を置いていくのさ。
♪自由だけを追いかける孤独と引き換えにして〜♪よろぴく〜!
僕:爆笑(ダム決壊)
わかるか!
どこが暗喩だよ!
いつまでもお元気で!
了