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ガイアフロー静岡蒸留所のウイスキースクール参加レポ

ガイアフロー静岡蒸留所さんで月1程度で開催されているウイスキースクール製造初級スクールに参加してのレポになります。
2日に分けて麦芽の粉砕からボトリングまで全てを体験することができます。

ウイスキーの製造が気になる方だけでなく、ウイスキーのどの工程でどの様な違いが出るかを感じウイスキーの奥深さをより体験できるものでしたのでとてもおすすめです。


ガイアフロー静岡蒸留所について

簡単にガイアフロー静岡蒸留所について軽く紹介を
ウイスキーの輸入に始まり、2016年からウイスキーの製造を始めています。場所は静岡駅からバスで1時間ほど、かなり山の方ですが標高は意外と低く200mです。
特徴といえば軽井沢蒸留所からポットスチルK、薪を使った直火のポットスチルWの2種類の蒸留機。そして木製のウォッシュバックを使っている点になります。特に薪の直火+木製のウォッシュバックは世界的に珍しく2000年以前のアードベッグや、マッカランの一部のみ程度ですね。

1日目

座学

ざっくり製粉から糖化、醗酵から蒸留、熟成のことを軽く学ぶことができます。ウイスキー検定2級を持っていても、ピート系は再留の際にテールを少し残すとかガイアフロー独自の運用など面白いtipsが色々あり楽しく聞くことができました。

製粉

ガイアフローではハスク:グリッツ:フラワーが3:6:1になっているとのこと。また、実際に製粉したものを篩にかけるという作業も行いました。
ガイアフローでは英国産の麦芽だけでなく、静岡産の麦芽も使っており食べ比べをすることもできました。サイズとしては英国産の方が大きく、味は薄い。静岡産の麦芽は小さいですが甘みを感じるものとなっていました。

ガイアフローで使っている麦芽

製粉された麦芽をお湯と混ぜ糖化させた麦汁も飲ませていただきました。
右の1番麦汁は甘みが強く、2番麦汁は麦の香りのする水という感じです。また、発酵されたものはアルコールも発生しビールの様になってきます。

麦汁の飲み比べ

発酵

その発酵はというと、この様にモコモコになっています。発酵に使う酵母も日本酒で培われた静岡の酵母研究からウイスキー用のモルト酵母を作成しているとのことで、まだまだ変化していくとのことでした。

発酵中の麦汁

ガイアフローでは4基のオレゴンパイン材のウォッシュバックと6基の静岡産の杉を使ったウォッシュバックが使われています。
静岡産の杉は様々な森や山を探し良い杉を探したとのことで、実際に木目を見ていると夏目がよく本当にいい木材を使っていることがわかりますね。

オレゴンパイン材のウォッシュバック
静岡産杉のウォッシュバック

蒸留:ポットスチルK

軽井沢蒸留所からきてオーバーホールもされた蒸留機。特に長いヘッドとラインアーム。また、バルジに当たる要素がないのも珍しく直線が綺麗な蒸留機です。この長いヘッドとラインアームのおかげで酒質もフルーティであっさりと飲みやすいのがKの特徴となっています。

ポットスチルK

蒸留:ポットスチルW

こちらは薪直火焚きの蒸留機W。1月の寒さの中では助かる暖かさですが、夏は地獄とのこと
ポットスチルWでは直火のため800度になるため、モロミのデンプン質などが芳ばしい香りを生み出し複雑な味わいや長い余韻につながります。

ポットスチルW

体験では実際に薪を割り、薪をくべることもできます。

ポットスチルWに薪を入れる人

テイスティング

1日目の最後のお楽しみテイスティング。
KとWのニューメイクに、ノンピートのKとWの44ヶ月熟成や50ヶ月超えのワイン・シェリー・ピーテッドをいただきました。
また、今回はチーフブレンダーの方がお休みだったため、マスターブレンダー兼社長の中村さんにテイスティングを教わることができました。

テイスティング

Kは前評判通りとてもフルーティーで飲みやすく、特にニューメイクは原酒の良さが抜群でした。香りはイエラムの様に奥行きのある甘くフルーティな香り、口に含むとエステリーな香りが一気に広がります。
Wはニューメイクでも燻製香を若干感じ、熟成が進むと非常に味わいが深く長いものになります。ピーテッドも美味しかったのですが、販売は10年先くらいになるとのことでした。2024年のカスクオーナーになると3年のピーテッドが帰るのでそちらですね👀

閑話休題

静岡のバー

そんなこんなで1日目終了です。ここで大事な話ですが、ウイスキースクールではウイスキーの購入が2日目の朝しかできないのでもちろんゆっくり試飲する時間もありません。そのため、ガイアフローの各お酒を飲みたい場合は1日目の終わり時点でバーに行きましょう。
私はBar OZさんに行ってきました。前情報なしで行きましたが、ガイアフローで見学の案内をしている方もバーに立っておりここでも色々な話が伺えます。何よりガイアフローから出ているすべてのボトルが揃っています

静岡の夕食

参加者の人がみんな話していましたが、意外とスッと入れません。特に静岡おでんや蕎麦を食べたい人は予約していきましょう。

2日目

ミドルカット

再留が終わった72度ほどのアルコールをテール・ハート・ヘッドで分ける作業です。
ここでは実際に再留が終わったものからハートを取り出す部分を見ることができ、この日はポットスチルKだったようで再留されたアルコールが出てきた時にフルーティーな香りも広がっていきました。
実際のハートをどう取り出すかは担当者の鼻とアルコール度数で分けられます。完全に職人技ですね。

テール・ハート・ヘッドの嗅ぎ比べ

樽の運搬と樽詰め

最近できた第3倉庫で樽を転がして運ぶ体験と、樽詰めの体験ができます。
樽運びですが、かなり大変です。空樽でも50kg, 樽詰めをすると200kgになります。さらに、木栓をしているので単に転がすわけではなく、木栓が床に当たらない様に樽を180度回転させながら運ぶ必要があります。私は翌日見事に前腕が筋肉痛になりました。
実際はフォークリフトを中心に使うらしいですが、短いところは同じ方法で転がすとのことで教えてくださる方は見事な樽捌きをしていました。

樽詰めはこの様にノックをひねるだけで詰めることができます。夏場などはアルコールが膨張するので入れる量を時期によって調整するとのことですが、ここは職人の感覚と本当に職人芸でウィスキーができていることを再体験できます。

樽詰め

また、この第3倉庫ですがラック式で大量の樽が保存されており、倉庫に入るだけでバーボン樽を感じるバニラのような甘い香りをうっすら感じることができます。

そのいい香りの広がる中でご褒美的に樽出しでバーボン樽の65ヶ月もいただきました。5年弱とはいえないのほどのいい色。これはあえて温度変化のある保存環境にすることで樽の中の熟成速度を早めているとのことです(その代わり天使のわけまえで半分になるのですが)。
これは海外麦芽のため、静岡の5年とは異なり芳醇なバニラ香とフルーツキャンディーの様な甘い味わいが楽しめます。その中でもうっすら芳ばしさがアクセントになり、今回の静岡旅で飲んだ最高の一杯でした。

Wのバーボン樽65ヶ月熟成

ウォッシュバックの掃除

木製のウォッシュバックのため掃除が重要ということで、掃除も体験できます。ウォッシュバックの中は7割ほど掃除してくださっていますが、それでも乳酸菌由来のすっぱい香りがうっすらします。掃除前はもっと酸っぱい香りがするとのことで、ありがたい限りです。
掃除はブラシで優しく擦っていく形になりますが、何より水で黒ずんだ杉の木目の美しさが目をひきます。

ウォッシュバックの中にいる

もろみの飲み比べ

この後にあるのがもろみの発酵日数による飲み比べです。
日が経つごとに甘みが減り、炭酸やアルコール感がでてきます。2日目はビールに近い形ですね。
また、発酵槽によって香りが違うのもとても面白いところでした。静岡杉の発酵槽ではオレゴンパインにはないナッツの様なふくよかな香りが感じられます。

もろみの飲み比べ

ブレンダーとランチ

ウォッシュバックの掃除も終え、修了証の授与が終わった後にマスターブレンダーとチーフブレンダーと近くのイタリアンでランチ・懇親会があります。
ここではマスターブレンダー(社長)がユナイテッドSを振る舞いつつ、製造の裏話やオープンにしていない今後のコソコソ話を伺うことができました。
この辺りは今後のガイアフローの動向が楽しみになる話でした。

最後に

具体的にウイスキーの製造を体験できるだけでなく、様々なところで試飲があったおかげでウイスキーの持つ変数の多さを学ぶことができました。
ウイスキーでは、よくポットスチルの形や樽が注目されがちですが、原酒の味が麦芽やウォッシュバックでどのように変わるかを実感できるのはとても面白いものでした。
参加が抽選式ですが、ウイスキーのどの工程でどの様な違いが出るかを感じウイスキーの奥深さをより知りたい方はおすすめです。
最後になりましたが案内してくださったスタッフのみなさん、ありがとうございました!

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