蕗の小さなお寿司
茹でたての蕗の皮をむくのが、好きです。
中からあらわれる美しい緑色に出会えるのも、
今の季節ならでは。
蕗は皮ごと、鍋のサイズに合わせてカットし、塩を加えた湯を沸かした鍋へ。
茹でたてを水にとって、
少しずつむいた端っこの皮をいっぺんに持って下方向にすっとひくと、指先が黒くなることもなく
つるりと簡単にむけます。
皮をむいた翡翠色の蕗を
鰹のだし汁と薄口しょうゆ、みりんで煮含め、
煮汁の中で冷ましておき…
ひとつは蕗と小海老のちいさなお寿司に。
寿司めしに、斜め切りにした蕗の煮物を混ぜ、
小海老の唐揚げをあわせて、小さな飯碗で供します。
これは富山の白海老。米粉をふってからりと揚げてさっくり合わせ、
風味付けには青じその新芽といりごまを添えました。
蕗の寿司の後ろにあるのは、桜風味の蕗の煮物。
多めに茹でて含め煮にしておくと、
混ぜごはんや今回のようなお寿司のほか、
桜以外にもたけのこや高野豆腐を煮合わせたり、
刻んでえびや貝とあわせた春の和え物にも。
手軽にアレンジが楽しめます。
蕗のひと皿を添えると
食卓がふんわりと春色になってくれました。
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それにしても、時の過ぎ方は早くなるばかり。
桜を見るたびに思います。
昨秋、人生最大の断捨離をした後
半年にもならないと言うのに、
また少しずつものが増えてきました。
こまめに片付け続けていかなくては
また大ごとになりそうです。
年末はもちろん節目だから、一年の汚れを落とすのは大切なことだけれど、
寒い寒い大晦日より、
桜の頃の晴れた日の大掃除の方が、
私の場合は格段にはかどるような気がしています。
日々一番増えるのが、やはり紙類。
最近のものはもちろん、思い出深くて手がつけられないものも減らしていかないと、と
長く開いていないファイルの中身を調べていたら、まるで自分の原点のような古いふるいレシピが出て来ました。
生まれて初めて焼いたチーズケーキのアレンジをさまざま書き留めたことも、ファイルで残していたことも、もう遠い昔。
材料ももちろん、普通のクリームチーズ。
リコッタチーズやゴルゴンゾーラ、マスカルポーネも知らないし、ごく簡単な作り方だけれど、
今やすっかり浸透しているバスチーのレシピに配合が似ていて、
シンプルなレシピは、長い時を経ても廃れにくいと気づきました。
まだまだ拙いながらも、作るのが好きでたまらない自分の熱さに驚いたり。
今も中身は正直、20年くらい前と変わっていない感覚のままな気もしますが、
この頃の熱意を上回るのは、体力的にもおそらく容易なことではない、と気付かされてしまいました。
それでも、すっかり諦めてしまうのは少し違うかも。
来し方の違う他の誰かに対抗意識を持つよりも
昔の自分に追いつこうとする方がずっといい。
こんな気持ちになれただけでも、
歳を重ねるのはそれほど悪くない、と思えるようになりました。
断捨離の神様のおかげかもしれません。