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料理のキャンバス〜器の色について


うつわの話で引き続き、
今回は料理と器の色の関係について。 

ちょうどよく盛れる器なら、色は特にこだわらない方もいらっしゃいますが、
それに対して「器は料理の着物」「器は料理を彩るキャンバス」と表現される方も。
そんなに何色も取り揃える必要はないけれど、
同じ料理を盛るにしても、うつわの色が何色かによってその料理や食材の印象が驚くべき度合いで変化を遂げるさまは、見るたび面白味の深まるもの。
新たに器を選ぶときのご参考になれば嬉しいです。

一般に、どんな料理にも合いやすいとされる色には、白、黒、青、緑、茶などがありますが、それぞれの良さや、私がいつも気にしている使い分け方について、お話しさせて頂きます。

(白い器)



白い器は、きっとまず初めに揃えたくなるものですね。食材の色を選ばず、どんな料理ものせられるがゆえに、使いやすいと思われがちです。
ですが、ぺたーんと何の表情もない白い皿に、さあ盛り付けて、とお願いすると、意外と悩まれる方は少なくありません。実は盛り付けの腕が試される色が、白なのです。
ですから、白をお選びの際には、例えば縁にデザイン性のあるレリーフが施されているものや、マットな質感や凹凸などの表情のあるもの、形が丸でない変形や細いものなどを選ばれると、その特徴的な形に助けられますし、他の色だったら主張しすぎて使いにくいような斬新な形の器でも、白なら案外ほかの器となじみやすいものです。

(黒い器)

反対に、黒い器のイメージというと、上級者が選ぶもののようにとらえていらっしゃる方もいます。ですが、白よりずっと使いやすく、あらゆる食材の色を難なく引き立ててくれるのが黒です。また、笹の葉や紅葉、籠などの自然素材との相性も抜群で、黒がやさしく変わります。
白い器の中に一つだけ黒いものを混ぜると、ちょうどよい分量で美しくコントラストがつきますので、黒ばかりの多用はせずに、とっておきのお気に入りをいくつか持っておくのをお勧めします。

(青い器)

着物でもそうですが、青とひと口に言っても水色からターコイズ、藍色に鉄紺など、種類はかなりさまざまなものがあります。
私の好きな青い器は、トスカーナで作陶されているクリスチャンヌ・ペロションさんの深い海のような青と、臼田けい子さんの圧倒的な紺色です。
ただびわを一つ、それだけでもため息の出るような美しさを楽しめます。
少し薄めのターコイズの器は、焦げ茶のテーブルや、チョコレートなどの茶色と特に相性抜群です。
最初に色のある器を買うなら、こんなふうにご自分の大好きな青い器を探してみてはいかがでしょう。青という色は食材にはない色だからこそ、美しい食材の色をより華やかに見せてくれます。青の濃淡で並べるのも楽しいものです。

(緑の器)


青とは逆に、緑は食材によくある色。料理を選ばない緑の器ですが、地味な色合いの焼き魚の焦げ色や、揚げ物、照り焼きの茶色、海藻の黒などの地味目の色合いの品を、さりげなく助けてくれる力も。また、ビタミンカラーともいえる緑の持つ力に負けないパワフルな料理、例えばダイナミックなロースト料理や色鮮やかなエスニック料理なども、引き立てる背景として存分に働いてくれます。そんな懐の深さを持つ器たちが多く、仕事でも緑の器たちに助けられることが多いと感じます。
春の豆のような淡いグリーンと、織部などの濃い緑で、緑の濃淡の妙を愉しむのも素敵です。特に織部の緑は、秋から冬の料理が合います。例えば食用の黄菊の花びらを仕上げにあしらうと、秋の風情がより際立ち、深い美しさを感じます。

(茶色の器)


茶色や焦げ茶の器は温かみがあり、鮮やかな色の野菜も、白い食材も良く映えます。
先ほど織部には秋冬、と申し上げましたが、茶色の器の代表ともいえる備前の器は、意外かもしれませんが夏にもとても多く使います。さっ、と水で表面を濡らして、きりっと冷やした漬物を持ったり、青魚の刺身を盛りつけるのも良いですね。冷たいビールもおいしくいただけます。
茶色の器は、質感や色合いを合わせるとまとまりやすいです。例えば焼き締めの焦げ茶なら、土もので色違いとか、磁器でも染付や赤絵など、手描きの温かさのあるものがよく合います。
ほかにも手吹きガラス、刷毛目を感じる漆器なども。そういった温かみのある器同士で合わせると、より食材が引き立つのがわかります。

他にも、さまざまな色、そして柄、質感の器があり、果たしてどんな雰囲気の器を選べば良いか、迷われる方も多いと思いますが、
一つの器で3品以上、合いそうな料理が思い浮かんだら、手元に置いて後悔はないと思います。

以上、異常な器好きの私見、でした。

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