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【ASMRにも】Kinera Celest Wyvern Qing【レビュー】


王道ハーマン寄りサウンド、低価格、3Dプリンター製

何にでも使える高そうな格安イヤホンが欲しくないか?
ではWyvernシリーズを買おう
中華イヤホンというとBAドライバー等を低価格でも搭載することが多いが、この機種はLCP振動板という少し特殊なDDドライバーのみで勝負
それ故に、低価格でありながら弱点を持たずに済んだという面もある

白っぽい無印や、ドラゴンの鱗のようなデザインを取り入れたブラック等もあるが、基本的に中身は同じなので好きなデザインと付属品を採用しているモデルを選ぼう
中身を変える必要がないほど「これは完成している」という自信の現れを感じるし、実際完成度は高かった
白い無印は黄変しやすいという話も聞くので、そこには注意が必要に感じる
本記事ではグリーンとブルーのモデルが展開されているQingでの紹介だ

いわゆる低価格ラインの小箱だが、金の箔押しはされている

音質

王道ハーマン2019サウンドをちょっと足し算引き算

まずはハーマンターゲットカーブを軽く説明しておくと「誰が聞いても気持ちいいであろう」を目指して作られた、高音低音の出具合を示したものだ
この機種はそれに近づけながら、刺さりがちな高音域をカットし、弾力感や余韻感を感じられる生っぽい中低音が魅力的

バランスが良い音ではあるが「ややゆったり系で中低音に寄っているかな?」くらい
空間は狭いものの分離感や定位感はしっかりとあり、悪い閉塞感や低解像度による不快感はなく、その包まれるような音を魅力とも感じられる

ボーカルに絶妙な甘ったるい心地良さがあり、結構近めで熱量や瑞々しい感じがあり、打楽器の弾力感や、笛の消え入りそうな余韻までしっかりと感じられる
だからと言ってスピード感のある曲は苦手ということにはならず、BAドライバー搭載機でありがちな特定の曲でスピード感が落ちたような錯覚を産まず、結構元気に鳴るので曲調を選ばない
解像感を損なわず温かみのあるサウンドを達成しているのが特徴的だ
裏を返せば、その温かみがすっきり感を求める人には合わない可能性がある

王道でシンプルなようで、どこか独特な弾力感という遊びがあり、素っ気ないわけでもない感じが印象的

付属のイヤーピースは音が抜けて量感が落ちる感じがあり、あまりよろしくないので、上等なものをできれば購入したい
バランス接続にしたりして、色々手間をかけるほど音質が1万クラスに迫るような感じが出てくる

高音

悪く言えばあまり出ていない領域があるし、良く言えばセミの鳴き声に近い音である不快な歯擦音はしっかりとカット
抜けの弱さは空間の狭さを生んではいるものの、刺さって心拍数が上がるような高音はまろやかに処理されている印象だ
優しい高音だけしっかりと耳に入ってくる感じで、出ていないわけではない意図的な処理に感じられることを強調したい

寝る前にゆったり聴きたい音楽には最高なので、この次に紹介する上位グレードモデルのIgniteX Beastとは使い分けをしたくなる高音をしている
不足感のある「甘い」ではなく、砂糖を加えたような「甘い」が適切な表現に感じた

中音

楽器は余韻が心地よく耳をくすぐり、ボーカルは近く熱っぽく瑞々しく妙な色気がある
感覚的にはここが一番近く音量が大きく感じられるが、ほんの少しだけ高音低音が滲んできて、音と音をスムーズに繋げている
派手な曲にももちろん対応している余裕があるのだが、音の少ない語るような音楽になると生々しさが増して、人間の水っぽさや、打楽器の弾力感が感じられる
ピアノや弦楽器等の表現も良好で、主役の楽器が際立つ印象

低音

ドンシャリに毒されていると小さい音量に聞こえるのだが、実際はかなり高精細な低音がズンと下から支えている
基本的にボーカルが前に出てきて耳元で語らう印象が強いが、探そうとすると弾むような低音がそこで丁寧に鳴っているのを発見できる

重低音

締まりが良くきっちり出ているため、やや高い音に聞こえる
他のイヤホンだとモワンモワンと霧のように鳴っている印象のものも多いが、実体を得て大きな物体が震えているような存在感がある
かなり後ろであることと、ギュッと濃縮されている印象の結果弱く感じるのだが、やはりこちらも探すとしっかり見つけることが出来る

用途

空間の広さや、派手な高音や、前に出て主張する低音を求めなければ、非常に幅広い用途に使える
低価格で1個だけしか買うつもりがないというなら、これが1つの正解となりうるだろう

ゲーム用途は完璧とまでは言わないが足音の方向を探れるし、不快な超高音を抑制しているので疲れにくい
ボーカルにフォーカスしがちなので、声を聞きたい配信者の動画試聴にはかなり向いている

そして想定外だったのだが、耳に触れるタイプのASMRで抜群の威力を発揮した
それを踏まえて上記の音質レビューを見返してみると、確かにASMRに向いているなという要素は多々ある
個人的には、高精細できちっとしたモニターサウンドや、ASMR専用として売られている有名機種よりかなりの好印象
温もりや弾力感がとても良い仕事をしていた
このイヤホンをASMR用として推奨するレビューはあまり見当たらないように感じるので「あ、こいつASMR向きのイヤホン使ってるえっちなやつだな」と思われず所持できる(この記事がうっかり数十万人に見られてしまったら風評被害が広がるが)
ただASMRに求めるものは音楽以上に個人差があると思うので、レビューを見て判断して欲しい

DD一発の仕様が故に相性の悪さがなく、地力も価格に対して妙に高く、使用用途を選びにくい

装着感

個人的には今までで一番良く感じたが、この突起があるタイプは人を選ぶのは間違いないので注意が必要
かなり突起が大きいのだが、自分の耳にはビチっとハマって、尚且つ悪い違和感を感じさせなかった
フィット感がかなり良く、元々軽めな筐体の重量は感じにくい

一方、ノズルは若干太く段差がかなり弱く、イヤピによっては相性が悪い可能性がある点には注意
根本に近づくと徐々にノズル広がる形状になっているので、奥に突っ込みすぎてイヤピが千切れるのには注意が必要かもしれない

フェイスプレート意外は半透明で音導管や空気穴もしっかり見える

音質以外のエトセトラ

付属品

使えないというわけではないが、ケーブルは編み込まれていないので取り回しにくい
日本や西欧メーカーばかり買っていると目新しさのある銀メッキケーブルで悪いというわけではないが、セールで1000~2000円くらいのケーブルを付けてやりたい感じ
バランス接続に変更する以外で起きる音質変化は微々たるものであるが、細く硬い線は外的要因で糸電話のように振動し、音質を劣化させるのは確実なので編み込みケーブルを使いたい所

イヤーピースは装着感こそ良いものの、触ると妙にペラペラカサカサしていて、音が抜けていってしまう印象があった

銀メッキ線を透明な被覆で見せているので見た目は悪くない

梱包は紙箱と袋だけで構成されていて超簡素だが、それだけ筐体に金を注ぎ込んでいるコスパ機である証拠でもある

チャック付き袋なのは、簡素ながら少しだけこだわりを感じる

ビルドクオリティ

3Dプリンターで造形され、価格帯からは想像出来ない外見をしている
遠目で見ると数万数十万の機種と錯覚してしまうし、知らない人になら3万で売りつけることも可能かもしれない
この価格帯はプラのモナカや、亜鉛合金を用いた「ホビー的カッコよさ」のデザインが多いのだが、Wyvernシリーズは「ジュエリー的美しさ」の高級感がある

ただフェイスプレートをよく見るとキラカードを切り出して樹脂で挟んだだけのように見えたり、中身に気泡があったり、ドライバーと樹脂の境界部分がグチャっとしてたり、少々荒っぽい部分も見受けられる
それを踏まえても、5000円以下では考えにくいクオリティだ

写真だと伝わりにくいが、光の当て方で複雑な光り方をする

内箱にはモチーフとなった幻獣の説明が書かれていて、遊び心がある
元々、フェイスプレートに九尾の狐やパンダのモンスターのイラストを入れていたようなメーカーだったが、最近は万人受けを意識してフレーバーテキストの範疇に留めている

Googleレンズで翻訳して読んでみよう

価格

公式サイトとAmazonでは約4500円なのだが、アリエクでは投げ売り価格もかなり多い
公式セラーでもコイン割等を利用すると、3桁円~3000円で買えたという投稿も見受けられ、買い時が難しい
もちろん5000円で買っても高コスパな音に感じられるのだが、できればアリエクから徹底的に安く買いたい
こんな高音質のイヤホンを1000円程度でゲットできてしまったら、沼にハマるのは確実だが

どんな人にオススメ?

音楽もゲームもASMRもできるだけ安上がりに済ませることができるし、奇妙な音や波形をした機種との比較対象としても持っておきたい
その上、高級機に近い特別感のあるデザインが魅力的で、ファッションアイテム的な価値もある

総評

音質と見た目が両立されていて、音のバランスも良いので人を選びにくい懐の深いイヤホンに感じた
投げ売り価格込みで見ると異様なコスパを誇り、1万円と聞かされて出てきても騙せそうな確かな音質を持っている
派手なドンシャリ中華イヤホンは数多く存在しているが、このタイプの音作りは珍しく、KZやTRNとは別に持っておきたい一つだ


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