final E3000【レビュー】
※AZLA SednaEarfit ORIGIN Standardを装着した場合の感想です
純正も下手な機種の付属品より高品質ですが、解像感を高めることで本領
を発揮するのでこのイヤーピースがオススメです
ある人にはサブ機、ある人にはゴール
人気のあるモデルというのは、低音高音が派手なドンシャリリスニング機か、フラットで定位感のあるモニター寄りに分かれるように思う
ドンシャリはもちろん楽しいがボーカルが隠れ気味になるし
フラットなモニタータイプは意外と弱ドンシャリ傾向がある機種も多く、やはりボーカルがほんの少しだけ曇ったような印象
E3000はそのよくある傾向に逆らいつつ、後述する小技を仕込むことで最高のボーカルと空間表現を獲得し、メイン機のイヤホン・ヘッドホンではカバーできない領域の穴埋めをしてくれる
ボーカル機とは言っても、比較的手が届きやすい価格に対してかなり良質な高音低音もあるので、これで満足してメイン機にしてしまえるクオリティだ
Amazon価格は3000円台後半程度
音質
音量に注意
このイヤホンはいわゆる「やや鳴らしにくい」とされるイヤホン
内部で電気が通りにくくすることで、ノイズを減らすというメリットがあるので、ポジティブに捉えられる
恐らく最近のスマホに3.5mm to C変換ケーブルで挿すとかなら問題ないとは思うが、独立した音量を持つある程度パワーのあるDACがあると安心
なんか聞こえにくいと思ったら「自分の耳がおかしいんじゃなくて、そういうイヤホンか」と納得して大胆に音量を上げよう
その音量設定が残ったまま他のイヤホンを使うと大音量で流れたりするので、装着前にあらかじめ音を流してチェックするクセをつけると安心
試聴機に注意
このイヤホン、カナル型にしては少しだけ音漏れがしやすく、それ故に外音も入りがち
なので電気屋のうるさい環境では良さが分かりにくく、遮音性の高いイマイチなイヤホンの方が良く聞こえてしまうなんてことも
静かな場所でじっくり聞いて初めて良さが理解できるという感じだ
背面に技あり
多くのイヤホンは密閉型であり、それが低音を強調し、逆にボーカルは筐体内で反響を繰り返し籠もったような印象を生んでいる
ではなぜこの機種がここまでボーカルが生々しく聞こえつつ、開放型のように高低音の豊かさも失わず出てくるのかというと、背面の穴にヒミツがある
ここを指で塞ぐと音の広がりが損なわれ、ボーカルも楽器に少しだけ埋もれてしまうのが伝わってくる
この穴の向こうにはフィルターが入っていて実はそこまでガッツリ開放しているわけでもなく、ボーカルの透き通りと高音低音の豊かさを両立するバランスで空気の量を調整していると思われる
この機種の旨味の中心であるボーカルと空間表現
まるで小型モーターのような小さい筐体
そこから出ているとは思えないほど音に広さと密度があり、歌モノもしくは壮大な音楽に向いている
前述した背面の空気穴が良い仕事をしている結果独特の味が出ていて、それ故にサブ機としての需要が高い
特にボーカルが低音高音に邪魔されず浮かび上がってくるのが特徴的
ただイコライザーで無理やり大きくしたパサつきのあるボーカルとはまるで違い、瑞々しい
楽器数の少ない静かな曲では目の前に歌手が立ち、そこから少し離れた位置から邪魔しないギリギリの音量で楽器を奏でている印象
離れてはいるが薄くはなく、悪い反響もしておらず余韻も丁寧で温かみがある
楽器数が多く比較的ローテンポな曲はボーカルがステージの中央に立ち、その背後に大きく広がった楽器でボーカルを押し上げてくる印象
楽器の波に飲み込まれず、ボーカルが波乗りしてこっちまで来る
ハイテンポな曲はもたつきを感じる楽器があるが、イントロを過ぎてボーカルやメインメロディが流れ始めると悪印象が消える
あくまで数万のモニターイヤホンやヘッドホンと比べた場合での話なので、同価格帯からの乗り換えではそこまで不満は出ないはず
自分が試したわけではないのであまり断言はできないが、E2000の方がハイテンポな曲に向いているというレビューが多いので、普段よく聴く曲と相談してそちらも検討してほしい
いわゆる暖色系と言われる、中低音寄りで音から角が取れた聞き疲れしにくいタイプなのだが、決して眠たいぼやけた音ではなく解像感もあり、壮大で温かみがあるという表現が適切な印象
とはいえ、高音低音の刺激は弱めなので、入眠前に穏やかな曲を聴くと他の機種を使うより眠気を誘うのだが
高音
やや弱い印象を受ける領域
極めて高い部分から出るキンキンやシャリシャリを抑制し、上品な高音に仕上がっているので弱さが悪印象にならない
高音が強すぎてそこに意識が行ってしまい、ボーカルどころではないという感じを抑制
適切な量を出しつつ、悪さをする部分をカットしているという感じ
中音
ボーカル域に近い楽器もしっかりと主張してくるが、分離していて聞きやすい
複数人が歌ってもゴチャつかないでそれぞれ入ってくる
E3000を手にする価値はこの一歩だけ前に出たボーカルであり
それを隠さず丁寧に支える高低音でもある
低音
しっかり締まりの良い音が出ているのだが、ボーカルに重ならず後ろから鳴らして支える独特のものがある
ただし、一定より低くなると途端に散る印象があり、それが理由で曲との相性が分かれる
重低音
空間表現に徹している様子
確かに出ているのだが霧のように散り、目立たないが空間を支配し、押し広げている
この領域でリズムを取るような楽曲とは相性が悪く感じるし
逆にオーケストラでは最高の仕事をする
小径ダイナミックドライバーでここまで出ているのが不思議なくらい厚みのある領域
用途
ボーカルをしっとりじっくり聞きたい場合
壮大な音楽を広い空間で聞きたい場合に適している
全部の音が正確に聞こえるわけではないが、独特の世界観がクセになる可能性が高い
定位感も良いのでゲームに十分使えるし、本体は軽くて装着感も良く、背面の穴のおかげか聞き疲れしにくいので長時間の使用にも向く
ASMR用途でもE500に負けず劣らずという感じで、音源によってはE3000の方がより良く感じたのでこれ一本で完結してもいい
装着感
日本メーカーでは珍しく、1万円以下で「シュア掛け」を体験しやすい
それをサポートするチューブが付属している
最初からケーブルにフック状のクセが付けられたリケーブルイヤホンと比べると装着に慣れがいるが、耳当たりの良い柔らかいチューブなので、一長一短という感じ
シュア掛けをすることで耳から落ちにくくなり、耳穴への圧力も減るので疲れにくく、ケーブルが当たるタッチノイズも抑制される
特にこの機種は小さく軽いので、シュア掛けとの相性が良い
どんな人にオススメ?
音に閉塞感を感じていたり、1~4万の有線・無線イヤホンに「生声と比べたらこんなもんだよね」という諦めを感じている人にオススメ
確かに一定以上高級な機種に音の再現性は負けるかもしれないが、空間表現やボーカルという面では勝ちに行けるポテンシャルがある
それ故により高い機種を持っていても、温かみと壮大さのあるE3000を選択したくなる瞬間が多々ある
音質以外のエトセトラ
内容物
付属品が価格の割に豪華で、イヤーピースのサイズも沢山入っている
イヤーピースの径はどれくらいが合うかを知るのに最適で、入門機としても機能する
シリコンのコシは弱い方なので、同じ径でも付属品はやや緩く感じる点
メーカーによって同じMサイズでもミリ数は全然違う点には注意
流石に2ペア1000円~2000円のイヤーピースには負けるが、品質は十分
ビルドクオリティ
鏡面仕上げステンレスの筐体は小さいながら高級感があるが、指紋はどうしても目立ってしまう
丁寧にキレイに扱えという無言の圧力と受け取ろう
ケーブルは細く頼りなく感じるが、しなやかで取り回しが良い方
リケーブルできないので、使いやすいケーブルはうれしい
筐体とケーブルの接続部も不安に感じてしまうが、軟質素材でワンクッション入れてあり、負荷がかかりにくい設計
同価格帯のイヤホンでありがちな「ケーブル出口の鋭角に当たりまくってパックリ切れてしまう」というのは抑制してあり、全体的に見た目よりは壊れにくいかもしれない
2年保証があるのも安心
価格
定価・店頭価格で見ると高く感じ、Amazon価格で見ると安く感じる絶妙なバランスの印象
試聴との相性が悪いので、密閉度の高いイヤホンしか使ってないという場合は視聴せず買ってしまうのも手
総評
この価格でこんなボーカル聞いちゃっていいんですか?
となるだけでなく、他の領域もフラットに近めで一定以上の締りがあり、バランスも失っていない
それと同時に、晩夏の夜風のように清々しい広さを演出してくれるので、ひたすらに心地良い体験がある
ボーカルの音が大きいイヤホン・イコライザー設定はあっても、しっかりと浮かび上がらせつつ瑞々しいというイヤホンはこの価格帯では貴重
とりあえず持っておきたいし、壊れてもリピートしたいのでラインナップから消えてほしくない機種だ
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