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"DIYデザイン"?

DIYは常に建築家・デザイナーからも熱視線を浴びてきたトレンドだ。でも、いざDIYとデザインを掛け合わせようとすると、難しい問題が立ちはだかる。そもそもDIYは「プロフェッショナルなデザインとは違った価値を見出そう」というニュアンスを多分にふくむ言葉だからだ。

一見矛盾する言葉だが、「デザイナーズDIY」なるものがあるとすればどういった価値や意味を持つだろうか。そんな興味から今回、デザイナーによるDIY家具の事例に学び、自分も「DIYデザイン」してみることにした。

”DIYデザイン”のレジェンドたち

ヘリット・リートフェルト「Crate Chair」

言わずとしれた美術/建築の運動「デ・スティル」の旗手によりデザインされた、梱包資材用の木材をリサイクルして作る椅子。明言しているわけでは無いが、明らかに「アマチュアでも作れる」を意識した造りになっている。後述するDIYのデザイン原理とデ・スティルの美学「パーツをバラバラのように見せる」が期せずして似ているのも興味深い。

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画像出典:https://collection.cmoa.org/objects/29221105-24c3-4b37-bb55-b0fb80eb2d00

エンツォ・マーリ「Autoprogettazione」

イタリアのデザイナーが発表した一連のDIY可能な家具シリーズ。施工の簡易化からくる野暮ったさを隠そうとするのではなくあえて装飾のように見せて、ちょうどよく上品に仕上げているのが上手い。

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画像出典:https://www.artsy.net/artwork/enzo-mari-proposal-for-unautoprogettazione-models-proposta-per-unautoprogettazione-modellini

マックス・ラム「DIY Chair」

DIYがトレンドになって以降のデザインで、そのコンセプト自体に目新しさは無いにしても、とにかく偏執狂なまでのDIYフレンドリーさの徹底が素晴らしい。なにしろ、全て、全く同じ長さにカットされた規格材のみで作れるのだ。組み立て方を間違える心配がまったくない。数字も計算され尽くしているにもかかわらず、材それ自体をものさしのように使いながら制作できるよう工夫されていて、メジャーや定規がほぼいらないのも素晴らしい。

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画像出典:http://maxlamb.org/051-diy-chair/

実践編”6ft Shelf”

さて、このようなレジェンドたちに触発されて、僕も本棚をDIYで作ってみた。名前は"6ft(㌳) Shelf"だ。

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今回制作した6ft Shelf。小さなデスクは今回特別につけたものなので、以下の文章を読む際は一旦無視して考えてほしい

この本棚は、デザインにDIY的価値観を再発見、再インストールするつもりで設計している。

今回以下の2ポイントにDIYデザインに必要なものを整理した。

①手に入りやすい規格材を使う
②高い制作精度が問われないようにする

この2つの条件に対して、この本棚"6ft Shelf"は以下のように応えている。

6フィート(約180cm)という規格材寸法をうまく利用して、ほとんどをカット無しで使えるようにした。

パーツの長さがバラバラになるほど、制作は複雑になり、ミスが多くなる。カットをホームセンターに依頼すれば楽じゃないかと思うかもしれないが、制作物をイメージしてカットコーナーに的確に注文を入れるのも存外それなりの経験値を要する作業なのだ。

この本棚なら、何も考えず長さ420mmの材36本をカットし、それ以外は6ftの材をそのまま家に届けてもらえば良い。

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↑材料一覧。筆者作成。この本棚の制作で無駄になるのは、ポールが投げ捨てている細かい材9つだけだ。

②小口が面一になる納まりと、小口を別の材に突き合わせる納まりを排除した。つまり奥行き材含め、すべての材の両端は空中に突き出していることになる。

カットの精度はプロでも1mm程度は許容としているし、まして家で自分ののこぎりで切るともなればなおさら正確に切るのは難しい。そんな状態で、例えば柱と柱の間400mmの長さにピッタリ400mmの棚板を入れるであるとか、梁の先端部を柱の側面にピッタリと同面にする、なんて工作は至難の技だ。

この本棚は、以下のように長さをバラバラにしてしまっても、構造としては成立する。すべての材は小口では無く側面どうしで接合するからだ。

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↑極端にパーツの長さをバラバラにした場合の完成図。筆者作成。実際は規格材を使うのでこのようになることはないが、これでも成立する。

こんな感じで、DIY的なニーズをあえて最大化・誇張してデザインに取り入れてみた。パーツの小口が空中へと飛び出す雰囲気が、おこがましくもデ・スティルのデザインを連想させてしまう。リートフェルトはアマチュア施工とデ・スティルのデザイン思想の相性の良さを直感していたかもしれない。

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▲画像引用:https://collections.lacma.org/node/179089

まとめ

プロによるデザインの歴史にもちゃんと「施工の簡易化」という価値は脈々と根付いている。DIYデザインは、そんな施工の簡易化という切実なニーズをあえて明確に誇張して表現し、美しさとして再解釈する営為のことといってもよいだろう。

反面、デザインには、「高い技術をうまく使って美しさを追求した」偉さみたいな価値もあって、それも当然評価されるべきものである。

特に家具を超えて建築ともなると、どうしてもプロジェクトは複雑化していき、一つのコンセプトですべてを作ることは無謀となってくる。2つの相対する「高い技術を前提とするデザイン」と「DIYデザイン」、これらのバランスを決定するのも、デザイナーの重要な仕事なんだと思う。


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