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小山田二郎画伯と詩集

当たり前の様に、あぁ、、とやり過ごしたけれど、壷井栄さんの(二十四の瞳)を僕はニジュウヨンのヒトミと言ったことに少しだけ赤面していた。
ニジュウシノヒトミが正解らしい。

尊敬してやまない文豪がこんなことを言っていた。
自身の作品が本になった暁には、二郎さんのお化けの絵で表紙を飾りたい。
それが小山田二郎画伯の作品との出会いである。
ヒンヤリとした空気が画像の向こうからも頬をかすめた。
衝撃というよりも、一瞬フリーズしてしまうほどに眼がはなせなくなった。
文豪は二冊の名著の表紙を画伯の絵で飾った。

小山田二郎の挿絵ということのみに惹かれ一冊の詩集を手に入れた。
レコードで言うジャケ買いに違いない。
壷井栄さんの夫である壷井繁治さんの詩集である。
恥ずかしながら、僕は壷井栄も壷井繁治もそれまでは知らない。
そしてこの途轍もなく時を経た詩集の表紙画や挿絵に震えることもなく、中身の言葉に震えてしまったのである。

全てを記するのは余りに長く衝撃的であるから、ほんの一握りの言葉を記す。

       影の国

人々は最早、昨日のこととして忘れてしまったのだろうか。
日の丸の旗が僕らの太陽を遮り、君が代と軍歌と砲弾の狂い喚く音楽のなかで、草木でさえ、のびのびと呼吸できず、すべてのものが動員されたあの戦争を。
        中略

必勝の戦いに負けて国中がペストにおかされたように黒焦げになったのに、猫背の男は—ああ、そう。と、とぼけながら無責任にうなずく。

二月二十三日、木曜日。
今日は天皇陛下の生まれた日である。

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