最近ミステリについてふと思ったこと
・はじめに
まとまった記事にするには分量が足りないけれど、ふとミステリについてなんとなく思ったことを書き連ねたいと思います。
私事ですが、最近ミステリに造詣の深い方とお話しする機会があり、その中で色々と考えることがありました(大したことではありませんが)。
・横溝正史について
横溝正史の有名作は、現代の謎解きミステリ読者が読めば、おそらく中盤程度で犯人を察してしまえると思っています。
その中で、横溝が今後も読み継がれていくとしたら、それはフーダニットやハウダニットの面白さだけではなく、作品の「犯罪悲劇」としての性格によると思っています。
横溝が存命だったら大変不本意に思ったかもしれませんが、「犯罪悲劇」としての名作群は当分色あせることがないのではないか、と考えています。
・刑事コロンボ
刑事コロンボシリーズの話をする中で、特に話題にあげられることはないけれど、個人的にツボだったのが『死者のメッセージ』です。
犯人役(おばあちゃん作家)がとてもチャーミングで魅力的ですし、意外とすがすがしいお話でもあります。
おそらく犯人のモチーフとなったのはアガサ・クリスティーでしょうが、犯人の名前(アビゲイル・ミッチェル)は、おそらくグラディス・ミッチェルから取ったのではないかな、と密かに思っています。
グラディス・ミッチェルは日本での知名度は低いですが、海外ではそれなりに有名だと聞いた覚えがあります(現在ではわかりませんが)。これに関しては有識者のご意見をたまわりたいところです。
ちなみに余談ですが、私がコロンボの個人的ベスト3をあげるとしたら、順番に『権力の墓穴』、『忘れられたスター』、『ハッサン・サラーの反逆』、次点で『死者のメッセージ』です。
・ジャン=パトリック・マンシェット
マンシェットは、「ネオ・ポラールの法王」の異名を持つフランスのロマン・ノワール作家です。「ポラール」とはフランス語で、広い意味での「ミステリ」を指します(英語の「ポリス」の派生語といえばいいでしょうか)。そんなマンシェットが批評集がフランスで出版されています。ちなみに邦訳も英訳もありません。確かドイツ語訳はあったはずです。
フランスミステリ史上の超重要作家が、アメリカン・ハードボイルドや自国のノワール、文学作品から様々なジャンルのミステリ作家まで論じたものが、"Chroniques"という批評集です。もともと雑誌に掲載されていたものが、マンシェットの死後にまとめられました。
扱われている作家の例をあげると、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルド、ローレンス・ブロック、マイクル・コリンズ、ヒラリー・ウォー、ドナルド・E・ウェストレイク、ジェイムズ・エルロイ、ヘレン・マクロイ、マーガレット・ミラー、エドガー・アラン・ポー、エルモア・レナード、ジョゼフ・ハンセン、ジョン・ル・カレ、ディクスン・カー、エド・マクベイン……etc
日本の作家では唯一、筒井康隆が扱われています。錚々たる面子をマンシェットは扱っていて、フランスミステリ史だけでなく、世界のミステリ史における重要資料といってもいいでしょう。
マンシェットの名前はもう本邦では忘れ去られつつあるかもしれませんが、国書刊行会あたりから中条省平先生や平岡敦先生の翻訳で出版されると大変嬉しいな、と思っています。
・ジョン・ディクスン・カー個人的ベスト3
カーファンの方からお尋ねいただいたので、考えてみました。面白みはないですが、順番に『白い僧院の殺人』、『貴婦人として死す』、『魔女の隠れ家』です。次点で『夜歩く』でしょうか。
先述のコロンボのように、こういったものを考えるのはなかなか楽しい作業ではあります。
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