「自治体の課題」と「新しい官民連携」そして「データプラットフォーム」
弊社では山梨家都留市を主戦場に「官民連携まちづくり事業」を行っています。
「官民連携」。多くの方にとって馴染みの無い言葉だと思います。今回はできるだけわかりやすく「官民連携まちづくり」についてと、その中で僕たちが行っている活動の一部をご紹介します。
そもそも「官民連携まちづくり」って何?
今後、日本の労働人口が減少していくことは皆さんご存知のことです。労働人口が減る中で高齢者など、社会として支えていくべき人口比率は高まります。国、自治体からすると税収は減って支出は増える構造になります。
このため、労働者1人あたりの生産性を高めながら、高齢者や女性、外国から来た方も働きやすい環境をつくる施策として「働き方改革」が行われています。
並行して自治体が行う公共サービスの生産性も上げる必要があります。以下は総務省が発表している、『自治体戦略2040構想研究会報告書 ~「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」~』から抜粋した資料です。
色々書いてありますが、ザックリ言うと下記の2つの方向性です。
A:新しい「官民連携」
従来公共サービスは行政によって担われてきましたが、労働人口減少、高齢化、そしてライフスタイルの多様化の中で全ての公共サービスを行政が提供することは難しくなります。
自治体は「地域住民が自分たちで公共サービスを担っていくための仕組み、資産を提供するプラットフォームとしての役割」を担うカタチに変化していきます。
ちょっと分かりにくいかもしれません。
例えば「路線バス」。地方では乗降客数が少ないため民間企業が経営すれば「撤退」という判断になります。一方で車のない住民のためには少ない本数であってもバスは「生活のために必要な公共サービス」です。そのため、数人の乗客のために自治体は民間事業者に業務委託してバスを運営します。これは従来型の「官民連携(BtoG)」です。
しかし、例えばUberのように、自動車を持っている地域の人が移動手段を提供できればどうでしょうか。自治体は数人のために路線バスを運営する業務委託コストを削減できます。代わりに、移動手段を提供してくれる地域の人材(ソーシャルワーカー)が必要です。そして、ソーシャルワーカーと乗客を結ぶためのプラットフォーム(システム、インセンティブ設計、運営)が必要になります。このような役割変化が、新しい「官民連携(BtoGtoC)」です。
B:自治体の「DX」
生産性を上げる為にDX(デジタル・トランスフォーメーション)が自治体にも必要です。
「DXの課題」は民間企業のそれと大きく変わらないかもしれません。AIやオートメーションの力を最大化するには、そのガソリンである「データ」を統合し、「リアルタイム性×量×プロセス」で整備する必要があります。
「APIエコノミー」と呼ばれるように様々なクラウドサービスは外部のクラウドサービスと自動連携できるようになっています。それは、そのようにしてデータを統合できる環境を用意しないと「自社サービスの価値が半減するから」です。それほどにデータを統合することが重要です。
セキュリティなど様々な背景はあるにせよ、現時点の自治体DXは「単一業務をデジタルに置き換えたにすぎない」ものが多くなってしまいます。
当該業務の効率を上げることはできますが「本質的な意味でのDX」には到達できません。また、「住民向けサービス」という意味では同時に民間サービスのDXも推進すべきですがなかなか進みません。
地域でビジネスをしている民間事業者側にはDXのインセンティブがありません。個々の事業者が個別にDXを行なっても、データ量とプロセスの意味で本質的な価値は生まれにくいからです。
※「本質的な意味でのDX」ついては下記に記事を書きました。
まちづくり法人による「連携データプラットフォーム」
そこで現在弊社が都留市にて推進しているのがまちづくり法人による「官民連携データプラットフォーム構想」です。
①行政サービスのDXをまちづくり法人が行う
まず、行政サービスの中で可能な業務のDXを官民連携まちづくり法人が行います。これにより自治体の業務生産性は向上し、そこで取得するデータは官民連携法人が取得できます。
②民間サービスのDXをまちづくり法人が行う
また、地域の民間サービスで可能な業務のDXも、官民連携まちづくり法人が行います。これにより民間サービスの業務生産性は向上し、そこで取得するデータはこれまた官民連携まちづくり法人が取得できます。
③官と民のデータをあわせて、はじめて住民向けサービスのDXができる
その結果、行政、民間それぞれで取得したデータを統合した「地域住民向けサービスのDX」が実現します。これは、官と民が個別にDXを行っていたのでは実現できません。それぞれのDXをその中間団体である官民連携まちづくり法人が行うことではじめて実現できると言えます。
新しい公共のカタチはBtoGから、BtoGtoC
従来の官民連携は官の業務を民が受託する「BtoG」でした。もちろんその関わり方は今後も重要です。業務をプロフェッショナルに委託することは今後も増えるでしょう。
一方で新しい公共のカタチとしての「官民連携」は、エンドユーザである「住民が幸福に生きる為に大切なサービス」を包括的に、継続的に提供する為の体験デザイン、ビジネススキームを共に考える「BtoGtoC」のような関係です。
現在私たちは山梨県都留市で官民連携のデータプラットフォームづくりを行っています。3万人のまちでスタートから1年。現在は700名以上の利用者、200以上の事業者に登録してもらっています。
まだまだこれから様々なサービスを追加していきます。そしてこの仕組みを他の自治体でもまちづくり法人が活用できるよう、クラウドサービス化していきます。
新しい公共を官民連携でデータを使って実現したい方、是非一緒にチャレンジしましょう。