シェアリングエコノミーが地方では「野暮」になる背景
数年前より、モバイルインターネットの普及で外国から「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービス群が入ってきました。UberやAirBnB。それは日本でも既存産業を脅かす存在になっています。
またの名を「アイドルエコノミー」とも呼びます。今余ってる「供給の粒」を可視化してリアルタイムに「需要の粒」と繋げる。例えばAirbnbなら「空き部屋」と「旅行者」。Uberなら「空きドライバー」と「移動者」。それぞれの粒を可視化してリアムタイムにマッチングさせます。
地方創生とシェアリングエコノミー
労働人口の減少する地方において、シェアリングエコノミーの仕組み活用は大変期待されており、日本政府にも「シェアリングエコノミー促進室」があります。多くの事業者が実証実験などで参入されています。
https://cio.go.jp/share-eco-center
一方で、地方でのシェアリングエコノミーがなかなか進まない実情もあります。
例えば、スキルシェアサービスの「Antyimes」のサービス登録件数です。東京都では4,200件以上あるにも関わらず、山梨県はまだ15件(2020年5月18日)。
もちろんそもそもの人口も違います。「デジタルデバイス/サービスに慣れていない人が多い」ということも大きいでしょう。
しかし、地方の現場にいる人間としてそれだけではないように感じます。その理由の1つに、「エコノミー」と「カルチャー」の違いがあるのではないかと考えます。
シェアリングカルチャー「おすそわけ」
日本には「おすそ分け 」というカルチャーがあります。余ったものを隣近所におすそ分けしてお互いにシェアしあう。今でも地方にはおすそ分けの文化があります。
それは「貨幣を介在させない価値の交換」とも言えます。GDPには換算されませんが地域コミュニティ内の信頼形成に必要なトランザクションとも捉えられます。これは「エコノミー」ではなくシェアリング「カルチャー」と言えます。
シェアリングエコノミーが地方では「野暮」ったくなる背景
シェアリングエコノミーの特徴は2つです。
①「匿名ユーザ同士の需給マッチング」において成立のボトルネックになる「ユーザ間の信頼形成」を担保する為、プラットフォームがコミュニケーションの間に入り細かくルール設定をします。
②「ポイント」や「貨幣」による価値交換が前提となります。そしてプラットフォーム上に積み重なった取引履歴が信頼の醸成に繋がります。
この2つの特徴がシェアリング「カルチャー」の存在する地方では逆に摩擦を起こし「野暮ったく」なってしまいます。これは「地域内でのシェアリング」においてのみ顕著です。
地方では、受給マッチングは「匿名同士」ではなく「顕名同士」で行われます。そして「貨幣以外」の価値交換こそが信頼の醸成に繋がります。前述の「おすそわけ」「お互い様」カルチャーです。
多くのシェアリングエコノミーはこのような地縁的な信頼醸成がない都市や観光地でもシェアをする為のプラットフォームなので、ある種「そりゃそうだ」なのですけれども。
「ジモティ」はシェアリングカルチャーを拡張する
そこで面白いのはジモティです。私の考えるジモティの特徴は下記です。
①プラットフォームが取引ルール設定をしない。(プラットフォーム利用料がかからない。)
②直接会って交換することが前提。
例えば「メルカリ」のように通常のプラットフォームビジネスは、ルールを設定することで取引を成立させ、その手数料をとるものです。しかし、ジモティは手数料を取らないので「0円=貨幣換算なしの価値交換」「適当に連絡して直接交換」でも成立します。上記の通りそれは「余ったものを交換する」ことによる信頼形成トランザクションになります。その意味でジモティは「地域のシェアリングカルチャーを拡張するテクノロジー」だと捉えることもできます。
労働人口が減少していく地方において「リソースシェアリング」が重要なキーワードであることは変わらないと思います。
しかし実現するためのプラットフォームを考えたとき、「エコノミー」で置き換えるのか?「カルチャー」を拡張するのか?という戦略は実は異なるはずで、それによってプラットフォームの在り方自体変わるはずです。(良い悪いではなく戦略として違うという意味で。)
私達が官民連携まちづくり団体で行政とともに運営する「まちマーケット」は地域内での情報やリソースのシェアによる「行政・民間含む生活サービス全体のデジタル化による生産性向上」を目指しています。この中でも「シェアリングカルチャーを拡張するテクノロジー」をコンセプトとして開発を進めています。