禍話リライト「小物の落ちる窓」

 これは全然怖くない話ですよ。

 かぁなっきさんの職場の後輩、Aさんの話。

 Aさん一家が暮らしている家のトイレに設えられた、小さな窓。
 お母さんが気を利かせて、その窓際に様々な小物を飾っている。

 しかし。
 それらの置物がいつの間にか床に落ちている、という状況が何回も発生した。
 勿論、家族の誰かが故意に落としたわけではない。風に吹かれて落ちているわけでもなさそうだ、という。

 Aさん一家はそのうち奇妙なことに気付く。
 窓際に飾った物の中には、床に落ちるものとそうでないものがある。
 落ちなかったものは全て「和風のもの」をモチーフにした置物だった。

 例えば、御地蔵さんを象ったマスコットや手のひらサイズの仏像。そういったものを置いておいても、床に落ちることはない。
 しかし、これが洋風のモチーフ―例えば石造りの西洋城を象った小さな置物や馬車を模したおもちゃなどに変わると、いつの間にか全て床に落ちている。
 何度試しても、そうなる。

 結局お母さんはすっかり諦めてしまい、今ではトイレには和風の置物のみが飾られているのだそうだ。


◇この文章は猟奇ユニット・FEAR飯のツイキャス放送「禍話」にて語られた怪談に、筆者独自の編集や聞き取りからの解釈に基づいた補完表現、及び構成を加えて文章化したものです。
語り手:かぁなっき
出典:"震!禍話 第七夜"(https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/445880655)より
禍話 公式twitter https://twitter.com/magabanasi

☆高橋知秋の執筆した禍話リライトの二次使用についてはこちらの記事をご参照ください。