ウエストランドについて思うこと
まず僕はお笑いに特段興味を持っている訳では無い。嫌いでは無いが、知識も無ければお笑い事務所がどうのという事情も知らない。M-1に関しても、自身の性格上「何だか理屈っぽい発言をTwitterで色々しそうで顰蹙を買われそう」と考えてしまうので極力見ないようにしている。なので全体的に非常に浅い記事に仕上がっているのでにわかをさらけ出してしまったら申し訳ありません。
今回たまたま優勝発表の時にテレビを付けていて、これを制したのがウエストランドという芸人である事を知った。調べてみるとどうやら毒舌を用いた漫才を確立させており、ボケである河本の「○○にあって、△△に無いものは?」といういわゆる"あるなしクイズ"に対し、ツッコミの井口が毒のある答えで笑いを取るという芸風だ。
元々毒舌というものは個人的に好きではなかった。有吉が毒舌キャラとしてブレイクしたきっかけとなった「アメトーーク」を当時見ていたのだが、「人を嘲笑うような芸風で見ていて不愉快」という感想しかなかった。勿論これは相互の信頼があってこそのネタであり本気で憎くて言っている訳ではないと知ったのはその3ヶ月後の事。当時はピュアでまだケツの青い中学生だ。想像力に欠けていて悪い意味で単純であった頃である。流石に大人になった今ではある程度の分別はついている。(それでも嫌いなアイドルや芸能人は明確に存在していますが)
YouTubeでM-1の公式チャンネルに上がっていた動画を見てみる。自分の構築するTLが全てだと思っている井の中の蛙人間なので、評判があまりよろしくない分期待する事なく冷静に眺めていた。
大満足の内容でとても面白かった。所々に偏見と見られても仕方の無い返しこそあったが、面目では絶対に言えない事を芸能界の御意見番でも無い1人の芸人がM-1という壇上でぼやき続けている。はたから見れば一素人の「それってあなたの感想ですよね」みたいな理論だ。でもそれが良い。基本井口が返すのは独断と偏見に塗れたネガティブなツッコミだ。ただ何処かで物事を色眼鏡で見てしまう自分にとってはこういう"偏屈"な笑いがお似合いなのかもしれない。それにひろゆきの芸風のような論破する為の証拠も一切ない。卑屈になった男が自身の捻じ曲がった価値観を早口でただ好き放題に言い散らかしている。ぺこぱのような誰も傷付けないお笑いとは正反対の内容だ。でも僕にとっては、笑いと同時に何処かに吹っ切れた何かを感じ取った。
僕は味方を誰かしら一人作るように自分を作っている一面があるから故に八方美人になってしまう所がある。中身が無いから媚びて愛嬌で勝負していた事もあった。そんなしょうもない自身の理論を、ウエストランドは見事にぶち壊してくれた。
自分の中でのウエストランドの役割は「浄化」である。リアルな世界で極力ネガティブな話題を自分から展開せず、どんなに理不尽であろうが悪口になろうが彼らのコントを見てストレス発散をしている。端的に笑うだけでなく何処かで自分の偏見を代弁しているであろう井口に同情して笑う事でダブルの効果がある。無論性格の悪いストレス発散法だ。誰かを蔑む発言に対して笑いで同情する時点で罪悪感を感じる事もある。ただ井口が指すターゲットは不特定多数。誰もが抱える職業や性格の人を価値観の相違などで舌打ちをしたくなるシチュエーションは数多くある。ついつい八方美人になりがちな自分にとっては、陰湿ではあるがこれが現時点でのストレス発散のはけ口であり最適解なのである。
そしてネタの中には品性や理性に欠けた発言が詰まっているかもしれない。また誤った見方で物を言っているかもしれない。事実、M-1の決勝戦のネタにあった「アイドルは向上心の塊で他人を蹴落としてでも自分だけは売れたいという向上心の塊」と本気で言っているのならいつの話をしているんだとなる。これは自身の推しメンである潮紗理菜さんの存在が大きい訳なのだが、それはともかくとしてただ人間誰しも理性を捨てて感情的になりたいシーンはあるはず。それが個人への攻撃や誹謗中傷として成り立つものでないなら、自分から攻撃するのではなく間接的に批判して心のモヤモヤを打ち砕く発散法もあって良いと個人的には思っている。
また、井口は芸風についてこう話している。
また前述に「不快にさせてしまった方々には申し訳ない」と語っており、賛否のある芸風であることは本人も認めている。コメントの中に謙虚さが伺え、本心ではファンに対して真摯な受け答えが出来るのもそうだ。自身の考えで言うと、いわゆる権力のない毒舌キャラという存在はとても繊細で人に尽くすタイプだと思っている。もちろん井口もこのタイプだと思うし有吉も今や愛されキャラ&司会者として確立している訳なのだから。上辺だけの言葉や行動でその場を取り繕う人もいる中で、自身を小市民として位置付けて言いたいだけ言うのはむしろ清々しさすら感じる。これが仮に権力のある司会者ならどうか。
話は少し変わるが、当時島田紳助がテレビ業界を牛耳っていた頃、僕は彼が出演する番組は嫌いで仕方なかった。当時は小学生であったことから両親にチャンネルの主導権を握られていたせいで夕飯時にはいやいや見るしかなかったのだが、とにかく合間に人を馬鹿にしている所が気に入らなかった。先程触れた相互間の信頼関係があればそれで良いかもしれないが、彼の場合は権力を振りかざして恫喝まがいの言動を取っている。仮に彼に黒い交際が無く今も芸能界に生き残っていたとしてもすぐチャンネルを変えていたはず。
ネタの中での井口は薄っぺらい批判と根拠の無い持論で誰かをコケにしているが、自らを小市民と位置づけた上で批判覚悟でぼやくからこそ笑いが生まれてくるのではないかと思う。またYouTubeでウエストランドの動画を全て見たのだが、井口は個人を攻撃することは一切しなかった。外から聞くとハチャメチャな理論でも何処かスッキリする不思議さ。自分の闇の部分を合法的に代弁してくれるのが最高に気持ちいいのだ。
そして河本のエピソードも実に面白い。ただ正直言って素性が分からない。ネットで色々調べてみるとクズエピソードが続々と出てくる。TVerで「VSウエストランド」という番組が見られるしポッドキャストもあるらしいので、見て聞いて学んでいこう。
ウエストランドのM-1優勝が賛否両論ありつつも、自分の屈折しまくった思想が間接的に世間に認められたという意味では幸運だ。ウエストランド、もっと売れてくれ。
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