《今週のプリンス読書会》(#71)1984 Week 20: When Doves Cry シングルリリース
Duane Tudahl さんの本(『PRINCE AND THE PURPLE RAIN ERA STUDIO SESSIONS: 1983 AND 1984』)を1週間分ずつ読む《今週のプリンス (What Did Prince Do This Week?) 読書会》で聞いたことのメモと感想です。
2024/5/18配信分。読書範囲は、WEDNESDAY, MAY 16, 1984〜THURSDAY, MAY 17, 1984
When Doves Cryは唯一無二!
1984年5月16日に「When Doves Cry」のシングルがリリースされました。
35:45からクリップ
読書会では、この曲が録音された時(1984年3月1〜7日)にもたくさん感想が話し合われましたが、今回も語り合いました。当然です。当時すでにプリンスを聴いていた人も、聴いていなかった人も、「When Doves Cry」を初めてラジオで聴いたときの衝撃を思い出しつつ盛り上がりました。
『Purple Rain』カバーアートの評判
本によると、1984年5月17日に『Purple Rain』の試作盤ができました。スーザン・ロジャーズの話として、その試作ジャケットをみたスタッフたちに、デザインが今ひとつ不評だったことが書かれていました。ソースは2016年のポッドキャストです。散らされている花が「セロリみたいだ」など、いろいろな意見があったようです。スタッフといえども、まだアルバムや映画の世界観を把握していない時点では、驚いてしまうデザインだったようです。
このデザインにプリンスの意見はどのくらい入っていたのか、誰のアイディアだったのか気になります。
When Doves Cry のMV
読書会での話の中で「When Doves Cry」のMVは、プリンスでは初めての、ステージパフォーマンスではないMVとなったとも話されていました。前にも話題になったことがあり、The Time の「Cool」の方が、コンセプトのあるMVとして先だったという話も出ていたと思います。
When Doves Cry のMVの撮影についてはTudahlさんの本には書かれていないと思います。すると、あれ? いつ撮ったのでしょう。Princevault によると、1984年春にハリウッドの A&M Records Soundstageにて、となっています。曲ができてから5月のシングルリリースの週のオンエアの前となると、3月、4月(5月1週目だとギリギリ)のどこかですが、Tudahl さんは、取材できなかったのか、録音に限定して書いているからなのか、記載がありません。Princevult には、監督としてプリンスと Larry Williams さんというお名前が書かれています。写真家だそうです。Larry さんは撮影現場で、プリンス→プロデューサー→ Larry さんの伝言で「撮影中、いなくていいよ」と伝えられてしまい、撮影と振り付けを仕切っていたのはプリンスだったとも。
でも、あれだけのセットなので、誰かプリンス以外の人が現場に入る前にも監督的な仕事はしてくれていたでしょう。読書会では「When Doves Cry」のMVはそれまでと比べて予算がたくさんついたのだろうね、という感想が出ていました。
アルバムのジャケットも含めてセロリと言われたお花やバスタブの演出を考案したのは誰なのかということになると、妄想としてはプリンスの意見が大きかったと思いたいです。一部のスタッフとはしっかりとコミュニケーションをとって相談していたのかなと思うとおもしろいです。あるいは相談というより命令だったのか。
追記:「When Doves Cry」のMV撮影時に出された指示
アンドレア・スウェンソンさんの『Prince and Purple Rain: 40 Years』119ページに書いてあったのは、プロデューサー二人のコメントです。プロデューサーは、このMVの撮影がどんなものになるのか当日まで知らされず、ディレクターの Larry Williams から「用意するのは、ステージ、クルー、それから、カメラをたくさん。大量のスモークとハトも」と言われたと書かれていました。前日に「壁を紫に塗って、バスタブとキャンドルを用意するように」と言われたとも書かれていました。そして、当日に Larry さんは撮影現場には来なくていいと言われたようです。
撮影前日まではプロデューサーには秘密にされていたMVのコンセプトを Larry さんはプロデューサーより先に知っていたらしいということは、撮影現場からは追い出されてはいても、何かの役割を任されていた可能性があったということではないでしょうか。
なお、Larry さんからプロデューサーへの伝達さには「花」が含まれていません。プロデューサーに頼まなくても用意できたからでしょうか。
詳しく確認しないと分かりませんが、Larry さんの写真が撮られた時期から、床に花が散らされ、プリンスが手に花を持ち、帽子も衣装に加わったり床に置かれたりしているように思います。
プリンスのイメージでこれほど花が散りばめられているものが他にあったか、NPG時代のガーベラ以外、すぐに思いつかないのですが、それほど多くはない印象です。この時期でも、映画『パープル・レイン』ではあまり花は登場しません(最後の方にステージに散らされていたかもしれない程度)。映画撮影中にはまだ生まれていなかったイメージが、「When Doves Cry」のシングルやMV、アルバム『パープル・レイン』の準備に入ってから登場し、「When Doves Cry」シングルリリース以降、どんどん広められたのでしょうか。
当時、私は中学生で「ビートに抱かれて」に夢中になってはいたものの、パープル・レインやプリンスのビジュアルを意識的に感知しないようにしていました。ビジュアル解禁は、次のアルバム以降です。
この花を散らしたプリンスは、アイドル要素を投下する大事なイメージだったかもしれません。Rude Boy からの変貌を遂げて、全米のティーンを夢中にさせる作戦でありつつも、アルバムや「When Doves Cry」の世界にマッチしています。An ocean of violets in bloom の歌詞と床に散らされた花は素晴らしいコンビネーションだと思います。
パープル・レインから何年も経ってから、だんだんと「When Doves Cry」期のイメージがじわじわ好きになり、今でも大好きで、見るたびにドキドキします。リアルタイムでの体験を逃して残念で悲しいですが、中学生のときには理解できていなかったかもしれないので、音だけから入ったのは、結果的には良い選択だったかもしれません。
衣裳デザイン: Louis & Vaughn
このMVのプリンスやバンドメンバーの衣装も含めてパープル・レインの衣裳を担当した Louis & Vaughn の Vaughn Terry さんが、先日の #EroticCity40 シンポジウムでキーノートのスピーカーでした。とても興味深い話がたくさんありました。1999までの衣装から、大スターへの衣装への変貌もこの時期に始まったようで、そこに Louis & Vaughn は貢献したものと思います。
来週のゲストはアンドレア・スウェンソンさん
もうすぐ発売になる『Prince and Purple Rain: 40 Years』のアンドレア・スウェンソンさんが来週ゲストの予定だそうです。これは楽しみ。
ちなみに、この読書会の配信の5月18日がアンドレアさんの誕生日だそうです。
また、アンドレアさんの次の本が8月12日に発売されるそうです。
Cornbread Harrisについての本ということです。誰なのかは各自ググりましょうね、というのが読書会の“教育方針”ですが、ジミー・ジャムのお父さんだよ、とも教えてくれました。
その他の話題
58:06
毎週、De Angela さんが読書会の後半に話してくれるのが、「MUSIC BREAK」と「PURPLE WOR(L)DS」の2つの情報コーナー。De Angela さんが Real Musician と推す人たちのニュースとプリンス関連ニュースについてまとめてくれます。
今週のプレイリストを見ると、Willow、Bilal、Cory Henry の名前が並んでいます。気になる方はチェックしてください。Betty Davis の動画が並んでいるのは、Nona Hendryx による Betty Davis のトリビュートライブがあったためです。
読書会の動画(1984 Week)
https://www.youtube.com/live/qZOetNbyr4I?si=5pWaPOH1aBnJPL_w
読書会プレイリスト(1984 Week)
https://youtube.com/playlist?list=PL6YE_-qkWwSngAArUAw1XxyZm2ZRxssrq&si=jQdXDCy4E3VZ90Tk
読書会のサイト
https://www.polishedsolid.com/what-did-prince-do-this-week/
https://bookclub.polishedsolid.com/
Duane Tudahlさんのサイト
https://www.duanetudahl.com/welcome