Silver Tongue
Musicology 20周年で単発で出された3曲目「Silver Tongue」を聴きました。以前のヴァージョンも聴いたことがなかったので、ここ数日で3つのヴァージョンを一気に聴きました。他の曲に比べても歌詞がよく分からないですが、惹かれます。そして、この不思議な歌詞は Nikka Costa 作(プリンスと共作?)。
個人的には、ストリーミングでも何でも出してくれるのは、これまでに見逃していた曲を聴ける貴重な機会なのでありがたいのですが、クレジット情報を得られないのが難点だと、ツイッターでそんな声をちらほら見て、確かにそうだと思いました。初心者の私が、常日頃からクレジットをきちんと確認しているかというと、全くそんなことはないのですが、曲を集中的に聴いたときには、クレジットを見ようと思うことも、時にはあるかもしれません。ありがたい各情報源から、作詞が誰かを知ることはできますが、演奏だって気になってきます。
ただ、そのうち情報が明らかになって関与したミュージシャンがわかったとしても、情報とクレジットとは別物です。楽曲にクレジットされたら権利が与えられるとざっくり理解しています。それは、金銭に関わることでもあるし、ミュージシャンへの敬意なので、大事なことです。
エステートがスーデラをゆっくりじっくり出すのと、単発で簡単にストリーミングやダウンロードで出すのと、それぞれ一長一短あるかと思います。その中間の、シンプルだけれど、しっかりリリースする形もあるともっと嬉しいです。
「Silver Tongue」Demo ヴァージョンを聴くと、Nikka Costa に送られたものなのだろうと思えました。2024年のものは、2つのヴァージョンとわずかに構成が違い、歌い方も違うところがあるので、別テイクだと思いました。ピアノはプリンスだとしても、ドラムやベースは誰だったのでしょう。初っ端のベースはグリッサンド? 強烈ヴィヴラート? 詳しい方に解説してほしいです。ジャズではああいう音がよく使われるのでしょうか。クラクラします。ドラムもピアノも素敵です。一方、Demoヴァージョンも妖しげなピアノがたまりません。Nikka Costaヴァージョンも声とストリングスのハーモニーだったり、歌い方が美しいです。
以下、妄想です。曲の印象としては、私の大好きな「Wednesday」や「Next Time Wipe The Lipstick Off Your Collar」の系譜に連なる、ろくでなしを思う女心を歌ったものと感じますが、それをすごく成熟させていると感じます。相手がろくでなしかどうかの問題を超えて、募らせる想いそのものだけを蒸留したような歌。その世界をコラボで実現していたことにも驚かされます。あるいはこんな情念を持つ音楽を生み出すには、誰かと一緒に作る必要があったのでしょうか。まだまだ聴き込んでいきたいです。
歌詞を一部、訳してみました。歌詞の真意は分かりませんので、表面的な英語が何を言っているか、というところまで訳すことを目標にしました。歌が耳に届いた段階の英語を日本語に置き換えるイメージです。
Silver Tongue は、雄弁な言葉で誰かを信じさせる人、誰かを説得できる人、という意味のようです。
相手は、「私」に対して常に魅力を発してますが、決して愛の核心に触れようとはしない。どこまで思わせぶりなことをしているのかわかりませんが、ろくでなしです。Silver Tongue な相手を信じている「私」の想いが報われることはない。
曲を聴いて、思いました。この二人は千の逢瀬を重ねていると。それでも実ることのない愛。どうして、ろくでなしを愛してしまうのでしょう。
逢瀬はともかく、キラキラした希望は枯れ、種が蒔かれて、また希望が紡がれる。今回出てきた2024年バージョンは、歌が最後まで行ってから、また最初の1節に戻ります。虚しい繰り返しを連想させます。
言葉にしてしまうと、虚しい内容の歌ですが、これを歌で聴くと、本当に美しいです。ろくでなしを愛してしまう歌がどうして美しいのでしょう。だめだと分かっていても愛を注げるなんて、それよりも強い愛はないのかもしれない、最も美しい愛なのかもしれないと思えました。
Nikka Costa によるコメントがインスタにもありました。プリンスとジャムをしていたことや、Silver Tongue は大切な友人のことを書いた詩であることが書かれていました。